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ベトナム財務省の発表によると、2025年の国家予算収入は予算案(当初見積もり)を34.74%上回る約2,650兆1,000億ドンに達し、GDP比の動員率は約20.63%と過去10年間(2016〜2025年)で最高水準を記録した。2025年のGDP成長率8.02%という力強い経済成長が税収を押し上げた一方、政府は約250兆9,000億ドン規模の減免税・猶予措置を実施しており、財政運営の「攻めと守り」の両立が浮き彫りとなった。2026年度予算編成にも大きな示唆を与える内容である。
2025年ベトナム経済を取り巻く環境——「困難が機会を上回る」1年
2025年はベトナムにとって、2021〜2025年の5カ年経済社会発展計画の最終年であり、「加速・突破・ゴール」をスローガンに掲げた極めて重要な年であった。年初から政府は成長率8%以上を目標に設定し、さらに次期計画期間での「二桁成長」に向けた基盤づくりにも着手していた。
しかし、国際環境は厳しさを増した。世界各地での軍事的緊張は収まらず、大国間の戦略的競争と民族主義の台頭が地域の安全保障を脅かした。とりわけ米国発の関税戦争が激化し、ベトナムの輸出依存型経済にとって直接的な逆風となった。エネルギー安全保障や食料安全保障への懸念も高まり、気候変動に伴う自然災害が深刻化した。国内では2025年後半に「台風に台風が重なり、洪水に洪水が重なる」という異常気象が発生し、農業・インフラに甚大な被害をもたらした。
国際機関の見通しとしては、2026年1月末時点でIMFや世界銀行など主要機関が2025年の世界経済成長率を2.3〜3.2%と予測しており、従来予測から0.0〜0.2ポイント上方修正されたものの、2024年実績を下回る水準にとどまった。多くの国でインフレは鎮静化傾向にあり、各国は成長促進に向けたマクロ政策の修正を進め、AIなど新技術への期待が金融環境を改善させた点はプラス材料であった。
大規模な減免税措置——約250兆9,000億ドンの支援策
こうした困難な環境に対応するため、ベトナム国会と政府は大規模な財政支援策を継続・拡充した。具体的には以下の措置が講じられた。
- 付加価値税(VAT)の2ポイント引き下げ:標準税率10%を8%に据え置き継続。消費喚起と企業の価格競争力維持を狙った措置である。
- ガソリン・軽油に対する環境保護税の引き下げ:輸送コスト抑制を通じた物価安定策として機能した。
- 土地賃借料の減額:製造業やサービス業の固定費負担軽減に寄与した。
2025年12月末までの累計で、企業・国民に対する税・手数料の免除・減額・猶予の総額は約250兆9,000億ドンに上った。このうち猶予(gia hạn)が約122兆ドン、免除・減額(miễn, giảm)が約128兆9,000億ドンである。規模・範囲ともに極めて大きく、米国の関税政策による打撃への緊急対応としても機能し、雇用維持、インフレ抑制、マクロ経済安定、社会保障の確保に貢献したと評価されている。
国家予算収入が予算案比34.74%超過——過去10年で最高の動員率
財務省の集計によると、2025年の国家予算収入総額は約2,650兆1,000億ドンとなった。これは以下の点で際立った実績である。
- 2025年度の予算案(dự toán)比で34.74%の超過達成
- 2024年実績見込み比で29.67%の増収
- GDP比の予算動員率は約20.63%で、2016〜2025年の10年間で最高
過去9年間のいずれの年と比較しても、前年比伸び率・予算案比超過率の双方で2025年が最も良好な結果を残した。
高水準の税収を支えた要因
この好調な税収の背景には、複数の構造的・政策的要因がある。
第一に、GDP成長率8.02%という力強い経済成長である。世界経済の逆風にもかかわらず、ベトナム経済は製造業の輸出拡大やFDI(外国直接投資)の継続的流入に支えられ、高い成長軌道を維持した。
第二に、税務行政のデジタル化と徴税強化である。財務省は年初から各省庁・地方自治体と緊密に連携し、税法の適正な執行と税収確保に取り組んだ。具体的には、課税ベースの拡大、事業登録企業の全件調査、地域ごとの税源管理の徹底が進められた。
第三に、重点分野での脱税・漏税対策の強化である。特にリスクの高い分野として以下が重点的に管理された。
- 不動産・土地取引:近年の不動産市場の活況に伴い、取引価格の適正申告を厳格化
- Eコマース(電子商取引):急成長するオンライン販売プラットフォームへの課税体制を整備
- 越境取引:海外プラットフォーム事業者への課税を強化
- 定額課税の個人事業主:実態に即した課税額への見直し
さらに、税務行政のDX(デジタルトランスフォーメーション)としてAI(人工知能)を活用した納税者支援サービスの導入、電子申告・電子納税環境の高度化が進められ、納税者の利便性向上と行政コスト削減の両立が図られた。
2026年度予算と政策の方向性
2025年はベトナム共産党の各級党大会が実施され、第14回党大会(Đại hội XIV)に向けた準備が本格化した年でもある。「党・国家機構のスリム化革命」と呼ばれる行政組織の効率化が推進されており、これは歳出面での構造的な改革につながる可能性がある。2026年度予算の編成にあたっては、2025年の想定以上の税収実績が歳入見通しの上方修正要因となる一方、大規模な減免税措置の継続が必要かどうかが政策判断の焦点となる。
政府は次期5カ年計画期間(2026〜2030年)での「二桁成長」を視野に入れており、公共投資の加速、インフラ整備、デジタル経済の推進が予算配分の優先事項となる見込みである。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム株式市場への影響:2025年のGDP成長率8.02%と税収の大幅超過は、ベトナム経済のファンダメンタルズの強さを示すものであり、株式市場全体にとってポジティブな材料である。特に銀行セクターは融資拡大と不良債権比率の安定を通じて恩恵を受けやすく、VCB(ベトコムバンク)やBID(BIDV)、CTG(ヴィエティンバンク)など国有銀行株への注目度が高まる。VAT引き下げの恩恵を受ける小売・消費関連銘柄(MWG:モバイルワールドなど)も追い風となる。
日本企業・ベトナム進出企業への影響:約250兆9,000億ドン規模の減免税措置は、ベトナムに製造拠点を置く日系企業にとっても直接的なコスト削減効果をもたらす。土地賃借料の減額や環境保護税の引き下げは、特に製造業の操業コストに好影響を与える。一方で、Eコマースや越境取引への課税強化は、日系のEC関連事業者にとってコンプライアンスコストの増加要因となる点には留意が必要である。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げにとって、財政の健全性と経済成長の持続性は重要な評価要素である。GDP比20.63%という高い税収動員率は、財政基盤の強固さを国際的にアピールする材料となる。格上げが実現すれば、海外機関投資家の資金流入が加速し、VN-Index(ホーチミン証券取引所の主要指数)の中長期的な上昇ドライバーとなる可能性が高い。
リスク要因:ただし、米国の関税政策の動向は依然として最大の不確実要因である。2025年に実施された大規模な減免税措置は、裏を返せばそれだけ外部ショックが大きかったことの証左でもある。2026年以降、こうした支援策を段階的に縮小する過程で、企業業績や消費に一時的な下押し圧力がかかるリスクも想定しておくべきである。また、自然災害の頻発は農業GDP や保険セクターへの影響が無視できず、気候リスクへの備えが中長期的な投資判断の重要な変数となる。
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