ベトナム南部の工業集積地であるドンナイ省が、2026年の重点インフラプロジェクトに7,000億ドン超の予算を配分した。前年比で8,600億ドン以上の減少となるが、これは一部プロジェクトがほぼ完了したことによるもの。用地収用の遅れという慢性的な課題を抱えながらも、省当局は100%の資金執行を目標に掲げ、管理体制の強化に乗り出している。
29の重点プロジェクトの全体像
ドンナイ省共産党委員会・省人民委員会の報告によると、現在同省には29の重点プロジェクトが存在する。その内訳は、公共投資資金による13プロジェクト、官民パートナーシップ(PPP)方式による6プロジェクト、そして残る10プロジェクトは予算外資金を活用する5事業、1つの計画案、4つの都市計画関連業務となっている。
ドンナイ省はホーチミン市の東隣に位置し、ビエンホア工業団地をはじめとする多数の工業団地を擁するベトナム有数の製造業集積地である。日系企業も数多く進出しており、同省のインフラ整備の進捗は日本企業のサプライチェーンにも直接的な影響を及ぼす地域だ。
2026年の予算配分と資金執行状況
2026年の重点プロジェクト向け予算総額は7,000億ドン超で、2025年の計画と比較して8,600億ドン以上の減少となった。減額の主因は、一部の大型プロジェクトが概ね完了段階に入ったためとされる。
しかし、2026年3月5日時点での資金執行額(ギアイガン=予算の実際の支出)はわずか460億ドン超にとどまり、年間計画の6.5%程度という低水準である。ベトナムでは公共投資の資金執行率の低さが全国的な課題となっており、ドンナイ省も例外ではない。
一方、省全体の公共投資資金についてみると、2026年の総額は2兆7,000億ドン超に達する。このうち中央政府予算が約889億ドン、地方予算が2兆6,200億ドン超という構成だ。省財務局によれば、3月5日時点での省全体の公共投資資金執行額は974億ドン超で、年間計画の約3.6%にとどまっている。
中央予算が投入される3大プロジェクト
中央政府予算が配分されている3つのプロジェクトは、いずれもドンナイ省の経済発展にとって戦略的に重要なものである。
第一は、ビエンホア~ブンタウ高速道路(第1期)のサブプロジェクト1で、配分額は400億ドン。この高速道路はドンナイ省の中心都市ビエンホアと、ベトナム最大の深水港であるカイメップ・ティバイ港を擁するバリア・ブンタウ省を結ぶもので、南部経済圏の物流効率を劇的に改善すると期待されている。
第二は、ニョンチャック連絡港湾道路で、482億ドン超が配分された。ニョンチャックはドンナイ省南部に位置し、ホーチミン市やロンタイン国際空港(建設中)にも近接する戦略的要衝である。
第三は、ビンフック省(旧)の気候変動適応型灌漑近代化プロジェクトで、7億ドンが配分されている。
地方予算からは、530のプロジェクトに対して1兆5,600億ドン超が各投資主体に詳細配分済みである。
用地収用が最大のボトルネック
3月11日、ドンナイ省共産党副書記のヴォー・タン・ドゥック氏が、重点プロジェクト推進指導チームの副チーム長として会議を主宰し、各プロジェクトの進捗状況について報告を受けた。
ヴォー・タン・ドゥック副書記は、重点プロジェクトの進捗に一定の前向きな変化が見られると評価しつつも、依然として複数の困難が存在し、とりわけ用地収用(ザイフォンマットバン)が最大の課題であると指摘した。
ベトナムにおける用地収用の遅延は全国的な構造問題である。土地使用権の複雑な権利関係、補償額をめぐる住民との交渉難航、行政手続きの煩雑さなどが重なり、大型インフラプロジェクトの工期遅延の主因となっている。ドンナイ省は工業化が急速に進む一方で、農地や住宅地の転用をめぐる利害調整が複雑化しており、この問題は特に深刻だ。
管理体制の強化と73の優先プロジェクト
進捗加速に向けて、ヴォー・タン・ドゥック副書記は複数の具体的な指示を出した。省人民委員会党委員会および省党委員会事務局に対し、指導チームの体制刷新と重点プロジェクトリストの見直しを省党常務委員会に報告するよう求めた。
また、関係部署に対しては以下の措置を緊急に実施するよう要請した。
・各プロジェクトのクリティカルパス(工程管理上の最重要経路)を図示し、責任者と実施スケジュールを明確化すること
・検査を強化し、障害を迅速に解消して公共投資プロジェクトの進捗を加速すること
・コスト管理、工程管理、品質管理における規律を厳格化すること
・用地収用を法規定に則って確実に実施すること
資金活用の効率化に向けては、省財務局が各部署・地方と連携し、2026年公共投資計画に含まれるプロジェクトの緊急度を精査している。2026年2月末時点で、省財務局は優先度1・2に分類される73のプロジェクトの継続実施を省人民委員会に提案した。これには国家的重要プロジェクト、省第11回党大会決議に基づく重点公共投資事業、科学技術・デジタルトランスフォーメーション・医療施設・学校・広域連携プロジェクトなど、2026~2030年の省の経済社会発展に大きな影響を持つ事業が含まれる。これら73プロジェクトへの2026年配分額は約1,300億ドンである。
日本企業への示唆と今後の展望
ドンナイ省は、隣接するロンタイン国際空港の建設進展とあわせて、南部ベトナムの物流・製造ハブとしての地位をさらに強化しようとしている。ビエンホア~ブンタウ高速道路やニョンチャック連絡港湾道路といった交通インフラが完成すれば、港湾・空港・工業団地を結ぶネットワークが飛躍的に改善される。
しかし、資金執行率の低さと用地収用の遅延は、これらのインフラ整備が計画通りに進まないリスクを示唆している。ドンナイ省に拠点を持つ、あるいは進出を検討している日系企業にとっては、個別プロジェクトの実際の進捗状況を注視し、物流計画やサプライチェーン戦略に遅延リスクを織り込んでおくことが重要となるだろう。
ドンナイ省が掲げる「公共投資資金100%執行」という野心的な目標が達成されるかどうかは、年後半の動向を見守る必要がある。ベトナム全体で公共投資の加速が政治的最優先課題となっている中、同省の取り組みは他省の模範となり得るか、注目される。
出典: Vn Economy
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