ハノイ在住13年の現地投資家による、より深い企業分析・投資戦略は👉 メンバーシップで公開中
中国の内需低迷を背景に、Anta(アンタ)、Urban Revivo(アーバンリバイボ)、Li-Ning(リーニン)といった中国発ファッションブランドが欧米市場を中心にグローバル展開を急速に拡大している。この動きは、ベトナムを含む東南アジアの繊維・アパレル産業やサプライチェーンにも少なからぬ影響を及ぼす可能性がある。ベトナム経済メディア「VnEconomy」が報じた内容をもとに、その全容と投資家視点での示唆を詳しく解説する。
Antaが米ビバリーヒルズに初出店、Urban Revivoはニューヨーク・ロンドンへ
2026年2月、中国最大手のスポーツブランドであるAnta(安踏体育・本社:福建省晋江市)が、米国カリフォルニア州ビバリーヒルズに同国初の店舗をオープンした。これは、中国ファストファッションブランドUrban Revivo(UR)がニューヨークとロンドンにフラッグシップストアを開設してから1年足らずでの出来事である。
さらに、ミラノで開催されたメンズファッションショーでは、北京発のスポーツブランドLi-Ningがランウェイに登場。その数日後にはギリシャの冬季オリンピック代表団のユニフォームデザインを担当した。一方、上海発のラグジュアリーブランドIcicle(之禾)も3月のパリ・ファッションウィークで注目を集めるなど、中国ブランドの国際舞台での存在感は一段と高まっている。
「低品質」の偏見から脱却—欧米の認識が激変
米ファッションブランドRevolve(リボルブ)のマイケル・メンテCEOは、「10〜20年前、中国ブランドは品質が低いという偏見を持たれていた。しかし現在、消費者は最も優れた製品の多くが中国から生まれていることに気づいている」と述べている。Revolveは最近、Li-Ningとパートナーシップを締結し、米国初の小売パートナーとしてバスケットボールシューズ「Way of Wade(ウェイ・オブ・ウェイド)」シリーズの販売を開始した。
メンテ氏は「グローバルなデジタル文化の観点から、中国ブランドのクリエイティビティはすでに明確なものとなっている。米国市場に参入する中国ブランドが今後さらに成功を収めていくと期待している」と語った。
この流れを後押ししているのが、米国における中国文化への関心の高まりである。タピオカ茶のHeytea(喜茶)やデザイナートイのPop Mart(泡泡玛特)といったライフスタイルブランドの浸透に加え、中国伝統医学への好奇心から、TikTok上では「Chinamaxxing(チャイナマキシング)」と呼ばれるトレンドが生まれている。
国境を越える吸引力—Songmont、Anta、Li-Ningの戦略
2013年にFu Song氏とWang Jie氏が設立した中国のハンドバッグブランドSongmont(松月)は、パリ・ファッションウィークでの活動やファッションアイコンのアレクサ・チャンとのコラボレーションを通じて、国際市場での存在感を急速に拡大している好例である。
コンサルティング企業Kantar(カンター)のデータマネージャー、エリー・ソープ氏によれば、Antaがカンターの「グローバルファッションブランドトップ10」に常時ランクインしている要因は、各ターゲット市場において適切なスポーツアンバサダーを選定する能力にあるという。「彼らは各市場で長期的な基盤を構築し、現地文化の一部になることを真剣に目指している」と同氏は分析する。
Antaの米国向け施策としては、NBAスター選手のステフィン・カリーとのコラボレーションが示唆されており、大きな話題を呼んでいる。また欧州市場でも投資を拡大しており、ギリシャの冬季五輪代表ユニフォームの提供もその一環である。
さらに注目すべきは、Anta Sportsの親会社が15億ユーロ(18億ドル相当)を投じて、世界最大級のスポーツブランドの一つであるPuma(プーマ)の株式29%を取得したことである。これは中国スポーツブランドによるグローバル戦略の中でも最大級の動きと言える。
LVMH出身デザイナーを続々招聘—ブランド価値の底上げ
中国ブランドのグローバル戦略は、店舗展開やスポーツマーケティングにとどまらない。LVMHグループの元デザイナーであるキム・ジョーンズとクリス・ヴァン・アッシュが、それぞれ中国のダウンジャケットブランドBosideng(波司登)とAntaのクリエイティブディレクターに就任するなど、国際的な人材の招聘にも積極的である。
これらのブランドは、文化的な認知度を高めるだけでなく、進出先市場で豊富な経験を持つデザイナーを起用することで、現地消費者の嗜好に合った製品開発を加速させている。
課題も残る—サイズ・フィット感の壁とデジタル優先戦略
マーケティング企業Red Ant(レッドアント)の共同創設者エリサ・ハルカ氏は、中国ブランドはグローバル市場で製品価値を訴求する上で有利なポジションにあると指摘する。審美眼が高く価格にも敏感な中国国内消費者を攻略した経験があり、かつブランドの出自よりも製品品質そのものに重点を置いているためである。
一方で、各市場の特性への適応は依然として課題である。特にアパレル(衣料品)は、サイズやシルエットが市場ごとに異なるため、バッグやアクセサリーに比べて参入障壁が高い。
AntaやLi-Ningは中国国内で数千店舗を展開しているが、海外展開においてはデジタルプラットフォームを優先し、市場参入コストを抑える戦略を採用している。Li-NingとRevolveの提携はその好例で、オンライン小売業者の運営能力を活用しつつ、重点市場ではオフラインのイベントや活動も展開するハイブリッド型のアプローチである。
なお、Li-Ningは過去にも米国市場への本格参入を試みたことがある。2010年にはNikeに対抗すべくオレゴン州ポートランドにショールームとデザインセンターを開設し、米国向けECサイトも立ち上げたが、いずれも2012年に撤退した。今回は過去の教訓を踏まえ、パートナーシップ型の慎重な展開を選択していると見られる。
投資家・ビジネス視点の考察—ベトナムへの影響は
中国ファッションブランドのグローバル展開加速は、ベトナムの繊維・アパレル産業および株式市場に以下のような複合的影響をもたらす可能性がある。
1. ベトナムの繊維・縫製セクターへの影響
中国ブランドが海外市場向け生産を拡大する場合、ベトナムはその生産委託先として恩恵を受ける可能性がある。AntaやLi-Ningのサプライチェーンにはすでにベトナムの工場が組み込まれているとされ、グローバル販売量の拡大はベトナム国内のOEM/ODM企業への発注増加につながり得る。ホーチミン市証券取引所(HOSE)上場の繊維関連銘柄(TCM、MSH、STKなど)への好材料となる余地がある。
2. 競争環境の変化
一方で、中国ブランドがベトナム市場にも積極展開する場合、国内アパレルブランドとの競合が激化する。ベトナムのファストファッション市場ではすでにSHEINやTemuなどの中国プラットフォームが存在感を示しており、Anta・Li-Ningのようなブランドが直接進出すれば、ベトナム国内ブランドにとっては脅威となる。
3. FTSE新興市場指数への格上げとの関連
2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げは、海外からの資金流入を大幅に増加させると期待されている。中国を含むアジアのブランド企業がベトナムに進出・投資することは、ベトナム経済の多角化と国際的な認知度向上に貢献し、格上げ後の投資環境整備にもプラスに働く可能性がある。
4. 日本企業への示唆
日本のアパレル企業やスポーツブランドにとっても、中国ブランドのグローバル攻勢は無視できない。ユニクロ(ファーストリテイリング)やアシックスなどは東南アジア市場でも中国ブランドとの競争に直面することになる。ベトナムに生産拠点を持つ日本企業は、サプライチェーンの効率化やブランド差別化の戦略をさらに強化する必要があるだろう。
中国の内需低迷がグローバル展開の「押し出し要因」となっている構図は、かつて日本企業が円高・内需縮小を機に海外進出を加速させた構図と重なる。今後、中国ブランドが欧米やアジア市場でどこまで浸透するかは、ベトナムの産業構造にも影響を与える重要なテーマとして注視していきたい。
いかがでしたでしょうか。今回のニュースについて、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。
この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
✅ 個別銘柄の詳細分析 ✅ FTSE格上げ関連速報 ✅ 現地だからわかるリアルタイム情報
👉 月額980円でメンバーシップに参加する
出典: 元記事(VnEconomy)












コメント