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ベトナムが2028年をめどに次世代ワクチンの国内生産を本格化させる方針が明らかになった。ワクチンおよび医療用生物製剤(バイオ医薬品)は、公衆衛生分野で年間数千万回分という巨大な消費基盤を持つ一方、これまで輸入依存度が高い分野だった。今回の動きは、ベトナム製薬業界(ズオック産業)にとって新たな成長エンジンとなる可能性を秘めており、投資家の間でも大きな関心を集めている。
ワクチン・バイオ医薬品市場が製薬産業の新たな柱に
ベトナムの医療・製薬市場は、これまでジェネリック医薬品(後発医薬品)の生産・流通が中心であった。しかし近年、公衆衛生政策の拡充に伴い、ワクチンや血清製剤といった生物学的製剤(バイオ製剤)の需要が急速に拡大している。国家予防接種プログラム(拡大予防接種計画、EPI)を通じて、ベトナムでは年間数千万回分ものワクチンが消費されており、これは同国の人口規模(約1億人)と、乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層を対象とした継続的な接種需要を反映したものだ。
加えて、民間の予防接種サービス(有料ワクチン接種クリニックなど)を提供する医療サービス業界の成長も著しい。都市部の中間層拡大とともに、任意接種ワクチン(インフルエンザ、HPV、帯状疱疹など)へのニーズが高まっており、これが市場全体の高付加価値化を後押ししている構図だ。従来の低価格ジェネリック医薬品中心の市場から、より高度な技術を要する高付加価値製品群へと市場構造がシフトしつつある。
2028年をターゲットとした次世代ワクチン国産化計画
今回明らかになった方針では、ベトナムは2028年から次世代ワクチンの自国生産を開始する計画だ。これまでベトナムは、はしか、B型肝炎、狂犬病など一部の伝統的なワクチンについては国内メーカー(例えばワクチン・生物製剤製造・研究センター(POLYVAC)や、ベトナムワクチン・医療用生物製剤会社(VABIOTECH)など)による生産実績を持っていたが、mRNAワクチンや組換えタンパクワクチンといった最新技術を用いた「次世代ワクチン」については、依然として輸入に頼らざるを得ない状況だった。
今回の計画は、こうした技術的な遅れを克服し、国家レベルでの医療安全保障(パンデミック対応能力を含む)を強化する狙いがあるとみられる。新型コロナウイルス感染症のパンデミックにおいて、ワクチンの調達を海外に依存せざるを得なかった経験は、ベトナム政府にとって大きな教訓となった。自国でのワクチン生産能力を高めることは、今後起こりうる新たな感染症危機への備えとしても位置づけられている。
製薬企業にとっての事業機会
ワクチンおよび生物製剤分野は、一般的な化学合成医薬品(低分子医薬品)と比較して、製造技術のハードルが高く、参入障壁が大きい分野である。裏を返せば、この分野で先行して技術力・生産能力を確立した企業は、長期にわたって高い収益性を確保できる可能性がある。ベトナム国内の大手製薬企業にとっては、既存のジェネリック医薬品事業に加えて、ワクチン・生物製剤という新たな収益の柱を構築する好機となる。
また、海外の大手製薬企業やワクチンメーカーとの技術提携、合弁事業、技術移転契約といった形での協業機会も今後増えていくとみられる。ベトナムは人件費や生産コストの面で優位性を持ちつつ、東南アジア地域における医薬品・ワクチンの生産拠点としてのポテンシャルを高めている。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム株式市場において、製薬・医療関連銘柄はディフェンシブセクター(景気変動の影響を受けにくい業種)として、一定の安定的な需要を背景に投資家から評価されてきた。今回のワクチン国産化計画は、こうした製薬銘柄に対して「安定成長」から「高付加価値・高成長」への評価軸の転換をもたらす可能性がある。特に、既にワクチン生産のノウハウを持つ国営・準国営系のバイオ医薬品メーカーや、これから合弁・技術提携を模索する上場製薬企業の動向には注目が集まるだろう。
日本企業にとっても、この分野は無視できない商機を含んでいる。日本はワクチン開発・生産技術において高い水準を持ち、過去にもベトナムの保健省(Bộ Y tế)や関連機関との協力実績がある。今後、日本の製薬・バイオ企業がベトノム政府や現地企業との技術提携、合弁事業、あるいは生産設備への投資という形で関与を深める可能性は十分に考えられる。ベトナムに進出済みの日系企業にとっても、現地の医療インフラ強化は事業環境の安定化という観点からプラス材料となるだろう。
さらに、2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数(FTSE Emerging Markets Index)への格上げというマクロ的な追い風とも関連づけて考える必要がある。指数格上げが実現すれば、海外機関投資家の資金流入が加速し、ベトナム株式市場全体の流動性・評価が向上することが期待される。その中で、製薬・ヘルスケアセクターは、内需の底堅さと今回のような技術革新のストーリーを併せ持つ分野として、海外投資家からのポートフォリオ組み入れ対象になりやすいと考えられる。
ベトナム経済全体のトレンドという観点からは、単なる労働集約型の製造業拠点という位置づけから、高付加価値・高技術産業へのシフトを図る国家戦略の一環として、今回のワクチン国産化計画を捉えることができる。半導体、再生可能エネルギー、そして医薬品・バイオといった分野での「技術的自立」を志向する動きは、今後のベトナム経済の構造転換を占う上で重要な指標となるはずだ。
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出典: 元記事












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