ベトナム中部の古都フエ市が、2026年度の公共投資事業の施工進捗と資金執行(ザイガン=予算消化)の加速に本腰を入れている。交通インフラや都市基盤整備を中心とする大規模プロジェクトが目白押しとなるなか、市の指導部は「週単位の執行計画」の策定を各事業主体に求めるなど、異例の厳しい姿勢で臨んでいる。
2026〜2030年中期投資計画の初年度、フエ市が総力態勢
フエ市人民委員会はこのほど、市内で進行中および新規着工予定の公共投資事業について、進捗状況と予算執行の実態を総点検する会議を開催した。会議を主宰したホアン・ハイ・ミン(Hoàng Hải Minh)副主席は、「2026年は2026〜2030年中期公共投資計画の初年度であり、中央政府予算が配分された大型事業を同時並行で進めている。各部局・地方当局・事業主体は公共投資の予算執行を最重要任務として位置づけ、断固たる指導にあたるべきだ」と強調した。
ベトナムでは公共投資の「ザイガン(giải ngân)」、すなわち配分された予算をいかに速やかに実際の支出に結びつけるかが、中央政府から地方まで共通の重点課題となっている。予算執行率が低い地方は翌年度以降の配分削減につながるリスクがあるため、年度初めからのスタートダッシュが極めて重要なのだ。
進行中の重点プロジェクト――沿岸道路からフォン川橋梁まで
会議で報告された主な進行中プロジェクトは以下の通りである。
①沿岸道路(フエ市区間)およびトゥアンアン(Thuận An)河口橋
フエ市東部の海岸線に沿って建設される道路と、ラグーン(潟湖)の河口部に架かる橋梁を組み合わせた事業。すでに旧ハイズオン(Hải Dương)社からトゥアンアン坊のホー・バン・ドー通りに至る区間の用地取得・引き渡しが完了し、施工が進んでいる。残る約200メートル区間の手続きも最終段階にある。市の指導部は「人員と機材を集中投入し、主要工事の完了と技術的開通を4月30日までに達成するよう全力を尽くせ」と指示した。4月30日はベトナムの「南部解放記念日」であり、国家的節目に合わせた開通を目指す政治的意義も大きい。
②グエン・ホアン(Nguyễn Hoàng)通りおよびフォン川(Sông Hương)新橋
世界遺産・フエ王宮を擁する古都の象徴であるフォン川に新たな橋を架ける計画は、市の都市交通ネットワーク強化の柱である。グエン・ホアンはベトナム史における広南国(クアンナム国)の開祖の名を冠した通りで、歴史的にも注目度が高い。
③環状3号線(Đường vành đai 3)
都市圏の外縁を結ぶ環状道路で、市内中心部の交通渋滞の緩和と周辺地域の開発促進が期待されている。
④フエ市水環境改善事業
フォン川をはじめとする市内の水系環境を改善する大規模事業で、世界遺産都市としての景観保全と住民の生活環境向上の両面から重要視されている。
⑤南北高速鉄道プロジェクト関連の再定住区・墓地
ベトナムが国家的事業として推進する南北軸の高速鉄道計画に伴い、フエ市内でも用地取得が必要となっている。立ち退き住民のための再定住区と、墓地の移転先の整備が急がれている。日本はこの高速鉄道計画の技術協力パートナーとして新幹線技術の提供が取り沙汰されており、日本企業にとっても関連インフラの進捗は注視すべきポイントである。
2026年内に着工予定の新規事業群
進行中の事業に加え、2026年内の着工を目指して投資手続きが進められている新規プロジェクトも多岐にわたる。
コンヘン(Cồn Hến)橋と取付道路
コンヘンはフォン川の中州にある島で、フエの名物料理「ブン・ボー・フエ」(牛肉の辛味麺)の原点とも言われる食文化の拠点である。新橋の建設は観光振興と住民の交通利便性向上の双方に寄与する。
タムザン潟(Phá Tam Giang)橋
フーヴァン(Phú Vang)社とフーヴィン(Phú Vinh)社を結ぶ橋で、東南アジア最大級の潟湖であるタムザン・ラグーンを横断する。この潟湖一帯は豊かな水産資源と独特の景観で知られ、エコツーリズムの拠点としても注目されている。
文廟(ヴァン・ミエウ)・国子監(クオック・トゥ・ザム)の修復
ベトナムの伝統的な学問の殿堂として知られる文廟と国子監の修復事業は、フエの世界文化遺産としての価値を維持する上で不可欠な事業である。ハノイの文廟が有名だが、フエの文廟・国子監もグエン朝(阮朝、1802〜1945年)の学問の中枢として極めて高い歴史的価値を持つ。
チャンマイ・ランコー(Chân Mây – Lăng Cô)経済区のインフラ整備
フエ市南部に位置するチャンマイ・ランコー経済区は、深水港と美しいビーチリゾートを併せ持つ戦略的拠点である。インフラの完成は外国直接投資(FDI)の呼び込みに直結するため、市にとって優先度の高い事業となっている。
アルーイ(A Lưới)地区の寄宿制学校建設
ラオス国境に近い山岳地帯のアルーイ地区に、小学校・中学校一貫の寄宿制学校を3校(アルーイ1、2、5社)建設する計画。少数民族が多く暮らすこの地域では、教育アクセスの改善が社会課題となっている。
トー・フー通り延伸〜フーバイ空港線でも厳しい督促
ホアン・ハイ・ミン副主席は、トー・フー(Tố Hữu)通りの延伸道路(フーバイ空港方面)の現場も視察した。フーバイ空港はフエの空の玄関口であり、ダナンに次ぐ中部地域の主要空港である。この路線の再定住区整備について、副主席は関係機関間の連携不足により進捗が遅れていると公に批判し、手続きの早期完了と建設の加速を厳命した。立ち退き対象の住民に早期に住居を確保し、本線工事を計画通りに進めることが求められている。
日本企業・投資家への示唆
今回の動きは、フエ市が単なる観光・文化都市から、本格的な経済都市への転換を加速させていることを如実に示している。2024年にトゥアティエン・フエ省が中央直轄市に昇格して以来、フエ市には中央政府からの予算配分が拡大しており、インフラ整備の規模と速度は以前とは比較にならない水準に達している。
特に注目すべきは、南北高速鉄道関連のインフラ整備が着実に進んでいる点だ。日本の国際協力機構(JICA)や日本企業はこのプロジェクトに深く関与しており、フエ市内の用地取得や再定住区の整備状況は、高速鉄道本体の工程にも直接影響を及ぼす。また、チャンマイ・ランコー経済区のインフラ完成は、製造業やリゾート開発を検討する日本企業にとって新たな進出機会を生む可能性がある。
一方、公共投資の急速な拡大には、建設資材や労働力の逼迫、用地取得に伴う住民との摩擦といったリスクも伴う。フエ市がこうした課題にどこまで機動的に対応できるかが、中期投資計画の成否を左右することになるだろう。
出典: VnEconomy
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