日本政策投資銀行(DBJ)とベトナム最大手証券会社SSI証券が、共同運営の投資ファンド「Japan Vietnam Capital Fund」の設立を発表した。規模は9000万ドル(約135億円)で、両者の20年にわたる協力関係の集大成となる。ベトナム株式市場が「新興市場」への格上げを控える中、日本からの投資資金流入を加速させる戦略的な一手である。
ファンド設立の概要と背景
2月3日、DBJとSSI証券(ホーチミン証券取引所上場、証券コード:SSI)は、プライベートエクイティファンド「Japan Vietnam Capital Fund」の設立を正式に公表した。同ファンドはDBJとSSIの子会社であるSSIAM(SSI資産運用会社)が共同で運営する。
ファンド設立の背景には、ベトナム証券市場を取り巻く環境の劇的な変化がある。英国の指数算出会社FTSE Russellは最近、ベトナムを「セカンダリー・エマージング・マーケット(新興市場の第2グループ)」へ格上げすることを発表。これにより、グローバルな機関投資家からの資金流入が期待されている。また、ベトナム国家証券委員会の設立30周年を機に法整備も進み、外国人投資家にとっての投資環境が整いつつある。
ファンドの投資戦略
Japan Vietnam Capital Fundは、ベトナムの上場企業への投資に特化する。投資対象は、安定した財務基盤と長期的な経営戦略を持つ企業を優先する方針だ。DBJが持つ日本の政策金融機関としての経験・ノウハウと、SSIAMが持つベトナム国内市場への深い知見を組み合わせた「共同運営モデル」が特徴となる。
SSIAMの運用資産残高(AUM)は10億ドル(約1500億円)の大台を突破しており、ベトナムにおける資産運用会社として確固たる地位を築いている。今回のファンド設立は、2020年に両者が立ち上げた「ベトナム成長投資ファンド(VGIF)」の成功を踏まえた次のステップとなる。VGIFはすでに投資フェーズを完了しており、その実績が今回の新ファンド設立につながった。
関係者のコメント
SSI証券のグエン・ドゥック・トン社長は、日越関係の深化を強調した。「ベトナムと日本の協力関係は数十年にわたって緊密に発展してきた。特に2023年に両国関係が『包括的戦略的パートナーシップ』に格上げされたことで、多分野における質の高い協力の可能性が広がった」と述べた。さらに、「今後はインフラ開発や資本市場を通じた中長期資金の調達に注力し、ベトナム政府が掲げる『飛躍の時代』の方針に沿った持続可能な成長を推進する」との展望を示した。
SSIAMのグエン・ゴック・アイン社長は、「AUM10億ドル達成は到達点ではなく、投資規律、ガバナンス基準、長期的価値創造を追求してきた成果の蓄積である。Japan Vietnam Capital Fundは、その基盤の上に戦略的な次の一歩として設立された」と語った。
DBJの小林取締役・執行役員は、「今回の共同投資の枠組みは、SSIと当行の専門知識とネットワークを融合させたもので、日本企業およびベトナム企業の新たな成長に必要な資金を提供する戦略的投資プラットフォームとして大きな可能性を持つ」と期待を示した。
SSI証券の財務基盤
親会社であるSSI証券は、2025年12月31日時点で総資産92,975兆ドン(約5,580億円)、自己資本31,054兆ドン(約1,860億円)を計上しており、盤石な財務基盤を有する。この資本力が、コア事業の拡大と市場サービス能力の向上を支える土台となっている。
日本企業・投資家への示唆
本ファンドの設立は、日本からベトナムへの投資チャネルの多様化を象徴する動きである。従来、日本企業のベトナム進出は製造業の直接投資が中心であったが、今後は証券投資を通じた間接的な参入も活発化する可能性がある。ベトナムの新興市場格上げが実現すれば、同国株式市場への外国人投資枠の拡大や流動性向上が見込まれ、日本の機関投資家にとっても注目すべき投資先となるだろう。DBJという政策金融機関の関与は、日本政府のアジア経済圏戦略とも軌を一にしており、官民連携による対越投資の新たなモデルケースとなる可能性を秘めている。
出典: VnExpress












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