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3月26日(木)のニューヨーク市場で、金のスポット価格が前日比128.1ドル安(マイナス2.84%)の4,379.2ドル/オンスへ急落した。米イラン軍事衝突の長期化観測を背景にドル高・原油高が進行し、金は「安全資産」としての地位を一時的に失う格好となっている。2月28日の開戦以降、金価格は累計で17%下落しており、市場の構造変化が鮮明になりつつある。
金・銀価格の急落——数字で見るインパクト
木曜日の取引終了時点での主要な貴金属価格は以下のとおりである。
- 金スポット価格(ニューヨーク):4,379.2ドル/オンス(前日比マイナス128.1ドル、マイナス2.84%)
- 銀スポット価格:68.14ドル/オンス(前日比マイナス3.24ドル、マイナス4.54%)
- COMEX金先物(4月限):4,376.3ドル/オンス(マイナス3.9%)
銀の下落率が金を上回っており、リスクオフ局面で流動性の低い貴金属がより大きな売り圧力にさらされている構図が読み取れる。
ドル高が金を圧迫——Dollar Indexは99.87に
主要6通貨に対するドルの強さを測るドルインデックス(Dollar Index)は、この日0.27%上昇して99.87ポイントで引けた。直近5営業日で0.64%上昇、月初からの累計では2.22%の上昇を記録している(MarketWatchのデータによる)。
ドル高の背景には複数の要因がある。第一に、米国が世界有数のエネルギー純輸出国であるため、原油価格の上昇が貿易収支を通じてドルを支えている点。第二に、地政学的リスクの高まりの中で、依然としてドルが「安全通貨」としての需要を集めている点である。金がドル建てで取引される以上、ドル高は金価格にとって直接的な下押し圧力となる。
米イラン戦争——停戦交渉は暗礁に
2月28日に勃発した米国とイランの軍事衝突は、まもなく5週目に突入しようとしている。ロイター通信によれば、イランの高官は米国側の停戦提案を「一方的で不公平」と退けた。一方、ドナルド・トランプ米大統領は金曜日、イランがホルムズ海峡でタンカー10隻の通過を認めたことについて「明確な善意の表れであり、交渉努力の表れだ」と述べた。
ホルムズ海峡は世界の海上石油輸送量の約2割が通過する要衝であり、同海峡の安全確保は世界のエネルギー市場にとって死活問題である。停戦が実現しない限り、原油価格は100ドル/バレル超を維持する公算が大きく、インフレ圧力の高まりを通じて各国中央銀行の金融政策にも影響を及ぼす。
利回り上昇が金に逆風——FRBの利下げ期待は後退
木曜日の米国債市場では、10年債利回りが9ベーシスポイント(bp)以上上昇して4.424%、政策金利に敏感な2年債利回りは11bp以上上昇して3.994%に達した。原油高がインフレ期待を押し上げ、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げシナリオが遠のいたとの見方が広がっている。
金は利息を生まない資産であるため、金利が上昇すると相対的な魅力が低下する。これが足元の売り圧力のもう一つの大きな要因である。
なお、同日発表された米新規失業保険申請件数は前週比で小幅な増加にとどまり、労働市場は安定を維持している。FRBにとっては、戦争がインフレと成長に与える影響を見極めつつ、利下げを急がない余地があることを示すデータとなった。
専門家の見通し——4,000ドル割れか、5,000ドル回復か
貴金属情報大手キトコ・メタルズ(Kitco Metals)のシニアアナリスト、ジム・ワイコフ氏は次のように語った。
「もし紛争が長引けば、金価格は4,000ドル/オンスを割り込む可能性がある。逆に停戦合意が実現し、利下げ期待が再び形成されれば、5,000ドル/オンスへの回復もあり得る」
イタリアの大手金融機関インテーザ・サンパオロ(Intesa Sanpaolo)は報告書の中で、「近四半期の投機的取引が金と銀の安全資産としての地位を少なくとも短期的に弱めた。流動性への渇望が紛争初期の数週間で両貴金属の大量売却を引き起こした」と分析している。
SPDR Gold Trustは押し目買い——ただし慎重姿勢
世界最大の金ETFであるSPDRゴールド・トラスト(SPDR Gold Trust)は木曜日、0.3トンの金を買い増し、保有量を1,052.7トンに引き上げた。ただし、米イラン戦争開始以降の累計では48.6トンの純売却(保有量の4.4%減少に相当)となっており、機関投資家の姿勢は依然として慎重である。わずか0.3トンという買い増し量が、その「様子見」の度合いを如実に物語っている。
アジア市場では反発の兆し
金曜日のアジア時間早朝(ベトナム時間6時25分時点)には、金スポット価格が前日のニューヨーク終値から19.3ドル(0.44%)反発し、4,398.5ドル/オンスで取引されていた。銀も0.64%高の68.58ドル/オンスとなっている。
この金スポット価格をベトナム国内価格に換算すると約1億3,970万ドン/ルオン(ベトナムの金の計量単位、1ルオン=約37.5グラム)となり、前日朝から310万ドン/ルオンの下落である。なお、同時刻のベトコムバンク(Vietcombank、ベトナム最大手の国有商業銀行)のドル為替レートは買値26,107ドン、売値26,357ドンで、前日朝からそれぞれ2ドンの下落であった。
投資家・ビジネス視点の考察
1. ベトナム株式市場への影響
金価格の急落は、SJC(ベトナム国営の金取引・宝飾大手)をはじめとする金関連銘柄に直接的なマイナス材料となる。一方、原油高の恩恵を受けるペトロベトナムグループ傘下の上場企業(PVD、PVS、GASなど)にとってはプラスに作用する可能性がある。ただし、原油高が長期化すれば輸入コスト増を通じてベトナム製造業全体の利益を圧迫しかねず、VN-Index全体にとっては両刃の剣である。
2. ドル高・ドン安リスク
ドルインデックスの上昇はベトナムドンへの下落圧力を意味する。ベトナム国家銀行(中央銀行)が為替安定のために外貨準備を取り崩す局面が続けば、金融緩和余地が狭まり、不動産・建設セクターの回復シナリオにも影を落とす。ベトナムに進出している日本企業にとっても、ドン安による原材料コスト増や、送金時の為替差損に注意が必要である。
3. FTSE新興市場指数への格上げとの関連
2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げは、海外資金の大量流入を促す大きなカタリストとして期待されている。しかし、米イラン戦争の長期化によるグローバルなリスクオフ環境が続けば、格上げ後の資金流入ペースが想定を下回る可能性もある。投資家は格上げという構造的な好材料と、地政学リスクという短期的な逆風の両方を天秤にかける必要がある。
4. ベトナム経済全体のトレンド
ベトナムはエネルギー純輸入国ではないものの、製造業が経済成長のエンジンであるため、グローバルなサプライチェーンの混乱や原油高は景気減速リスクを高める。金価格の乱高下はベトナム国内の個人投資家のセンチメントにも大きく影響する。ベトナムでは伝統的に金が資産保全手段として根強い人気を持ち、金価格の急変動は消費マインドや不動産投資にまで波及しうる点を見落としてはならない。
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