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ベトナム南部の工業集積地であるドンナイ省が、小型モジュール炉(SMR:Small Modular Reactor)技術を用いた原子力発電所の試験プロジェクトにおいて、中央政府から選定される「先駆的地方」となることを目標に掲げた。目標年は2035年。かつてベトナムが断念した原発計画の舞台であった同省が、新世代技術で再び原子力に挑む構図であり、エネルギー政策と投資環境の両面で注目に値する動きである。
ドンナイ省と原発計画の歴史的背景
ドンナイ省はホーチミン市の北東に隣接し、ベトナム有数の工業団地集積地として知られる。日系企業も多数進出するこの省は、実は2009年に国会承認を受けたニントゥアン省原発計画と並び、原子力発電の候補地として長く議論されてきた地域でもある。ベトナム政府は2016年、財政上の理由からニントゥアン原発計画を凍結した経緯がある。しかし近年、急増する電力需要と2050年カーボンニュートラル目標を背景に、原子力への関心が再燃。2024年後半には国会が原発再開に向けた決議を採択し、政策の大転換が進行中である。
SMR技術とは何か
SMR(小型モジュール炉)は、従来の大型原子炉と異なり、出力が概ね300MW以下の小型原子炉を指す。工場で主要部品を製造し現地で組み立てる「モジュール方式」により、建設コストの分散化、工期短縮、安全性の向上が期待される。米国のNuScale社やGE日立のBWRX-300など、各国で開発が進んでおり、世界的に次世代エネルギーの柱として注目を集めている技術である。ドンナイ省がSMRに着目した背景には、大型炉と比べて立地面積が小さく、工業地帯に近接して建設できる可能性がある点も大きい。
ドンナイ省の狙いと2035年目標
ドンナイ省は2035年までに中央政府からSMR試験プロジェクトの実施地として選定されることを目標に設定した。同省は既に工業化が進み、電力消費量がベトナム国内でも上位に位置する。ホーチミン市圏の経済成長を支える電力供給の安定化は喫緊の課題であり、再生可能エネルギーだけでは賄いきれないベースロード電源としてSMRを位置づける戦略と見られる。省当局はインフラ整備や人材育成を含む包括的な準備計画を進める方針を表明している。
投資家・ビジネス視点の考察
この動きはベトナムのエネルギーセクター全体に中長期的なインパクトをもたらす可能性がある。以下の視点から注目したい。
①関連銘柄への影響:ベトナム株式市場では、電力関連銘柄(POW、NT2、PPC等)やインフラ建設関連(CTDなど)への思惑買いが今後入る可能性がある。ただし、SMRの実現は2035年以降であり、短期的な株価材料というよりは長期テーマとして捉えるべきである。
②日本企業への影響:ドンナイ省には数百社の日系企業が進出しており、安定的な電力供給は操業リスクの軽減に直結する。また、日本はSMR技術で日立GEニュークリア・エナジーなどが開発を進めており、技術供与やプラント輸出の機会として注視すべきである。2016年の原発凍結時にも日本は有力パートナーであったことから、外交・ビジネス両面での関係強化が期待される。
③FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げに向け、ベトナム政府はインフラ・制度整備を加速させている。原発を含むエネルギー政策の明確化は、投資家に対して「長期的な経済成長基盤への本気度」を示すシグナルとなり、格上げ評価にも間接的にプラスに働く可能性がある。
④ベトナム経済のトレンドにおける位置づけ:ベトナムは第8次電力マスタープラン(PDP8)で2030年の総発電容量を大幅に引き上げる計画を掲げている。太陽光・風力の拡大と並行して原子力を再導入する方針は、製造業主導の経済成長を電力面から支えるための戦略的選択と言える。ドンナイ省のSMR構想はその象徴的な一歩である。
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出典: 元記事












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