ベトナム国有企業改革で従業員の株式保有拡大へ——政令57号が定める優遇措置と3年間の保有義務とは

Tăng sở hữu cổ phần cho người lao động khi tái cơ cấu doanh nghiệp Nhà nước

ベトナム政府は、国有企業の再編(コーポラティゼーション=株式会社化)を進める中で、従業員の株式保有を大幅に拡大する新たな政策を打ち出した。2026年に施行された政令第57号(57/2026/NĐ-CP)は、労働者への優遇株式売却制度を柱に据え、国家・企業・労働者三者の利益調和を目指す内容となっている。

目次

優遇価格で株式購入が可能な3つの対象グループ

政令57号では、優遇価格で株式を購入できる対象者を明確に3グループに分類している。第一に、企業価値算定時点で労働契約に基づき勤務している労働者および企業管理者。第二に、他企業への国家資本代表として派遣されているが、これまで優遇政策の恩恵を受けていない労働者。第三に、親会社(第1級企業)の株式会社化時に優遇を受けられなかった子会社(第2級企業)の労働者および管理者である。

額面の60%——1株6,000ドンでの購入が可能に

規定によれば、労働者は国有セクターでの実働年数1年につき最大100株を、額面価格の60%で購入できる。額面が1株10,000ドンの場合、優遇価格は1株あたり6,000ドンとなる計算だ。農林業分野で長期安定契約を結んでいる請負世帯の代表者についても、同様の条件が適用される。

なお、優遇価格と額面価格の差額は、企業が正式に株式会社へ移行する時点で国家資本から差し引かれる仕組みとなっている。

最低3年間の保有義務——譲渡制限で投機防止

重要なのは、優遇株式には厳格な保有義務が課されている点だ。購入代金を納付した時点から最低3年間は株式を保有しなければならず、この期間中の譲渡は一切認められない。また、優遇価格で売却される株式の総額(額面ベース)は、企業価値算定時点における帳簿上の自己資本を超えてはならないとされている。

「追加購入制度」——継続勤務を約束した労働者への特典

政令57号は優遇制度に加え、企業が継続雇用を必要とし、かつ労働者自身が株式会社化後も最低3年間の勤務を約束した場合に適用される「追加購入制度」も設けている。

この制度では、約束した継続勤務年数1年につき200株を追加購入でき、上限は2,000株。さらに、高度な専門性を持つ優秀な人材については、1年あたり500株、最大5,000株まで購入可能となる。追加購入の価格は、所有者代表機関が株式会社化計画の中で承認した「開始価格」が適用される。

なお、各労働者が享受できるのは上記2つの追加購入枠のいずれか一方のみ。追加購入株式は、約束した勤務期間を完了した後に普通株式へ転換される。政府機関の要請による事業再編や移転、縮小などで労働契約が期限前に終了した場合も、普通株式への転換は認められる。

途中退職時のペナルティと買い戻し制度

一方、労働者が約束期間前に自己都合で退職した場合には、追加購入した株式全量を会社に売り戻す義務が生じる。買い戻し価格は市場取引価格に近い水準とされるが、株式会社化時点での購入価格を上回ることはない。

逆に、労働者側から売却を希望する場合、株式会社は市場価格に近い価格で買い取る責任を負う。また、優遇・追加購入枠を超えて株式取得を希望する場合は、他の投資家と同様に公開入札に参加しなければならず、透明性と公平性が担保される仕組みだ。

余剰人員への対応——管理職には「定員削減」相当の措置も

政令57号は株式保有政策と並行して、余剰人員への対応策も明記している。企業価値算定時点で労働契約を結んでいた労働者や、他企業への資本代表として派遣されていた労働者のうち、人員計画で株式会社への配置が困難な者には、法令に基づく余剰人員向け政策が適用される。

管理職については、所有者代表機関が配置転換を検討し、あらゆる手段を尽くしても配置できない場合には、公務員の定員削減に準じた措置が講じられる。第2級企業の管理職については、親会社の取締役会または代表者が配置権限を持ち、配置不能の場合は労働法に基づき処理される。

株式会社化の3つの形態

政令57号では、国有企業の株式会社化について以下の3形態を規定している。

(1)現行の国家資本を維持したまま、増資のため新株を発行
(2)国家資本の一部を売却、または一部売却と新株発行を併用
(3)国家資本の全部を売却、または全部売却と新株発行を併用

また、ベトナム債権売買公社(DATC)を通じて再編を行う企業の労働者にも、優遇価格や追加購入の政策が同様に適用される。

日本企業・投資家への示唆

今回の政令は、ベトナム政府が国有企業改革を加速させる中で、単なる民営化ではなく「従業員参加型の株式会社化」を推進している姿勢を明確に示している。3年間の保有義務や継続勤務へのインセンティブ設計は、短期的な株式売却による利益確定を抑制し、企業の安定経営と労働者のコミットメント向上を同時に狙ったものと言える。

日本企業にとっては、ベトナム国有企業との合弁やM&Aを検討する際、従業員株主の存在と彼らの保有条件を十分に把握しておくことが重要となるだろう。また、優秀な人材確保の観点から、現地パートナー企業がどのような従業員インセンティブ制度を持っているかも、デューデリジェンスの重要項目となり得る。

出典: Vn Economy

いかがでしたでしょうか。今回のベトナム国有企業改革と従業員株式保有制度について、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。コメント欄や@viettechtaroのDMでお待ちしています。この記事が参考になったら、ぜひXでシェアしていただけると嬉しいです。より多くの方にベトナム投資の魅力を伝えたいと思っています。

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