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2026年3月23日、ベトナム株式市場の代表的指数であるVN-Indexが前日比3.44%の大幅安となり、終値は1,591.17ポイントと心理的節目の1,600ポイントを下回った。市場全体がほぼ全面安となる厳しい展開のなか、証券会社の自己売買部門(プロプライエタリー・トレーディング)が520.8億ドンの買い越し、国内機関投資家が583億ドンの買い越しと、合計1,100億ドン超の資金を投下して押し目買いに動いた点が注目される。一方、海外投資家は423.4億ドンの売り越し、個人投資家は598.8億ドンの売り越しとなり、投資家層ごとの明暗がくっきり分かれた一日であった。
市場全体の概況——売買代金は3兆1,739億ドン超
この日のホーチミン証券取引所(HOSE)、ハノイ証券取引所(HNX)、UPCoM市場を合わせた3市場合計の売買代金は3兆1,739.5億ドンで、前日比5.2%減少した。そのうち、板取引(マッチングオーダー)による売買代金は2兆8,246.4億ドンとなり、前日比3.8%減であった。ただし直近5営業日平均と比較すると13.7%増、直近20営業日平均との比較では15.3%減と、短期的にはやや出来高が戻りつつあるものの、中期トレンドでは依然として低調である。
HOSEの板取引の売買代金は2兆6,126.0億ドンで、前日比3.9%減。これは同日の全体売買代金の89.1%を占めた。協議取引(ブロックトレード)の売買代金は3,493.1億ドンで前日比15.2%減少し、全体の11%にとどまった。
セクター別動向——ほぼ全面安、原油・小売・ゴムが5%超の急落
セクター別の値動きを見ると、ほぼ全業種が下落した。特に下落率が5%を超えた業種は、石油・ガス(ダウザー)、小売(バンレー)、ゴム(カオスー)、鉱業(カイコアン)、パーソナル用品(ハンカーニャン)、電気設備(ティエットビーディエン)であった。
セクター別の売買代金(流動性)では、化学、不動産、IT(情報技術)、鉄鋼、石油・ガス、食品の各セクターで減少が目立った。一方、銀行、証券、小売セクターでは売買代金が増加しており、急落局面で資金がディフェンシブ寄りのセクターや金融株に移動している様子がうかがえる。
資金配分の比率で見ると、銀行、証券、小売、建設・資材、産業サービス、パーソナル・家庭用品への配分が増加。逆に不動産、食品、石油・ガス、鉄鋼、化学、IT、公益事業、観光・レジャー、自動車・部品、通信への配分は減少した。また、板取引に限定すると、中型株(VNMID)や小型株(VNSML)への資金配分比率が上昇し、大型株(VN30)からの比率は低下した。
投資家層別の売買動向——「スマートマネー」が押し目買い
自己売買部門(プロプライエタリー)
証券会社の自己売買部門は520.8億ドンの買い越し。板取引ベースでは547.1億ドンの買い越しであった。板取引では18業種中10業種で買い越しとなり、特に小売セクターと銀行セクターの買い越しが大きかった。買い越し上位銘柄は、MWG(モバイルワールド/ベトナム最大手の家電・携帯販売チェーン)、HPG(ホアファット・グループ/ベトナム最大手の鉄鋼メーカー)、MBB(MBバンク)、TCB(テクコムバンク)、CTG(ベトコムティンバンク=ベトナム工商銀行)、VIC(ビングループ/ベトナム最大手コングロマリット)、OCB(オリエントコマーシャルバンク)、SSI(SSI証券)、VGC(ビグラセラ)、VIB(VIBバンク)であった。
一方、売り越し上位は食品・飲料セクターが中心で、個別銘柄ではMSN(マサングループ)、ACB(アジアコマーシャルバンク)、SHB(サイゴンハノイバンク)、VPB(VPバンク)、E1VFVN30(VN30連動ETF)、HHV、FPT(FPTコーポレーション/ベトナム最大手IT企業)、BAF、FUEVFVND(VNダイヤモンドETF)、DBCが並んだ。
国内機関投資家
国内機関投資家は583億ドンの買い越し。板取引ベースでは477.4億ドンの買い越しであった。板取引ベースでは18業種中9業種で売り越しとなったものの、最大の買い越しセクターは不動産であった。買い越し上位銘柄はHDB(HDバンク)、VPB、VHM(ビンホームズ/ビングループ傘下の不動産大手)、VCG(ビナコネックス)、NVL(ノバランド/大手不動産デベロッパー)、DGC(ドゥクザン化学)、TCB、BSR(ビンソン精油)、GEX(ジェレックスグループ)、EVF(EVNファイナンス)であった。
売り越しの最大セクターは食品・飲料で、個別銘柄ではVPI、FPT、CTG、MSN、PET、VNM(ビナミルク/ベトナム最大手乳業メーカー)、PLX(ペトロリメックス)、SHB、TCX、GASが売り越し上位に並んだ。
海外投資家
海外投資家は423.4億ドンの売り越し。板取引ベースでは301.5億ドンの売り越しであった。板取引での買い越しセクターは食品・飲料、金融サービスが中心で、買い越し上位銘柄はMSN、VNM、VCK、FPT、TCX、CTG、PLX、GAS(ペトロベトナム・ガス)、PVD(PVドリリング)、DGWであった。
一方、売り越しセクターは不動産が最大で、売り越し上位銘柄はMWG、VHM、VIC、HDB、STB(サコムバンク)、BSR、DGC、KBC(キンバック都市開発)、MBBとなった。
個人投資家
個人投資家は598.8億ドンの売り越し。板取引ベースでは723.1億ドンの売り越しであった。板取引では18業種中7業種で買い越しとなったが、買い越しの中心は小売セクター。買い越し上位銘柄はMWG、VIC、VPI、STB、VHM、PET、VND(VNダイレクト証券)、SHB、BID(BIDV=ベトナム投資開発銀行)、NAFであった。
売り越しは18業種中11業種に及び、金融サービスと銀行セクターが中心。売り越し上位銘柄はHPG、VCG、VCK、MSN、VNM、VPB、SSI、NVL、EVFであった。
注目の協議取引——MBBで452.4億ドン規模の大口クロス
この日の協議取引で特に目を引いたのが、MBB(MBバンク)で約1,740万株、金額にして452.4億ドン相当が海外投資家間でクロス取引された点である。さらに、HDB、STB、TCB、EIB(エクシムバンク)、LPB(リエンベトポストバンク)といった複数の銀行銘柄でも協議取引が確認されており、機関投資家レベルでの銀行株のポートフォリオ組み替えが活発化している可能性がある。
投資家・ビジネス視点の考察
今回のVN-Index 1,600ポイント割れは、2026年に入って以降の調整局面が深まっていることを示す象徴的な出来事である。以下のポイントに注目したい。
1. 自己売買と機関の「逆張り買い」の意味
自己売買部門と国内機関投資家が合計で1,100億ドン超の買い越しに動いた点は、いわゆる「スマートマネー」がこの水準を割安と判断していることを示唆する。特に自己売買部門がMWGやHPG、大手銀行株を積極的に拾っている点は、短期的なリバウンドへの期待感を反映しているとみられる。
2. 海外投資家の売り越し継続とFTSE格上げへの影響
海外投資家は引き続き売り越し基調にある。ベトナムは2026年9月のFTSE新興市場指数への格上げ判定を控えており、本来であれば海外資金の流入期待が高まる局面である。しかし、グローバルなリスクオフムードや、ベトナム市場特有の流動性不足への懸念が、短期的な海外マネーの撤退を招いている可能性がある。格上げが実現すれば数十億ドル規模のパッシブ資金流入が見込まれるため、現在の調整局面はむしろ中長期投資家にとってのエントリーポイントとなり得る。
3. セクターローテーションの兆候
資金配分が不動産・石油ガス・鉄鋼から銀行・証券・小売にシフトしている点は注目に値する。特に銀行セクターは協議取引も活発であり、大口の機関投資家がポジションを再構築している可能性がある。VN-Indexに占める銀行セクターのウエイトは約30%と非常に大きいため、銀行株の動向が今後の指数回復の鍵を握る。
4. 中小型株への資金シフト
板取引ベースでVN30(大型株)からVNMID(中型株)・VNSML(小型株)への資金移動が確認された。大型株主導の下落局面で中小型株が相対的に底堅いことは、個別銘柄のファンダメンタルズに基づいた選別投資が進んでいることを意味する。
5. 日本企業・日系投資家への示唆
ベトナムに進出している日系企業やベトナム株に投資する日本の投資家にとって、現在の調整局面は銘柄選定を見直す好機である。特にFPTやVNM、MWGなど日本の投資家にも馴染みの深い優良銘柄が下落しており、FTSE格上げを見据えた中長期的な仕込み場として検討に値するだろう。ただし、VN-Indexが重要なサポートラインを割り込んだことでテクニカル的な下落リスクも残るため、分散投資と段階的なエントリーが求められる。
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