ベトナム最大の経済都市ホーチミン市が、サイゴン川に架かる新たな大型橋梁「トゥーティエム4橋(Cầu Thủ Thiêm 4)」の建設に向けて本格的に動き出した。ホーチミン市人民委員会は、同橋の建築デザインを選定するためのコンペティション(設計競技)計画を正式に承認し、2026年第3四半期の着工、2028年第4四半期の完成を目指して各関係機関に準備を加速するよう指示した。総事業費は約5,063億ドン(約5兆630億ドン)に上り、市の財政予算を投じる大型プロジェクトとなる。
トゥーティエム4橋とは何か──都市の南北を結ぶ交通の要
トゥーティエム4橋は、サイゴン川を渡ってタントゥアン(Tân Thuận)地区とアンカイン(An Khánh)地区を結ぶ計画の橋梁である。全路線の延長は約2.16kmで、うち橋梁部分が約1.635kmを占める。起点はグエンバンリン通り(Nguyễn Văn Linh)のタントゥアン2橋付近、終点はトゥーティエム新都市区のグエンコータック通り(Nguyễn Cơ Thạch、南北軸道路)に接続する。
設計規模は国家基準の「1級工事」に分類され、都市幹線道路の基準(QCVN 07-4:2023/BXD)に準拠した8車線の断面構成が予定されている。完成すれば、急速に開発が進むトゥーティエム新都市区と、ホーチミン市南部の新都市エリアを直結する交通の大動脈となる。
ホーチミン市にはすでにトゥーティエム1橋(2007年開通)、トゥーティエム2橋(2022年開通)が供用されているが、爆発的な人口増加と都市開発の進展により交通需要は年々膨張している。トゥーティエム3橋の計画も並行して進むなか、4橋の建設はサイゴン川両岸の一体的な都市発展にとって不可欠なピースと位置づけられている。
国内外に門戸を開くデザインコンペ──85日間で最適案を選定
今回承認されたデザインコンペは、ホーチミン市交通建設工事投資プロジェクト管理委員会が主催機関として運営する。コンペの最大の特徴は「広く開放された形式」で実施される点にあり、参加団体の数に制限を設けない。国内外の設計コンサルタント企業やコンソーシアム(共同企業体)が応募可能で、建築・都市計画・橋梁交通分野で十分な実績と能力を有することが求められる。
具体的な参加要件としては、過去に1級または2級の工事実績があること、あるいは交通建築デザインコンペでの受賞歴があることが挙げられている。設計の主任担当者は5年以上の実務経験を持つ建築士で、所定の資格証明書を保有していなければならない。
コンペのスケジュールは、2026年3月17日を起算日として約85日間。参加登録した各団体の能力審査を経て、設計案の作成段階に進む。審査委員会が各案を評価・順位付けし、最適案を市人民委員会に上申して承認を得る流れだ。結果は公表され、規定に基づく表彰・授賞も行われる。
市側はコンペの目標として、「現代的で独創性があり、交通路線上のランドマークとなるデザイン」の選定を掲げている。単なる機能的な橋梁ではなく、トゥーティエム新都市区の発展を象徴するアイコニックな構造物を求めていることがうかがえる。
総事業費5,063億ドン──2つのサブプロジェクトで構成
トゥーティエム4橋建設プロジェクトは、ホーチミン市人民評議会が2026年2月6日付で採択した決議第07号(07/NQ-HĐND)に基づき、投資方針が正式に決定されている。プロジェクトはAグループ(大規模事業)に分類され、財源は全額ホーチミン市の財政予算で賄われる。
総事業費は約5,063億ドン(5兆630億ドン)で、以下の2つのサブプロジェクトに分かれる。
サブプロジェクト1:用地補償・支援・再定住
総額約1,385億ドン(1兆3,850億ドン)。橋梁建設に伴う土地収用、住民への補償金支払い、移転先の確保などに充てられる。
サブプロジェクト2:トゥーティエム4橋の建設工事
総額約3,678億ドン(3兆6,780億ドン)。橋梁本体および両端の接続道路の設計・施工費用を含む。今回のデザインコンペはこのサブプロジェクト2に属する。
市人民委員会は、交通建設工事投資プロジェクト管理委員会を両サブプロジェクトの事業主体に指定。タントゥアン地区およびアンカイン地区の行政機関と連携し、関連する区画整理計画の再確認を行うとともに、用地補償・立ち退き作業の推進、詳細な事業実施計画の策定、予算の確保を並行して進めるよう指示している。
背景にあるトゥーティエム新都市区の開発加速
トゥーティエム新都市区は、サイゴン川を挟んでホーチミン市中心部(1区)の対岸に位置する約657ヘクタールの大規模開発エリアである。1990年代から構想が始まり、「ホーチミン市の新たな都心」として金融センター、商業施設、高級住宅、文化施設などの集積が計画されてきた。しかし、用地補償問題や資金調達の遅れにより、開発は長年にわたって停滞していた。
近年は状況が大きく変わりつつある。2022年のトゥーティエム2橋の開通を皮切りに、大手デベロッパーによる超高層ビルや複合施設の建設が相次いで始まり、エリアの様相は急速に変貌している。トゥーティエム4橋の建設は、この開発の勢いをさらに加速させるとともに、南部のグエンバンリン通り沿いの都市エリア(フーミーフン地区など)との連結を強化し、ホーチミン市南部全体の経済活性化に寄与することが期待されている。
日本企業への示唆──インフラ需要は依然旺盛
ベトナムのインフラ整備は、日本企業にとって引き続き大きなビジネス機会を提供している。ホーチミン市では都市鉄道(メトロ)1号線が日本のODA(政府開発援助)を活用して建設され、2024年末に商業運転を開始したばかりだ。橋梁分野でも、日本の建設・エンジニアリング企業が設計や施工に参画した実績は多い。
今回のトゥーティエム4橋のデザインコンペは国内外に開放されており、日本の設計事務所やゼネコンにとっても参加の余地がある。8車線規模の大型橋梁で「ランドマーク性」を求めるという条件は、高度な技術力とデザイン力を持つ日本企業の強みが活きる分野といえるだろう。また、建設工事本体の入札も今後控えており、関連するサプライチェーンを含めた商機に注目が集まる。
ホーチミン市は2030年までにGRDP(域内総生産)でASEAN域内のトップクラスの都市を目指す野心的な目標を掲げており、交通インフラの整備はその根幹を成す。トゥーティエム4橋は、その戦略の中で重要な一手となるプロジェクトである。今後の設計コンペの結果や施工事業者の選定動向を注視していきたい。
出典: Vn Economy
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