貴金属市場が歴史的な乱高下に見舞われている。2月2日(月)の取引で金価格は1オンスあたり230ドル超(約4.7%)急落し、4,660ドル台で取引を終えた。先週記録した約5,600ドルの史上最高値から900ドル以上も下落した形だ。しかし翌3日のアジア市場では一転して85ドル近く反発し、4,745ドル台まで回復。投資家の間で「買い場」との見方が広がっている。
歴史的急落の全容──金は21%、銀は42%下落も
今回の急落は、先週金曜日から始まった売りの延長線上にある。金曜日だけで金は9%、銀は26%以上下落し、金にとっては史上最大の下落幅、銀にとっては1980年代以来の急落となった。アジア取引時間中には金が4,400ドル台まで売り込まれ、高値からの下落率は21%に達した。銀に至っては71ドル台まで下落し、高値から約42%もの暴落を記録している。
キッコー(Kitco)のデータによると、月曜終値で金のスポット価格は4,660.7ドル、銀は79.37ドル(6.9%安)、プラチナは2,129ドル(3.2%安)となった。COMEX(ニューヨーク商品取引所)の2026年4月限金先物も1.9%安の4,652.6ドルで引けている。
急落の背景──ワーシュFRB議長指名とドル高
この歴史的な売り浴びせの引き金となったのは、トランプ大統領がケビン・ワーシュ氏を次期FRB(連邦準備制度理事会)議長に指名したことだ。ワーシュ氏は元FRB理事で、インフレ抑制を重視するタカ派として知られる。上院で承認されれば、2026年5月に任期満了を迎えるジェローム・パウエル現議長の後任となる。
ワーシュ氏はFRBの政治的独立性を守る姿勢を持つとされ、市場では「利下げ期待が後退する」との見方が広がった。これを受けてドル指数(Dollar Index)は0.6%以上上昇し、1週間ぶりの高値となる97.6ポイントを記録。ドル高は金価格の下押し圧力となる。
さらに、地政学リスクの緩和も売り材料となった。トランプ大統領は週末、イランが核問題で「真剣に交渉している」と発言。また、グリーンランド問題を巡るデンマーク、グリーンランド、米国の高官協議も楽観的な雰囲気で終わったという。年初来で金が約30%、銀が約70%も急騰していたことから、利益確定売りが殺到したのも当然の流れであった。
SPDR Gold Trust、巨大ETFは動かず
注目すべきは、世界最大の金ETF(上場投資信託)であるSPDR Gold Trust(スパイダー・ゴールド・トラスト)の動向だ。週明けの急落局面でも同ファンドは売買を行わず、保有量を1,087.1トンのまま維持した。機関投資家の間では、この調整局面を「長期的な上昇トレンドの中の一時的な揺れ」と捉える向きが多いことを示唆している。
専門家の見解──「下落は調整、上昇トレンドは継続」
ドイツ銀行のアナリスト、マイケル・シュー氏は「金価格が持続的に下落に転じるための基礎的条件は、まだ整っていないように見える」と指摘。押し目買いの動きが強く、投資家心理の根本的な変化ではなく、単なる「揺さぶり」に過ぎないとの見方を示した。
CMCマーケッツのアジア・中東部門責任者クリストファー・フォーブス氏も同様の見解だ。「今回の下落は、過熱した相場の典型的な調整であり、長期上昇トレンドの終わりを意味するものではない。利益確定、ドル高、地政学リスク後退が、過密化していたポジションを揺さぶっただけだ」と分析している。
フォーブス氏は、ワーシュ氏の政策姿勢が明確になるまで高いボラティリティが続くと予想しつつも、「ドルが再び弱含むか、ワーシュ氏がハト派的と確認されれば、金への買いは復活する」と述べ、今後12カ月で金価格が再び最高値を更新する可能性に言及した。
米大手銀行JPモルガン・チェースはさらに強気で、年内に金価格が6,300ドルに達するとの予測を維持している。投資家需要と各国中央銀行の金購入が引き続き旺盛であることが理由だ。
投機抑制の動き──CMEが証拠金引き上げ
CMEグループは金曜日、貴金属先物の証拠金率を引き上げると発表した。月曜の取引終了後に発効するこの措置は、投機的なポジションの抑制を狙ったものとみられ、市場の過熱感を冷ます効果が期待されている。一部のアナリストは「投機筋が退場することで、市場が健全化する」と前向きに評価している。
日本への示唆──為替と投資戦略への影響
日本の投資家にとって、今回の金価格急落は複数の示唆を持つ。まず、円換算での金価格は依然として高水準にある。ベトナムドン換算で1ルオン(約37.5グラム)あたり1億5,000万ドン相当、ベトコムバンク(Vietcombank)の為替レート(1ドル=26,180ドン)で計算すると、日本円でもなお歴史的高値圏だ。
また、ワーシュ氏のFRB議長就任が現実となれば、米国の金融引き締め姿勢が長期化し、日米金利差拡大から円安圧力が続く可能性がある。金や貴金属への分散投資を検討する日本の個人投資家にとって、今回の調整局面は「エントリーポイント」として注目に値するだろう。
ただし、ボラティリティの高さには十分な注意が必要だ。1日で4%以上変動する相場は、短期トレーダーにとっては好機でも、長期保有を前提とする投資家にとっては心理的負担が大きい。証拠金引き上げ後の市場動向や、ワーシュ氏の上院承認プロセスを注視しながら、慎重に投資判断を下すべき局面である。
出典: Vn Economy
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