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2026年3月27日(金)、国際金価格が前日の急落から一転して大幅に反発し、1オンスあたり4,500ドル近辺まで回復した。前日に130ドル近い暴落を記録した直後の「底値買い(バーゲンハンティング)」が殺到した形である。米イラン戦争が5週目に突入する中、地政学リスクへのヘッジ需要と、原油高・ドル高によるインフレ懸念という相反する力が金市場で激しくぶつかり合っている。
金価格、1日で115.8ドルの急反発——相場の全容
ニューヨーク市場の金スポット価格は、前日比115.8ドル(+2.65%)高の4,495ドル/オンスで取引を終えた。前日の木曜日に4,400ドルを割り込む水準まで急落していたことを考えると、極めて速いペースでの回復である。
銀スポット価格も1.73ドル(+2.55%)上昇し、69.87ドル/オンスとなった。先物市場であるCOMEX(ニューヨーク商品取引所)では、金4月限が+2.7%の4,492.7ドル/オンスで引けている。
週間ベースでは、金スポット価格はわずか約3ドル(+0.06%)の上昇にとどまった。前週は10.5%もの急落を記録しており、これは実に15年ぶりの週間下落率だった。2月28日の米・イスラエルによるイラン攻撃開始前と比較すると、金価格は依然として約15%低い水準にある。
反発の背景——底値買いと地政学リスク
今回の急反発を牽引した最大の要因は、前日の暴落で生まれた「割安感」に飛びついた投資家の底値買いである。RJO Futures(米国の先物取引会社)のストラテジスト、ダニエル・パビロニス氏はロイター通信に対し、「今回の売り浴びせは、金価格が200日移動平均線を下回るという、非常に良い買い場を提供した。今こそ金を買う好機だ」と語った。
同氏はさらに、金価格は今後2週間ほど上下に揉み合う展開が続くとの見方を示し、「その後、イラン情勢の緊張が緩和に向かえば、それは金を買う絶好のチャンスになる」と付け加えた。
地政学的な要因も依然として金価格の支援材料となっている。米イラン戦争が5週目に入る中、イランはホルムズ海峡(ペルシャ湾の出口に位置し、世界の原油輸送量の約2割が通過する最重要の海上交通路)の封鎖を継続。中東のインフラも攻撃対象となっており、エネルギー価格の高騰やサプライチェーンの混乱が世界経済をスタグフレーション(景気後退下のインフレ)に追い込むリスクが高まっている。
金にとっての逆風——原油高、ドル高、利上げ観測
一方で、金市場は強い下押し圧力にもさらされている。北海ブレント原油先物は、トランプ大統領がイランに対するホルムズ海峡の再開放期限を延長したにもかかわらず、110ドル/バレルを超える高水準で引けた。イラン側は、米国が提示した15項目の終戦提案を拒否している。
原油価格の高騰はインフレ期待を押し上げ、FRB(米連邦準備制度理事会)をはじめとする主要中央銀行が年内の利下げを見送るどころか、利上げに踏み切る可能性すら浮上させている。CMEグループのFedWatch Tool(市場の金利予想を反映する指標)によれば、市場はもはや2026年中のFRB利下げをまったく織り込んでいない状況である。戦争前には、年内2回の利下げが予想されていたことを考えると、劇的な変化である。
金は利息を生まない資産であるため、金利上昇局面では相対的な魅力が低下する。これが2月末の開戦直後に数日間だけ急騰した金価格が、その後一転して下落基調に入った最大の理由である。
ドル高も金にとっては逆風だ。ドル指数(Dollar Index)は金曜日に0.29%上昇して100.19ポイントで引け、週間では0.55%上昇した。直近1カ月の上昇幅は2.65%に達している。
Commerzbank、2026年の金価格目標を5,000ドルに引き上げ
短期的な逆風にもかかわらず、中長期の見通しに強気な見方も出ている。ドイツの大手銀行Commerzbank(コメルツバンク)は、2026年の金価格目標を従来の4,900ドル/オンスから5,000ドル/オンスに引き上げた。同行のアナリストは、足元の金価格下落は長続きしないと分析している。
Commerzbankの報告書は、米イラン戦争が6月までに終結するとの前提を置いており、その場合FRBの利上げ観測は抑制され、年内に利下げが再開されると予想。2027年半ばまでにFRBが累計約0.75ポイントの利下げを実施するとの見通しを示している。
世界最大の金ETF、SPDRゴールド・トラストの動向
世界最大の金ETF(上場投資信託)であるSPDR Gold Trust(スパイダー・ゴールド・トラスト)は、金曜日には売買ともに動きがなく、保有量を1,052.7トンで据え置いた。しかし、米イラン戦争開始以降では累計48.6トン(保有量の4.4%相当)を売り越しており、今週だけでも4.3トンの売り越しとなっている。機関投資家レベルでは、インフレ・金利上昇を見越した金のポジション縮小が続いていることを示す数字である。
ベトナム国内への波及——為替と金価格
金曜日の終値ベースで、金スポット価格をベトコムバンク(Vietcombank、ベトナム最大手の国有商業銀行)の外貨売りレートで換算すると、1ルオン(ベトナムの伝統的な金の計量単位、約37.5グラム)あたり約1億4,270万ドンに相当する。
ベトコムバンクの週末時点のドル為替レートは、買値26,105ドン/ドル、売値26,355ドン/ドルで、前週末比でそれぞれ36ドン、16ドンの上昇となった。ドン安方向への小幅な動きは、ドル高のグローバルトレンドを反映したものである。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の金市場の乱高下は、ベトナムの投資家および経済全体に複数の経路で影響を及ぼす。
ベトナム株式市場への影響:原油価格の高騰は、ベトナムの石油関連銘柄(ペトロベトナムガス=GAS、ペトロベトナム技術サービス=PVSなど)にとっては追い風だが、輸入コスト増大を通じて製造業や航空業(ベトジェットエア=VJC、ベトナム航空=HVNなど)の利益を圧迫する。さらに、FRBの利下げ期待が消滅したことで、ベトナム国家銀行(中央銀行)が金融緩和に踏み切る余地も狭まっており、不動産セクターや銀行セクターの金利敏感銘柄には重しとなりうる。
ベトナム国内の金市場:ベトナムは世界有数の金消費国であり、SJC金地金の国内価格は国際価格に連動しつつも独自のプレミアムが乗る構造にある。今回の国際価格の乱高下は、国内の金地金ショップでの売買を活発化させると見られ、ベトナム国家銀行の金市場安定化策にも注目が集まる。
日本企業・ベトナム進出企業への示唆:ホルムズ海峡の封鎖が長期化すれば、ベトナム向けの原材料・エネルギー調達コストが上昇し、現地で生産活動を行う日系メーカーの収益に直結する。為替面でも、ドル高・ドン安の進行は、ドン建ての売上をドルや円に換算する際に目減りするリスクを高める。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月にFTSEによるベトナムの新興市場指数への格上げ判定が控えている。地政学リスクの高まりによるグローバルなリスクオフ局面は、格上げの制度的な判定基準には直接影響しないものの、格上げ決定後の資金流入期待が外部環境の悪化によって相殺される可能性がある。投資家は、格上げによる構造的な追い風と、地政学的・マクロ経済的な逆風のバランスを慎重に見極める必要がある。
金市場の動向は、米イラン戦争の行方、FRBの金融政策、そして原油価格という三つの変数に大きく左右される。Commerzbankが想定するように6月までに停戦が実現すれば、金は再び上昇基調に回帰し、ベトナムを含む新興国市場にも安堵感が広がるだろう。しかし、紛争が長期化すればスタグフレーションリスクが現実化し、金を含むあらゆる資産クラスが不安定な状態に置かれることになる。
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