ベトナム南部の島嶼リゾートとして急速な発展を遂げるフーコック(Phú Quốc)で、都市鉄道(メトロ)の建設計画が具体的なフェーズに入りつつある。アンザン省(An Giang)建設局はこのほど、建設省傘下の複数の専門機関に対し、同プロジェクトの技術方案および財務方案を審査する「審査評議会」への参加を正式に要請した。投資決定の前段階として、中央政府レベルの技術的知見を取り込む狙いがある。
審査評議会の構成と役割
アンザン省建設局が参加を求めた建設省傘下の機関は、経済・建設投資管理局、ベトナム鉄道局、ベトナム道路局、運輸・交通安全局、科学技術・環境・建設資材局の5部門にわたる。評議会の任務は、プロジェクトの技術方案・採用技術・品質基準の精査に加え、財務計画の妥当性評価を行うことである。評議会は兼任制で運営され、任務完了後に自動的に解散する時限的な組織とされている。
中央機関に加え、アンザン省側からも建設局、財政局、科学技術局、農業環境局、商工局、司法局、省公安、フーコック特区人民委員会、フーコック経済特区管理委員会といった幅広い部門が評議会に名を連ねる。交通インフラにとどまらず、環境・法務・治安面まで網羅した審査体制が敷かれる格好だ。
プロジェクトの概要――全長17.7km、最高時速100km
計画されている都市鉄道は「第1区間」と位置づけられ、全長約17.7kmの路線に5〜7の駅と1カ所の車両基地(デポ)を設置する。編成は3〜5両で、設計速度は時速70〜100km。必要な用地面積は約34ヘクタールとされている。
総投資額は約8,949億ドン。官民連携(PPP)方式が採用され、契約形態はBOT(Build-Operate-Transfer=建設・運営・移管)で、運営期間は最大40年間となる。2025年第4四半期の着工、2027年第2四半期の完成が目標スケジュールとして示されている。
投資家の選定――「特別な場合」の適用
注目すべきは投資家の選定プロセスである。アンザン省人民委員会は「特別な場合における投資家選定」の手続きを適用し、マットチョイ・フーコック社(Công ty TNHH Mặt Trời Phú Quốc)を投資家に選定した。通常の競争入札を経ない形での選定であり、同社がフーコック島における不動産・観光開発で実績を持つ企業であることが背景にあるとみられる。選定された投資家は、フィージビリティ・スタディ(実現可能性調査報告書)の作成、能力証明書類および契約草案の提出を行い、アンザン省建設局が主導して審査する流れとなる。
背景――フーコック特区の位置づけとAPEC 2027
フーコック島はベトナム最大の島で、タイランド湾に浮かぶ面積約574平方kmのリゾートアイランドである。行政的にはかつてキエンザン省に属していたが、ベトナム政府の行政区画再編により現在はアンザン省の管轄下にある「フーコック特区」として位置づけられている。近年はビングループ(Vingroup)をはじめとする大手デベロッパーによるリゾート開発が急速に進み、国際空港も整備されたことで観光客数が飛躍的に増加している。
今回のメトロ計画が急ピッチで進められている背景には、2027年にベトナムが議長国を務めるAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議の開催が控えていることがある。フーコック島は会議の主要会場候補の一つとされており、国際的な注目が集まる中、島内の公共交通インフラを一気に整備しようという狙いが透けて見える。メトロの完成により、道路交通への負荷軽減や輸送サービスの質向上が期待されるほか、APEC期間中のVIP輸送手段としても活用される可能性がある。
日本企業・投資家への示唆
ベトナムにおける都市鉄道プロジェクトといえば、ハノイやホーチミン市の地下鉄計画が長年にわたり遅延を繰り返してきた経緯がある。ホーチミン市メトロ1号線は日本のODAを活用した事業であり、2024年末にようやく商業運行を開始した。こうした先例と比較すると、フーコックのメトロ計画は約2年弱という極めて短い工期を設定しており、実現可能性については慎重に見極める必要があるだろう。
一方で、PPP・BOT方式による民間主導のプロジェクトであるため、大都市メトロとは異なるスキームで進む可能性もある。軽量軌道交通(LRT)やモノレールなど、比較的短期間で建設可能な技術が採用される可能性も考えられ、日本の鉄道関連技術やコンサルティング企業にとっては関与の余地がある分野だ。フーコック島の観光・リゾート開発に関心を持つ日本企業にとっても、交通インフラの進展は投資判断を左右する重要な要素となるだろう。
出典: Vn Economy
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