世界的なコンサルティング企業PwCが2026年3月5日に発表した「第29回グローバルCEO調査」において、ベトナムがアジア太平洋地域のCEOが選ぶ投資先として、米国(42%)に次ぐ第3位にランクインし、中国本土(14%)を上回る15%の支持を獲得したことが明らかになった。注目すべきは、ベトナムへの投資関心度がわずか1年で8%から15%へとほぼ倍増している点である。地政学リスクの高まりとテクノロジーの急速な進化が交錯する中、ベトナムが「輝く投資先」として急浮上している実態が浮き彫りとなった。
「チャイナ・プラスワン」戦略の中核としての地位確立
PwCの報告書は、ベトナムが新たな成長フェーズに突入していると評価している。その背景には、堅固なマクロ経済基盤、グローバルサプライチェーンへの深い統合、そして継続的に近代化が進む法制度環境がある。これらの要因が相まって、ベトナムは世界の大手企業がサプライチェーン再構築を進める際の「チャイナ・プラスワン」戦略の中核的存在となりつつある。
今年の調査で特筆すべきは、アジア太平洋地域全体では慎重姿勢が広がる一方で、ベトナムの戦略的地位は逆に上昇しているという対照的な構図である。グローバルCEOの多くが成長期待を下方修正する中、同地域のリーダーたちはベトナムを投資先、イノベーションの拠点、そしてサプライチェーン多角化の要として強い信頼を寄せている。
ベトナムがCEOを引きつける3つの原動力
PwCベトナムのマイ・ヴィエット・フン・チャン総支配人は「ベトナムは今、稀有なチャンスを迎えている。地域全体が慎重姿勢を見せる中、ベトナムはアジア太平洋地域のCEOが選ぶトップ3の投資先であり、世界的な貿易・サプライチェーン再構築における戦略的な結節点となっている」と述べた。
ベトナムの魅力は、経済の躍進と法制度の近代化が同時に進行している点にある。具体的には、2025年のGDP成長率が8.02%という目覚ましい数値を記録し、2026年から2030年にかけては10%成長を目標に掲げている。さらに、安定した国内消費に支えられ、インフラ向け公共投資を20〜30%増加させる計画も進行中だ。
制度改革も投資家の信頼を後押ししている。2026年3月1日に施行された「投資法2025」は、行政手続きの簡素化と透明性の向上を実現し、民間セクターの長期的な競争力強化に貢献している。また、国際貿易環境が不安定な中でも、2026年の輸出は8%成長が見込まれており、2025年には米国から20%の関税を課されたにもかかわらず、対米輸出は約28%増加した実績がある。
警戒すべきリスクと企業への提言
一方で、PwCの専門家は慎重な見方も示している。ベトナムの製造業者の86%が、暫定的な支援措置の終了に伴い、2026年には貿易障壁の悪影響がより顕著になると予測している。特に繊維・アパレル、木材加工、農業といった労働集約型産業が最も大きな打撃を受ける見通しだ。
また、サイバーセキュリティがCEOにとって最大のリスクに浮上している。サイバーリスクから「高い」または「非常に高い」影響を受けていると感じるリーダーの割合は、23%から39%へと急増し、インフレやマクロ経済の変動といった従来型リスクを上回った。デジタル経済が急速に発展し、技術導入率が高く、デジタルサプライチェーンが拡大しているベトナムにとって、これは特に重要な課題である。
労働市場においても、自動化の影響で二極化が進んでいる。初級レベルの職種は45%減少傾向にある一方、AIを活用したプロセスにおける監督やリスク管理のスキルを持つ中堅人材への需要は46%増加している。
「再創造」を継続的な能力に──PwCが示す3つの戦略
PwCは、変動を長期的な優位性に転換するため、ベトナム企業に「再創造(Reinvention)」を継続的な能力として確立することを推奨している。提言された3つの戦略的方向性は以下の通りである。
第一に、新たなバリューチェーンへの拡大。中間財製造やクリーンテクノロジーなど、付加価値の高い分野への注力が求められる。第二に、ビジネスモデルの再構築。短期的なリスク対応と長期目標への投資のバランスを取ることが重要だ。第三に、金融ツールの活用。市場が安定に向かう中、M&A(合併・買収)やIPO(新規株式公開)を通じて資金調達、技術獲得、戦略的パートナーシップの構築を図るべきである。
マイ・ヴィエット・フン・チャン総支配人は「早期に投資し、大胆に適応し、明確な目標を持ってリードする企業は、不確実性を長期的な優位性に変えることができる」と強調。「ベトナムは新しい世界に適応しているだけでなく、再創造の時代において自らの地位を主体的に築いている」と結んだ。
日本企業への示唆
今回の調査結果は、日本企業にとっても重要な意味を持つ。中国依存からの脱却を模索する多くの日本企業にとって、ベトナムはすでに有力な代替先として認識されてきたが、今回のPwC調査はその傾向がグローバルレベルで加速していることを裏付けている。製造拠点の分散、サプライチェーンの強靭化、そしてASEAN市場へのゲートウェイとして、ベトナムの戦略的重要性は今後さらに高まることが予想される。一方で、サイバーセキュリティ対策や人材育成への投資も、進出・拡大を検討する際の重要な検討事項となるだろう。
出典: VnEconomy
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