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ベトナム政府傘下の国家記録保存局(Cục Văn thư và Lưu trữ nhà nước)は、今後、人工知能(AI)やデジタル技術を活用し、戦没者(liệt sĩ、リエット・シー=ベトナム語で「戦死者」「烈士」を意味する)の遺骨捜索・収容・身元特定作業を加速させる方針を明らかにした。長年にわたり紙媒体で保管されてきた膨大な戦時記録資料を、デジタル技術によって効率的に検索・照合できるようにすることで、いまだ身元が判明していない多数の戦没者遺骨の特定を後押しする狙いだ。
ベトナム戦争の「負の遺産」と遺骨捜索の重要性
ベトナムでは、抗仏戦争(第一次インドシナ戦争)、抗米戦争(ベトナム戦争)、さらには国境防衛戦などを通じて、数百万人規模の兵士や民間人が命を落としたとされる。政府の公式発表や各種報道によれば、いまだに数十万人規模の戦没者の遺骨が未発見、あるいは発見されても身元が特定されていない状態にあるとされる。こうした戦没者の遺骨を捜索し、家族のもとへ帰す、あるいは国立烈士墓地(Nghĩa trang liệt sĩ)へ改葬(quy tập、クイ・タップ)することは、ベトナム政府にとって長年の重要政策課題であり続けてきた。
戦没者遺族への慰霊・顕彰は、共産党・政府の正統性を支える「記憶の政治」としても位置づけられており、毎年7月27日の「傷病兵・烈士の日(Ngày Thương binh – Liệt sĩ)」には、全国各地で慰霊式典が開催される。今回発表された国家記録保存局によるAI活用方針は、こうした国家的な記憶事業をデジタル技術によって刷新しようとする試みといえる。
膨大な紙資料をデジタルで「読み解く」試み
国家記録保存局は内務省(Bộ Nội vụ)傘下の機関であり、フランス植民地時代から現代に至るまでの膨大な行政文書・軍事記録・戸籍資料などを保管している。これらの資料の中には、戦没者の氏名、出身地、所属部隊、戦死日時・場所などが記録された貴重な一次資料も多数含まれているとみられる。しかし、資料の多くは手書きの古い文書であり、劣化や損傷が進んでいるものも少なくない。膨大な量の紙資料を人力で一件ずつ確認する従来のやり方には限界があった。
そこで同局は、光学文字認識(OCR)技術やAIによる自然言語処理を活用し、手書き文書や古い印刷文書からテキストデータを抽出、データベース化することで、検索・照合作業を大幅に効率化する方針を示した。具体的には、遺族からの捜索依頼があった際に、氏名や部隊名、出身地などのキーワードをもとに関連文書を瞬時に絞り込み、遺骨収容チームによる現地捜索の精度向上につなげることが期待されている。
他省庁・関連機関との連携も視野に
遺骨の捜索・収容・身元特定は、国防省(Bộ Quốc phòng)傘下の各軍区・遺骨捜索隊、労働・傷病兵・社会問題省(現在は内務省に統合)、DNA鑑定を担当する法医学機関など、複数の機関が連携して進める大規模な国家プロジェクトである。国家記録保存局が保有する記録資料は、こうした捜索活動における「手がかり」を提供する重要な情報源であり、AI技術の導入によってこれらの機関との連携がよりスムーズになることが見込まれる。
日本との関わりという視点
日本国内では、太平洋戦争の戦没者遺骨収集事業が長年続けられており、DNA鑑定やデジタル技術の活用など、技術的なノウハウの蓄積がある分野でもある。ベトナムが今回打ち出したAI活用方針は、日本が経験してきた戦没者遺骨収集事業の課題と共通する部分も多く、将来的には日越両国間での技術協力や知見共有の可能性も注目される分野といえるだろう。実際、日本はこれまでもベトナムに対して行政のデジタル化(DX)支援や公文書管理分野での協力を行ってきた経緯があり、今回のような取り組みは日本企業の技術提供の機会にもつながり得る。
投資家・ビジネス視点の考察
今回のニュースは、直接的に上場企業の株価に影響を与えるような性質のものではない。しかし、いくつかの重要な示唆を投資家・ベトナム進出企業に与えるものと言える。
第一に、ベトナム政府が推進する「国家デジタル変革(Chuyển đổi số quốc gia)」政策の一環として、行政分野へのAI・デジタル技術導入が着実に広がっている点が確認できる。これは単に記録保存局にとどまらず、税務、土地登記、社会保険、公共サービス全般においてデジタル化が加速していることの一例であり、ベトナムのITサービス企業(FPTコーポレーション、CMCコーポレーションなど)にとっては、政府系デジタル化案件の受注機会が今後も拡大する可能性を示唆している。
第二に、こうした行政デジタル化の進展は、ベトナムの投資環境全体の透明性・効率性向上という文脈でも評価できる。FTSEラッセルによる新興市場指数への格上げ(2026年9月の正式決定が見込まれている)に向けては、市場インフラや情報アクセスの改善が重視されており、行政分野でのデジタル化・データベース整備の進展は、間接的にはベトナムの「市場としての成熟度」を示す材料の一つとなり得る。もちろん今回の遺骨捜索AI活用というテーマ自体は資本市場改革と直接結びつくものではないが、ベトナム政府全体がAI・デジタル技術を各分野で積極活用する姿勢を示している点は、投資家がベトナムの中長期的な国家運営能力を評価する上での参考材料となるだろう。
第三に、日本企業にとっては、公文書管理・AI-OCR・データベース構築といった分野でのシステム開発・コンサルティング案件が、今後政府調達の形で発注される可能性もある。すでにベトナムでシステム開発を手がける日系IT企業やSIer(システムインテグレーター)にとっては、注視すべき政策動向の一つと言えるだろう。
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出典: 元記事












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