ベトナムで2026年に施行された食品安全管理に関する「政令46号(Nghị định 46/2026/NĐ-CP)」をめぐり、税関当局が関係省庁に対し、制度上の欠陥を早急に解消するよう異例の要請を行った。商品分類リストの不備、検査窓口の分散、ラベル表示要件の矛盾など、施行直後から多数の問題が噴出し、輸入貨物が港湾や国境で滞留する事態が相次いでいる。政府は一時的に同政令の適用を延期したものの、根本的な解決がなければ、適用再開時に再び「物流の大渋滞」が発生する恐れがある。
施行直後から問題が続出——税関総局が3省庁へ緊急文書
政令46号が発効するや否や、ベトナム税関総局(Cục Hải quan)は保健省、商工省、農業環境省の3省庁に対し、相次いで公文書を送付した。現場の税関支局や輸入企業から寄せられた苦情を集約したもので、制度運用上の深刻なボトルネックを具体的に列挙している。
政府はすでに「決議09号(Nghị quyết số 09/2026/NQ-CP)」および「決議66.13号」を発出し、政令46号の施行を一時停止した。この措置は、企業が原材料供給の途絶や倉庫保管費用の急増に見舞われる事態を回避するための「緊急ブレーキ」と評価されている。しかし税関総局は、これはあくまで一時的な対処に過ぎず、問題の抜本的解決がなければ、停止期間終了と同時に港湾や陸路国境で大規模な貨物滞留が再発すると警告している。
問題点①:HSコード付き商品リストの欠如
税関総局が最初に指摘したのは、専門検査対象となる商品の詳細リストが整備されていない点である。国際貿易で用いられるHSコード(関税分類番号)と紐付けた品目一覧がないため、企業も地方の管理当局も、どの商品がどの省庁の検査対象になるのか判断に窮している。その結果、多くの貨物が港で「待機状態」に置かれ、保管料・滞留料が急速に膨らむ事態となった。税関総局は、政令46号の本格適用前に、商工省・保健省・農業環境省がHSコード付きの詳細リストを早急に公表し、法的根拠を統一するよう求めている。
問題点②:検査窓口の分散による手続き長期化
政令46号では、1つの輸入貨物に複数の品目が含まれ、それぞれが異なる省庁の管轄に属する場合、品目ごとに個別の検査結果通知を取得する必要がある。つまり、2〜3省庁にまたがる貨物の場合、企業は複数の窓口で別々に手続きを行わなければならない。
これに対し、旧制度である「政令15号(Nghị định 15/2018/NĐ-CP)」では、農業環境省が一元的な窓口として機能していた。新制度の「分散型」手続きは、書類処理の長期化とコンテナの港湾滞留期間の延長を招き、政府が掲げる行政手続き改革の方向性に逆行すると税関総局は批判している。企業負担軽減のため、検査窓口の一本化を強く求めている。
問題点③:ラベル表示要件の矛盾
政令46号は、輸入食品のラベルに「製造者」と「製品公表者(ベトナム国内での届出責任者)」の双方の名称・住所を記載するよう義務付けている。しかし現実には、初回輸入時点では製品公表手続きが完了しておらず、公表者情報が確定していないケースが多い。税関総局は「輸入申告時点で公表者情報が未確定のため、ラベルに記載しようがない」と指摘し、この要件を「通関前」に満たすべきか「国内流通前」に満たせばよいのか、明確化を求めている。
さらに、商品ラベルに関する「政令37号(Nghị định số 37/2026/NĐ-CP)」では、原産国表示や海外の製造者・責任者情報のみを求めており、ベトナム国内の公表者情報への言及がない。この2つの政令間の不整合が、企業と執行機関の双方を混乱させ、運用上のリスクを高めていると税関総局は強調する。
問題点④:検疫と食品安全検査の二重手続き
政令46号では、動物由来食品や水産物は、農業環境省による「検疫」と「食品安全検査」の両方を受ける必要がある。しかし一部の地方では、専門機関が検疫手続きのみを受け付け、食品安全検査の申請を受理しない事態が発生している。この結果、輸入業者は手続きを完了できず、貨物が国境で立ち往生している。
問題点⑤:検査免除範囲の縮小と検査機関の過負荷
政令46号では、食品安全検査の免除対象が旧政令15号と比べて大幅に縮小された。加えて、通常検査の場合は書類審査・現物検査・サンプル採取による試験が義務付けられるため、検体検査の対象となる貨物が急増している。検査機関の多くは港湾から離れた場所に立地しており、検査待ち時間が大幅に延びている。
また、国内生産向けに輸入される原材料は食品安全検査の対象となる一方、加工・製造後に輸出される原材料は免除されるという規定もある。税関総局は「この差異は生産形態間の不公平を生む可能性がある」と懸念を示している。対策として、リスク管理原則に基づき、法令遵守度の高い企業や優良企業に対しては検査を免除する仕組みの導入を提案している。
日系企業・投資家への影響と今後の展望
ベトナムは日本にとって重要な生産拠点であり、食品・食材の輸出入も活発に行われている。今回の政令46号をめぐる混乱は、日系企業のサプライチェーンにも直接影響を及ぼしかねない。特に、原材料調達の遅延や保管コストの増加は、製造業・食品加工業にとって深刻なリスク要因となる。
政府による適用延期は「時間稼ぎ」に過ぎず、関係省庁がHSコード付きリストの整備や検査窓口の一元化、ラベル規定の整合性確保といった課題にどれだけ迅速に対応できるかが今後の焦点となる。ベトナムでビジネスを展開する企業は、制度の動向を注視し、適用再開に備えた対応策を検討しておく必要があるだろう。
出典: Vn Economy
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