中東地政学リスクがベトナム輸出企業を直撃──物流コスト急騰の中、サプライチェーン再構築と交渉力強化が急務に

Tái cấu trúc chuỗi logistics, đa dạng hóa nguồn cung và nâng cao năng lực đàm phán

中東情勢の緊迫化が国際物流に深刻な影響を及ぼす中、ベトナムの輸出企業も物流コストの急騰と輸送遅延という二重の試練に直面している。一方で、この混乱期こそがサプライチェーンの再構築、調達先の多様化、そして国際商取引における交渉力向上の好機となり得るとの見方も広がっている。ベトナム経済誌「VnEconomy」は、物流大手サンウェイ・ロジスティクス(Sunway Logistics)のルオン・チュン・タイン(Lương Trung Thành)総裁に、現状と今後の展望についてインタビューを行った。

目次

ホルムズ海峡封鎖リスク──世界の海上原油輸送の20%が通過する「喉元」

タイン総裁によれば、過去5年間を振り返ると、新型コロナウイルスのパンデミックが世界のサプライチェーンに未曾有の衝撃を与えたことは記憶に新しい。しかし今回の中東における地政学的緊張は、一地域の問題が瞬く間に世界全体の物流システムに波及するという点で、異なる性質の危機だという。

その最大の要因は、ペルシャ湾、とりわけホルムズ海峡の戦略的重要性にある。同海峡は世界の海上原油輸送量の約20%が毎日通過する、まさに「世界のエネルギー物流の喉元」とも呼べる要衝だ。この海域で安全保障上のリスクが高まれば、海運各社は航路変更や予防措置を講じざるを得ず、輸送コストと所要時間の両面で甚大な影響が生じる。

国際貨物運送業者協会連盟(FIATA)も、湾岸地域および周辺海域における海上輸送の安全保障リスクの高まりを警告しており、一部の船舶は既に航路変更や運航一時停止を余儀なくされている。その結果、戦争リスク保険料や関連する追加料金が大幅に上昇している状況だ。

コンテナ船大手が戦争リスク追加料金を適用──最大1,500USD/TEU

タイン総裁は、イランにおける緊張がエスカレートして以降、多くの海運会社が戦争リスク追加料金(War Risk Surcharge)の適用を開始したと指摘する。現在、CMA CGM、マースク(Maersk)、ハパックロイド(Hapag-Lloyd)といったコンテナ船大手は、一般貨物に対して最大1,500USD/TEU(20フィートコンテナ1本あたり)、冷凍品や特殊貨物に対しては約3,500USD/TEUの追加料金を課すことを発表している。

また、MSCは中東向けの新規予約受付を一時停止した。一部の航路では、紛争地域を避けるため南アフリカ・喜望峰経由へと航路が変更されており、アジアと関連市場間の輸送日数が大幅に延びる事態となっている。

こうした追加コストは、最終的にベトナムの輸出入企業が負担することになる。コスト増だけでなく、輸送期間の長期化は、ベトナムの主力輸出品である農産物や冷凍食品にとって致命的だ。輸送中に品質が劣化すれば、商品価値の低下どころか、契約違反による違約金支払いに発展するケースも出てきている。

電子部品の航空輸送にも影響──中東経由便の混乱

ベトナムで近年成長著しい電子機器・電子部品の輸出も影響を免れない。これらの製品は欧州や米国向けに航空輸送されることが多いが、その多くが中東経由の乗り継ぎ便を利用している。当該地域での紛争発生により、航空便も迂回を強いられ、飛行時間の延長と燃料費の増加を招いている。

さらに注目すべきは、中東を直接通過しない航路にも影響が及んでいる点だ。基幹航路を運航する大型船(マザーシップ)が足止めされたり航路変更を余儀なくされると、その影響は連鎖的に他の航路へと波及し、市場全体の運賃水準を押し上げている。

低付加価値輸出品の構造的脆弱性が露呈

タイン総裁は、今回の物流市場の混乱がベトナムの輸出構造における課題を浮き彫りにしていると分析する。ベトナムの輸出品には、農産物、食品、一部の加工品など、単価が比較的低く利益率の薄い品目が多い。これらの製品は物流コストが製品価格に占める割合が高く、運賃が急騰すれば利益は大きく圧迫される。

また、戦争に起因する損害は不可抗力条項により保険の適用対象外となるケースもあり、企業が負うリスクはさらに大きくなっている。

FOB条件での交渉力不足──ベトナム企業の課題

国際商取引における交渉力という観点でも、ベトナム企業には改善の余地が大きいとタイン総裁は指摘する。貿易条件の一つであるFOB(本船渡し条件)で契約できれば、輸出企業は港での引き渡しや物流業者との連携において主導権を握ることができる。

しかし現実には、多くのベトナム企業は海外のバイヤーとの交渉でこうした条件を勝ち取る余地が乏しく、貿易条件や国際輸送の手配において外国側が主導権を握っているケースが少なくない。この状況は、物流市場が変動した際にベトナム企業を受け身の立場に追い込み、発生した物流コストが結局は買取価格の引き下げなど不利な条件として跳ね返ってくる構造を生んでいる。

分散型サプライチェーンへの移行──ベトナムにとっての好機

一方で、タイン総裁は今回の中東情勢が、世界の物流チェーンにおけるより大きな構造変化を映し出しているとも述べる。過去数十年間、国際物流システムは少数の地域や国が「スーパーハブ」として機能する集中型モデルで発展してきた。しかし、これらのハブが地政学的リスクや安全保障上の脅威に晒されると、世界の物流ネットワーク全体が影響を受けることが明らかになった。

コロナ禍や各地での地政学的緊張を経て、多くのグローバル企業はサプライチェーンの見直しを進めている。少数の大規模物流拠点への依存を減らし、より分散したネットワークを構築する動きが加速しているのだ。これにより、特定地域で混乱が生じた場合のリスクを軽減し、航路調整の柔軟性を高めることが狙いだ。

こうした流れの中で、製造拠点や物流中継地点を選定する際の基準も変化している。従来は生産コスト、物流コスト、市場規模が主な判断材料だったが、現在では政治的安定性、海上安全保障、事業継続性、物流システムの信頼性といった要素の重要性が格段に増している。

ベトナムが持つ3つの優位性

この文脈において、ベトナムは明確な優位性を持つとタイン総裁は強調する。

第一に、政治的安定性と比較的安定したビジネス環境。長期投資や物流中継拠点の選定において、これは極めて重要な要素である。

第二に、地理的優位性。ベトナムは北東アジア、東南アジアと欧州、中東、南北アメリカを結ぶ主要海運航路上に位置しており、地域の物流ネットワークにより深く参画できる条件を備えている。

第三に、物流インフラの改善。近年、港湾システム、特に深水港の整備が進み、大型コンテナ船の受け入れ能力が向上している。また、工業団地、物流センター、交通インフラへの投資も進んでおり、サプライチェーン機能の強化が図られている。2026年の開港を目指すロンタイン国際空港(Long Thành、ホーチミン市近郊)は、東南アジア地域における航空物流・中継ハブとなることが期待されている。

もちろん、地域の物流ハブとして確固たる地位を築くには、接続インフラの整備、物流サービスの質的向上、輸送コストの削減など、なすべきことは多い。しかしタイン総裁は、現在のグローバルサプライチェーンの変動こそがベトナムにとっての好機だと見る。国際企業がより安定した生産・物流拠点を模索する中、ベトナムは自らの強みを活かして地域物流ネットワークにおける存在感を高めることができるのだ。

港湾インフラ、接続システム、物流サービスへの投資が正しい方向で継続されれば、ベトナムはアジア太平洋地域のサプライチェーンにおける重要な中継点へと発展し、世界の生産拠点と主要消費市場を結ぶ架け橋としての役割を担う可能性を秘めている。

日本企業への示唆

今回の中東発物流危機は、ベトナムに生産拠点やサプライチェーンを持つ日本企業にとっても他人事ではない。短期的には輸送コストの上昇と納期遅延への対応が求められるが、中長期的には、調達先・物流ルートの多様化、そしてベトナム企業との取引条件(特にFOB条件への移行可能性)の見直しを検討する契機となり得る。

また、ベトナムがアジアにおける「安全で信頼性の高い物流拠点」としての地位を確立していく過程は、日本企業にとって新たな投資・連携の機会をもたらす可能性がある。ロンタイン空港の開港や深水港の拡充など、ベトナムの物流インフラ整備の動向を注視しておく価値は十分にあるだろう。

出典: VnEconomy

いかがでしたでしょうか。今回の中東地政学リスクとベトナム物流への影響について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。

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