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ベトナムは世界でもっとも速いペースで富裕層が増加している国の一つであり、特にZ世代(1990年代後半〜2010年代前半生まれ)の資産形成への関心が急速に高まっている。証券口座数はわずか5年で5倍超に膨れ上がり、暗号資産の普及率も世界トップクラスだ。しかし、その一方で若年層の個人財務管理には深刻な課題がある。ACB資産運用会社(ACBC)のハー・マイン・トゥアン プロダクトディレクターが指摘する「4つの大きな失敗」と、今後のウェルスマネジメント市場の展望を詳しく解説する。
爆発的に拡大するベトナムの若年投資家層
ベトナム証券保管振替機関(VSDC)のデータによると、2026年初頭時点でベトナムの証券口座総数は1,210万口座を突破した。5年前と比較して5倍以上の伸びであり、人口約1億人の国としては驚異的なペースである。この急増を牽引しているのが、スマートフォンネイティブであるZ世代の若者たちだ。
さらに注目すべきは暗号資産(仮想通貨)の浸透度である。ブロックチェーン分析企業チェイナリシス(Chainalysis)が毎年発表するGlobal Crypto Adoption Indexにおいて、ベトナムは常に世界トップ3にランクインしている。推定2,000万〜2,100万人のベトナム人が暗号資産を保有または利用しており、これは全人口の約20%に相当する。
トゥアン氏によれば、前の世代は金の延べ棒や不動産といった「手で触れられる資産(tangible assets)」を好んだ。戦争や経済危機を経験してきた世代にとって、絶対的な安全性が最優先だったからである。一方、Z世代は流動性の高さ、透明性、そして高い成長性を重視する。少額の初期資本でも高いリターンを狙えるチャンスを求め、モバイルアプリを通じていつでもどこでもポートフォリオを管理したいと考えている。
Z世代が犯す「4つの大きな失敗」
こうした積極性の裏側で、トゥアン氏はベトナムの若者が個人財務管理において陥りがちな4つの重大な過ちを指摘している。
失敗①:「稼ぐこと」と「守ること」を区別できていない
多くの若者は早い段階からかなりの収入を得ているが、そのほぼ全額を使い切り、場合によっては収入以上の生活水準で暮らしてしまう。いわゆる「ライフスタイル・インフレーション」である。「たくさん稼げば金持ちになれる」と考えがちだが、実際には貯蓄率(savings rate)こそが資産蓄積のスピードを決定づける要因である。暗号資産で大きく稼いだものの、その後資金を守れず、借金を抱えてしまう若者も少なくないという。
失敗②:感情とFOMOに基づく投資
友人の話、TikTok、YouTube、証券関連のSNSグループなどの情報に煽られ、明確な計画もなく投資に飛び込むケースが後を絶たない。今日は暗号資産が上がっているから暗号資産を買い、明日は株式市場が過熱しているから全資金を株に投じる——という具合だ。その結果、高値掴み・安値売りという典型的な失敗パターンに陥り、大きな損失を被ることになる。
失敗③:個人の財務計画が存在しない
ほとんどの若者は、「自分の財務健全性はどうなっているか」「自分のリスク許容度は実際どの程度か」「収入・支出・貯蓄のバランスはどうか」「3年後、5年後、10年後の財務目標は何か」「中長期投資に影響を与えないよう、どのようにキャッシュフローを配分すべきか」といった基本的な問いに向き合ったことがない。
失敗④:計画がないためトレンドに流され、コントロールを失う
財務計画がなければ、市場のトレンドや周囲の雰囲気に簡単に巻き込まれ、最終的に資金管理のコントロールを完全に失ってしまう。情報アクセスや投資チャネルは前の世代より格段に充実しているにもかかわらず、規律の欠如、基礎知識の不足、感情に左右されやすい点が致命的な弱点となっている。
トゥアン氏が若者に勧める具体的アクション
トゥアン氏は若者に対し、以下のシンプルなステップから始めることを推奨している。
- 支出をコントロールする
- 6カ月分の生活費に相当する緊急予備資金を構築する
- 投資信託(chứng chỉ quỹ)やETFを通じた定期積立投資を学ぶ
- 最低5〜7年は継続する忍耐力を持つ
「財務管理の成功は、最高の投資チャネルを選ぶことではなく、自分に最も合ったものを選び、忍耐と規律を持って続けることにある」とトゥアン氏は強調する。
今後5〜10年のウェルスマネジメント市場の展望
トゥアン氏は、ベトナムのウェルスマネジメント(資産管理)市場が今後5〜10年で急成長すると予測している。その背景には以下の要因がある。
第一に、中間層・富裕層の急速な拡大である。ベトナムの一人当たりGDPはすでに5,000ドルを超えており、今後もさらなる上昇が見込まれる。資産100万ドル以上の世帯数も急速に増加中だ。
第二に、25〜40歳の若年層が市場の主要な推進力となっている点である。彼らは早くから収入を得、情報へのアクセスが速く、少額からでも積極的に投資する意欲を持っている。
トゥアン氏はさらに、今後の4つの明確なトレンドを予測している。
- 感覚的な個人投資から、投資信託・ETFを活用した体系的投資への移行——個別株や暗号資産への自己運用は時間がかかり損失リスクも高いことに気づいた若者が、プロフェッショナルなソリューションに移行しつつある。
- 「塵も積もれば山となる」式の少額定期積立投資——数億ドンを貯めてから投資するのではなく、月に数百万ドン(数万円相当)をモバイルアプリ経由で継続的に投資するスタイルが主流になる。
- 包括的なファイナンシャルプランニングへの需要拡大——投資だけでなく、住宅購入、出産、早期退職などのライフプラン全体を見据えた計画策定のニーズが高まる。単なる金融商品の購入ではなく、「伴走者」としてのアドバイザーが求められている。
- 伝統的金融とデジタル金融の融合——暗号資産やデジタル資産への関心は続くが、個人の財務計画の中で適切な配分比率を理解した上で活用する方向に進む。
「ただし、業界が持続的に発展するためには、金融教育の充実と、若者のリスク許容度に合ったソリューションの構築に注力する必要がある。若者がスマートかつ規律ある投資を行うようになって初めて、ウェルスマネジメント業界は真の意味で爆発的に成長する」とトゥアン氏は締めくくった。
投資家・ビジネス視点の考察
本記事の内容は、ベトナム株式市場および関連ビジネスに対して複数の重要な示唆を含んでいる。
まず、証券口座数が1,210万を突破したという事実は、ベトナム証券市場の裾野が着実に広がっていることを示している。2026年9月に予定されるFTSE新興市場指数への格上げ決定とあわせて考えると、国内個人投資家の厚みと海外機関投資家の資金流入が重なり、市場の流動性が大幅に改善する可能性がある。これは日本からベトナム株に投資する個人投資家にとっても、売買しやすさの向上という観点で明るい材料だ。
次に、ウェルスマネジメント市場の成長見通しは、ベトナムの金融セクター銘柄にとって中長期的な追い風となる。ACB銀行(ティッカー:ACB)をはじめとする商業銀行系の資産運用子会社、あるいはSSI証券やVNDirect証券といった証券会社が、投資信託やETF商品のラインナップを拡充することで手数料収入を伸ばす余地は大きい。
日本企業との関連では、SBIホールディングスがベトナムのTPBank(ティエンフォン銀行)に出資しているほか、野村ホールディングスもベトナム市場への関心を示してきた。ベトナムの若年層が資産運用に目覚める流れは、こうした日系金融機関にとってもビジネスチャンスの拡大を意味する。
一方で、記事が指摘するようにFOMO投資や金融リテラシーの不足は、市場の過度なボラティリティ要因にもなり得る。個人投資家の感情的な売買が急増すれば、特定の銘柄やセクターで急騰・急落が繰り返されるリスクがある。ベトナム株に投資する際には、こうした市場特性を十分に理解した上でポジションを取ることが重要である。
ベトナムの一人当たりGDPが5,000ドルを超えた段階は、経済発展の歴史においてサービス業・金融業が急拡大する転換点とされる。まさに今のベトナムは、かつての2000年代前半の中国や2010年代のインドネシアが経験したような「資産運用の大衆化」の入口に立っている。この構造的な成長トレンドを捉えることが、ベトナム投資の中長期戦略において極めて重要である。
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出典: 元記事












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