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ベトナム政府の副首相が、資産競売法(Luật Đấu giá tài sản)の改正案に関連し、競売を通じて売却すべき資産の種類を全面的に見直し・追加するよう指示した。特に注目されるのは、デジタル経済の発展に伴い新たに生まれた資産や、BOT(建設・運営・移管)プロジェクトにおける開発権・料金徴収権といった権利型資産が競売対象に加えられる方針である。
改正の背景—なぜ今、競売法の見直しが必要なのか
ベトナムでは近年、土地使用権や国有資産の競売をめぐる不正・談合が社会問題化してきた。2021年末に発生したホーチミン市トゥードゥック市(旧トゥーティエム地区)の土地競売事件では、落札価格が周辺相場の数倍に跳ね上がった後に落札者が辞退するという異常事態が起き、競売制度の不備が広く認識されるきっかけとなった。現行の資産競売法は2016年に制定されたものであり、デジタル経済やインフラ関連の新たな資産形態に十分対応できていないとの指摘が以前からなされていた。
改正案の主なポイント
副首相の指示によると、今回の改正で重点的に見直される領域は以下の通りである。
- デジタル経済で新たに形成された資産:暗号資産やデジタルコンテンツの権利、ドメイン名、電波周波数帯の使用権など、従来の法律では想定されていなかった資産類型を競売対象として明確に位置づける。
- 開発権・料金徴収権:BOTプロジェクトにおける開発権(quyền khai thác)、料金徴収権(quyền thu phí)、価格徴収権(quyền thu giá)など、インフラ事業に関連する無形の権利を競売対象に追加する。ベトナムでは高速道路や橋梁などのBOTプロジェクトが多数存在し、これらの運営権の透明な移転が課題となっていた。
- 競売手続きの透明性向上:オンライン競売の拡充、参加者の資格審査の厳格化、談合防止策の強化なども改正案に盛り込まれる見通しである。
BOTプロジェクトと権利型資産の重要性
ベトナムは急速なインフラ整備を進めており、南北高速道路をはじめとする大型BOTプロジェクトが全国で展開されている。これらのプロジェクトでは、建設後の運営・料金徴収権が巨額の経済価値を持つが、従来はその移転や売却に関する法的枠組みが不十分であった。今回の改正により、こうした権利型資産が正式に競売対象となれば、取引の透明性が大幅に向上し、民間投資家やPPP(官民連携)事業者にとってもより予見可能な投資環境が整備されることになる。
デジタル資産への対応—ASEAN域内での先進的取り組み
デジタル経済関連の資産を競売法の対象に明示的に含めようとする動きは、ASEAN域内でも先進的な取り組みと言える。ベトナム政府は2025年までにデジタル経済のGDP比率を20%に引き上げる目標を掲げており、法制度の整備はその一環として位置づけられる。電波周波数帯の競売はすでに多くの先進国で実施されているが、ベトナムでも通信事業者間の公正な競争を促す観点から、制度化の意義は大きい。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の競売法改正は、ベトナム株式市場に対して中長期的にポジティブな影響を与える可能性がある。具体的には以下の点が注目される。
①インフラ関連銘柄への影響:BOT運営権の競売が制度化されれば、高速道路・インフラ運営企業(CII、HHV、DPGなど)の事業機会が透明化し、バリュエーションの適正化が進む可能性がある。
②不動産・土地使用権関連:土地使用権の競売手続きが厳格化されることで、不動産デベロッパーの土地取得コストに影響が出る可能性がある一方、透明性の向上は外国人投資家からの信頼向上につながる。
③FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げにおいて、市場の透明性・制度の整備度は重要な評価項目である。競売制度の近代化は、ベトナムの制度的成熟度を示す材料となり、格上げ審査にプラスに作用する可能性がある。
④日本企業への影響:ベトナムでBOTプロジェクトやインフラ事業に参画している日本企業(大成建設、清水建設、JICAを通じたODA案件関連企業など)にとっても、運営権の移転ルールが明確化されることは事業計画の立てやすさにつながる。また、デジタル資産に関する法制度の整備は、フィンテック分野でベトナム進出を検討する日本企業にとっても注視すべき動きである。
総じて、今回の改正は「ベトナムの制度整備が新たなステージに入った」ことを示すシグナルであり、投資環境の改善に向けた着実な一歩と評価できる。
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出典: 元記事












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