ベトナム最大の商業銀行の一つであるベトコムバンク(Vietcombank、正式名称:ベトナム外商銀行)が、1993年に国内初のICチップ搭載型決済カードを発行してから約30年。同行は段階的にテクノロジーインフラを拡充し、多様な金融サービスをデジタルプラットフォーム上に移行させてきた。現在、個人顧客は1,700万人を超え、ベトナムにおけるデジタルバンキングの先駆者としての地位を確立している。
ICチップカードから始まったデジタルの歩み
1993年、ベトコムバンクはベトナムで初めてICチップを搭載した決済カードを導入した。当時のベトナムは「ドイモイ(刷新)」政策が本格化して数年が経過した段階であり、市場経済への移行が進みつつあったものの、銀行サービスの近代化はまだ緒に就いたばかりだった。現金取引が圧倒的に主流であった時代に、チップカードの導入は極めて先進的な試みであったといえる。
ベトコムバンクは1963年にベトナム国家銀行の外国為替管理部門を前身として設立され、もともと対外貿易決済を主な業務としていた。こうした国際取引の経験が、早い段階から決済テクノロジーへの関心と投資につながったとみられる。
段階的なデジタルインフラの拡充
ICチップカードの導入を皮切りに、ベトコムバンクはATMネットワークの整備、インターネットバンキングの開始、そしてモバイルバンキングアプリの展開と、段階的にデジタルインフラを拡充してきた。特に2010年代以降、スマートフォンの急速な普及を背景に、同行はモバイルプラットフォームを通じた金融サービスの提供に注力してきた。
ベトナムは人口約1億人のうち、平均年齢が30代前半という若い人口構成を持つ。スマートフォン普及率は70%を超え、キャッシュレス決済の利用も急拡大している。ベトナム国家銀行(中央銀行)が推進するキャッシュレス社会化政策も追い風となり、銀行各行はデジタルトランスフォーメーション(DX)を経営戦略の中核に据えるようになった。
1,700万人超の個人顧客を擁するデジタルバンクへ
現在、ベトコムバンクの個人顧客数は1,700万人を超える。同行のデジタルバンキングプラットフォームでは、口座開設から送金、融資申請、保険加入、投資商品の購入に至るまで、幅広いサービスがオンラインで完結できる仕組みが整備されている。
ベトコムバンクはベトナムの上場銀行の中でも時価総額トップクラスを誇り、国有資本が大きな比率を占める「四大国有商業銀行」の一角を担う。資産規模、利益水準ともにベトナム銀行業界をリードしており、そのデジタル戦略は他行にとっても一つのベンチマークとなっている。
ベトナムのデジタルバンキング競争と日本企業への示唆
ベトコムバンクのデジタル化の歩みは、ベトナムの金融業界全体の変容を象徴している。近年はテクビエットバンク(Techcombank)やMBバンク(MB Bank)、VPバンク(VPBank)といった民間銀行もデジタルバンキング領域で積極的な攻勢をかけており、フィンテック企業との提携も活発化している。電子ウォレットのMoMoやZaloPayなど、ノンバンクのプレーヤーとの競争も激化している状況だ。
日本企業にとっても、ベトナムの金融デジタル化は見逃せないトレンドである。みずほフィナンシャルグループがベトコムバンクの戦略的パートナーとして長年にわたり資本提携を続けているほか、三井住友銀行がベトナムの民間銀行に出資するなど、日本の金融機関のベトナム進出は加速している。現地のデジタル決済インフラの進化は、日系製造業やサービス業がベトナムで事業展開する際の利便性向上にも直結する。
1993年の1枚のICチップカードから始まった挑戦が、30年を経て1,700万人超の顧客基盤を持つデジタルバンクへと結実した。ベトナム経済のさらなるデジタル化が進む中、ベトコムバンクの次なる一手にも注目が集まる。
出典: VN Express
いかがでしたでしょうか。今回のベトコムバンクのデジタルバンキング戦略について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。
【noteメンバーシップのご案内】
より詳細なベトナムの経済ニュース解説や企業の投資分析、現地からのリアルタイム情報をお求めの方は、ぜひメンバーシップへのご参加をご検討ください。
https://note.com/gonviet/membership












コメント