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ベトナムを代表するテクノロジー企業VNG(ベトナム・ナショナル・ゲーミング、ホーチミン市証券取引所上場)が、同社の看板プロダクトである国民的メッセージアプリ「Zalo(ザロ)」と、モバイル決済サービス「ZaloPay(ザロペイ)」の売上高を初めて公式に開示した。長年にわたりセグメント別の収益構造がベールに包まれていた同社にとって、これは画期的な情報開示であり、投資家やアナリストの間で大きな注目を集めている。
初公開された数字の全容
VNGが今回明らかにした数字によると、2025年(昨年)のZaloの売上高は1兆718億ドン、ZaloPayの売上高は1兆111億ドンであった。合計すると約2兆829億ドンに達する。VNGはこれまで、主力のオンラインゲーム事業の業績は比較的詳しく開示してきたものの、Zaloを中心とするコミュニケーション・プラットフォーム事業や、ZaloPayを含むフィンテック事業については個別の収益データを明かしてこなかった。今回の開示は、投資家との対話強化やガバナンス向上を意識した動きとみられる。
Zalo — ベトナムの「国民的インフラ」
Zaloは2012年にVNGがリリースしたメッセージングアプリで、現在のベトナムにおけるコミュニケーションの基盤ともいえる存在である。月間アクティブユーザー数は7,000万人を超えるとされ、ベトナム国内ではMeta(旧Facebook)傘下のMessengerと肩を並べるか、それ以上の普及率を誇る。日本でいえばLINEに相当するポジションであり、個人間のチャットだけでなく、行政手続き、企業の顧客対応、ニュース配信など多岐にわたる用途で利用されている。
Zaloの収益源は主に、企業向けの公式アカウント(Zalo Official Account)運営費用、広告配信、そしてミニアプリ(Zalo Mini App)プラットフォームでの手数料収入などである。1兆718億ドンという売上規模は、同アプリがすでに「無料の便利ツール」から「収益を生むプラットフォーム」へと着実に転換していることを示す数字といえる。
ZaloPay — フィンテック戦場での存在感
ZaloPayは、Zaloのエコシステムを活用したモバイル決済・電子ウォレットサービスである。ベトナムのモバイル決済市場は、MoMo(モモ)、VNPay(ブイエヌペイ)、ShopeePay(ショッピーペイ)など有力プレーヤーがひしめく激戦区だ。その中でZaloPayは、Zaloユーザーベースとの連携という強力な武器を持ちながらも、市場シェアではMoMoやVNPayの後塵を拝してきたとされる。
しかし、1兆111億ドンという売上高は、ZaloPayが単なる「おまけ機能」ではなく、独立した事業として一定の規模に成長していることを裏付ける。ベトナム政府はキャッシュレス社会の推進を国策として掲げており、2025年までに非現金決済比率を大幅に引き上げる目標を設定している。こうした政策環境も、ZaloPayの成長を後押ししている。
なぜ今、情報開示に踏み切ったのか
VNGは2022年末にナスダック上場を目指す形で米国市場への進出を試みたが、SPAC(特別買収目的会社)を通じた上場計画は紆余曲折を経ている。また、ホーチミン市証券取引所(HOSE)での株式は流動性が限られ、時価総額に比して取引量は必ずしも大きくない。こうした状況下、事業ポートフォリオの透明性を高めることは、国内外の機関投資家からの資金を呼び込む上で不可欠のステップである。
さらに、ベトナム証券市場全体が2026年9月にFTSE新興市場指数への格上げ判定を控えている。格上げが実現すれば、グローバルな機関投資家から数十億ドル規模の資金流入が見込まれるが、そのためにはベトナム上場企業の情報開示水準の底上げが求められている。VNGの今回の動きは、こうした市場全体のガバナンス改善の潮流とも合致するものだ。
VNGの全体像 — ゲームからスーパーアプリへ
VNGは2004年にオンラインゲーム企業として設立され、「Võ Lâm Truyền Kỳ」などのMMORPGで急成長を遂げた。その後、Zaloの開発・運営、クラウドサービス(VNG Cloud)、音楽配信(Zing MP3)、決済(ZaloPay)など事業を多角化し、ベトナム屈指のテクノロジーコングロマリットへと変貌を遂げている。かつてはゲーム事業が売上の大半を占めていたが、今回の開示により、ZaloとZaloPayだけで合計2兆829億ドンの売上があることが判明し、非ゲーム事業の存在感が数字で裏付けられた形だ。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム株式市場・関連銘柄への影響:VNGの情報開示姿勢の改善は、同社株の再評価につながる可能性がある。セグメント別の収益が明確になることで、アナリストがより精緻なバリュエーションモデルを構築でき、適正株価の議論が活性化するだろう。ZaloとZaloPayの成長ポテンシャルが高く評価されれば、ゲーム事業の成熟化に対する市場の懸念を相殺し得る。
日本企業・ベトナム進出企業への示唆:Zaloは日系企業がベトナムで顧客接点を構築する際の重要チャネルである。公式アカウントやミニアプリを活用したマーケティング・CRM(顧客関係管理)は、ベトナム市場攻略の定石となりつつある。Zaloの収益化が進むということは、企業向けサービスの料金体系が今後変動する可能性も意味しており、ベトナム進出企業は動向を注視すべきである。
FTSE新興市場指数格上げとの関連:前述の通り、2026年9月のFTSE格上げ判定においては、市場のアクセシビリティだけでなく、上場企業の情報開示やコーポレートガバナンスも評価対象となる。VNGのような主要テック企業が率先して透明性を高める動きは、市場全体の格付け向上に寄与するポジティブなシグナルといえる。
ベトナム経済全体のトレンド:ベトナムのデジタル経済は急速に拡大しており、Google・Temasek・Bain & Companyの共同レポートでは東南アジアの中でも最も成長が速い市場の一つと位置づけられている。VNGのZaloやZaloPayは、このデジタルトランスフォーメーションの象徴的存在であり、今回の数字はベトナムのテックセクターが「ユーザー獲得フェーズ」から「収益化フェーズ」へ移行しつつあることを端的に示している。
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