ベトナムのファム・ミン・チン首相は2026年3月3日、鉄道分野の重点事業・国家重要プロジェクトに関する指導委員会の第7回会合を主宰し、「下請け(làm thuê)から技術の主導権(làm chủ)への転換」を強く求めた。南北高速鉄道やラオカイ〜ハノイ〜ハイフォン線、ハノイ・ホーチミン市の都市鉄道など、国家の命運を左右する巨大インフラ計画が一斉に動き出す中、汚職・浪費防止を徹底しつつ、自国産業の育成を最優先課題に掲げた形だ。
5つの戦略目標──鉄道がベトナム経済を変える
チン首相は会合の冒頭で、鉄道が経済社会発展、国防・安全保障、発展空間の拡大、国家競争力の向上に果たす役割を強調した。そのうえで、鉄道プロジェクト推進の5大目標を次のように整理した。
第一に、2026年以降のGDP高成長を支える基盤の構築。第二に、物流コストの削減によるベトナム製品の国際競争力向上。第三に、大都市の交通渋滞緩和。第四に、輸送回廊沿いの都市・工業団地・経済区の新たな発展空間の創出。第五に、鉄道産業および関連産業のエコシステム形成である。
これらの目標は、党中央政治局や書記局、とりわけトー・ラム党書記長の指導のもと、民間資本を含む全ての社会資源を動員する方針(第68号決議)に沿ったものだ。
「5つの化」と「4つのゼロ」──実行指針を明確化
首相は具体的な実行方針として「5つの化(5 hóa)」を提示した。デジタル化(số hóa)、グリーン化(xanh hóa)、効率の最適化(tối ưu hóa hiệu quả)、管理のスマート化(thông minh hóa quản trị)、そして国家・国民・企業の利益の調和(hài hòa hóa lợi ích)である。
さらに「4つのゼロ(4 không)」として、「1日たりとも無駄にしない」「1週間たりとも遅延しない」「1カ月たりとも機会を逃さない」「1年たりとも受け身にならない」を掲げ、「旧正月は遊ぶ月」という慣習的な意識を払拭するよう求めた。
制度整備と人材育成──着実に進む法的基盤
報告によると、前回(第6回)会合で各省庁・地方に割り当てられた22の課題のうち、8件が完了、12件が期限内に進行中、2件のみが関係省庁との調整に時間を要し遅延している状況だ。
法整備面では、国会が3つの法律と2つの決議を採択。政府は6つの政令と3つの決議を公布し、首相は1つの提案を承認した。ハノイ市とホーチミン市の人民評議会もそれぞれ関連決議を採択している。鉄道産業発展提案やベトナム鉄道総公社の再編案も最終段階にある。
人材育成では、首相が「ベトナム鉄道人材育成・開発提案」を承認済み。建設省は2026年および2026〜2030年の研修計画を3月中に公表予定で、ベトナム鉄道総公社もラオカイ〜ハノイ〜ハイフォン線と南北高速鉄道の運営・保守要員の育成計画を策定した。
南北高速鉄道──2026年内に実現可能性調査コンサル選定へ
最大の注目プロジェクトである南北高速鉄道について、建設省は3月中に路線引き渡しを完了し、沿線15省市が用地収用・移転補償に着手できるようにする。実現可能性調査(F/S)コンサルタントの入札書類も3月中に整備し、第2四半期中に選定を終える計画だ。
政府は国会決議(第265/2025/QH15号)に基づく実施決議案を3月15日までに取りまとめる方針で、沿線自治体には2026年の資金需要を正確に報告し、3月中に予算配分を確定するよう指示した。
ラオカイ〜ハノイ〜ハイフォン線──中越協力の象徴
中国との国境を越え、雲南省昆明とハイフォン港を結ぶこの路線は、地域連携とベトナム・中国協力の象徴的プロジェクトだ。首相は建設省に対し、3月中にサブプロジェクト2の初期F/S報告を完了するよう指示。外務省と連携して国境鉄道橋建設協定の交渉を加速し、4月中に測量・設計業者を選定・契約するスケジュールを示した。
国防省には国防用地の処理方針を早期に明示するよう求め、財務省には借款協定交渉の準備を進めるよう指示。沿線自治体には、交差構造物、排水、インフラ復旧、資材調達場所、駅舎・橋梁の設計について投資主体と速やかに協議し、用地引き渡しの遅延を起こさないよう全力を挙げることを要請した。
都市鉄道──ハノイ・ホーチミン市の基準統一へ
ハノイとホーチミン市の都市鉄道(メトロ)については、両市が各省庁と連携し、統一的かつ相互接続可能な規格・基準を策定するよう指示された。現在進行中の路線は用地収用と建設を加速し、2026〜2030年に着工予定の路線については準備を万全にするよう求めた。
また、ホーチミン市とロンタイン国際空港を結ぶ鉄道については、ドンナイ省が「緊急投資」の枠組みで建設を推進するよう指示が出された。
「下請けから主導権へ」──自立した鉄道産業の構築
首相は結論として、党書記長が唱える「自力更生、自主戦略」の精神を発揮し、技術の受容と習得を主体的に進め、加工下請け型の思考から脱却して、管理・運営・設計・製造・資材生産を自ら担う体制への転換を求めた。全国共通の規格・基準・技術プロセスを早急に整備し、民間を含むあらゆる経済主体の参入を促す方針だ。
汚職・浪費防止については、法令に基づく手続きの厳格化、投資家・請負業者の適正な選定、投資効率の事前評価を徹底するよう改めて強調した。
日本企業への示唆──技術移転と市場参入の好機
今回の方針転換は、日本企業にとって両刃の剣となり得る。ベトナム政府は「技術の自立」を掲げ、単なる機器輸出や施工受注ではなく、技術移転・人材育成・現地生産を伴うパートナーシップを求める姿勢を鮮明にしている。日本の新幹線技術や都市鉄道運営ノウハウは依然として高い評価を受けているが、中国企業との競争も激化しており、参入戦略の見直しが求められる。
一方、鉄道産業エコシステムの形成は、車両部品、信号システム、保守機器など関連産業にとって大きな市場機会を意味する。ベトナム側が「民間資本の動員」を明言している点も、PPP(官民連携)スキームでの参画可能性を示唆している。
出典: VnEconomy
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