ベトナムのサッカーファンなら誰もが知る「バウドゥック」ことドアン・グエン・ドゥック氏が率いるホアンアインザーライ(Hoàng Anh Gia Lai、略称HAGL)が、2028年までにコーヒー栽培面積を2万ヘクタールに拡大し、年間売上高7億ドル超を目指す壮大な計画を打ち出した。実現すれば、単一企業としては世界最大のコーヒー栽培管理面積を誇ることになる。
ホアンアインザーライとは何者か
ホアンアインザーライは、ベトナム中部高原のザーライ省(Gia Lai)を本拠とする企業グループである。創業者のドアン・グエン・ドゥック氏は、ベトナムサッカー界への多額の投資で「バウドゥック(ドゥック会長)」の愛称で国民的に知られる人物だ。同氏はかつてベトナムのサッカー代表チームの躍進を支えた名物オーナーとして、日本のサッカーファンにも馴染みがあるかもしれない。元ベトナム代表のグエン・コン・フオン選手を育てたHAGLアカデミーも同氏の肝いりで設立されたものだ。
HAGLはもともと不動産開発やゴム栽培、パーム油など多角的な事業を展開してきたが、近年は農業分野への集中を鮮明にしている。特にバナナやドリアンといった果樹栽培で成功を収め、ベトナム国内外で存在感を高めてきた。そして今回、その農業戦略の新たな柱としてコーヒー事業の大規模拡大を宣言した形だ。
2万ヘクタール・年間7億ドル超の具体像
HAGLの計画によれば、2028年までにコーヒーの栽培面積を2万ヘクタールまで拡大する。2万ヘクタールといえば、東京都の山手線内側の面積(約6,300ヘクタール)の約3倍に相当する広大なスケールである。同社はこの規模を達成した暁には、年間売上高が7億ドルを超えると見込んでおり、世界最大のコーヒー栽培管理企業になることを目標に掲げている。
ベトナムは世界第2位のコーヒー生産国であり、特にロブスタ種の生産量では世界トップクラスの地位を占める。ベトナム中部高原地域(タイグエン地方)は赤土の肥沃な土壌と標高の高い冷涼な気候がコーヒー栽培に適しており、ザーライ省やダクラク省、ラムドン省などが主要な産地として知られる。HAGLの本拠地であるザーライ省はまさにこのコーヒーベルトの中心に位置しており、大規模栽培の地理的優位性は明確だ。
なぜ今、コーヒーなのか
HAGLがコーヒー事業に大きく舵を切る背景には、世界的なコーヒー価格の高騰がある。2024年から2025年にかけて、ロブスタ種のコーヒー豆の国際価格は歴史的な高水準で推移しており、ベトナム産コーヒーの輸出額も大幅に増加している。気候変動によるブラジルなど他の主要生産国の不作リスクもあり、ベトナム産コーヒーへの国際的な需要は今後も堅調に推移するとの見方が強い。
また、欧州連合(EU)が2024年末から段階的に施行している「森林破壊防止規則(EUDR)」も、大規模で管理されたコーヒー農園の価値を押し上げている。EUDRでは、森林を破壊して生産された農産物の輸入を規制するため、トレーサビリティ(生産履歴の追跡)が厳格に求められる。小規模農家が乱立するベトナムのコーヒー産業において、HAGLのように企業が一元管理する大規模農園は、こうした国際規制への対応力という点で大きなアドバンテージを持つ。
日本企業・日本市場への影響
日本はベトナム産コーヒーの主要な輸入国の一つであり、缶コーヒーやインスタントコーヒーの原料としてベトナム産ロブスタ種は広く使用されている。HAGLの大規模栽培が軌道に乗れば、安定した供給源として日本の食品・飲料メーカーにとっても注目すべき動きとなるだろう。
一方で、HAGLは過去に大規模な債務問題を抱え、経営危機に陥った経験がある。不動産やゴム事業での過剰投資がその主因であった。今回のコーヒー事業への大規模投資が、過去の失敗を繰り返さない持続可能なものとなるかどうかは、投資家や取引先にとって注視すべきポイントである。「バウドゥック」の経営手腕が再び問われる局面だ。
まとめ
世界第2位のコーヒー大国ベトナムにおいて、HAGLが掲げる「世界最大のコーヒー栽培管理企業」という目標は、実現すればベトナム農業史に残る一大プロジェクトとなる。コーヒー価格の高騰やEUの環境規制強化といった追い風を受けつつ、過去の経営危機からの教訓をどう活かすか。バウドゥック氏の次なる挑戦から目が離せない。
出典: VN Express
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