ベトナムのファム・ミン・チン首相がアルジェリアのナディール・ラルバウイ首相と電話会談を行い、ベトナムへの原油および天然ガスの供給支援を正式に要請した。急速な経済成長に伴いエネルギー需要が増大するベトナムにとって、調達先の多角化は喫緊の課題であり、アフリカ有数の産油国であるアルジェリアとのエネルギー協力強化は戦略的に大きな意味を持つ。
電話会談の概要とチン首相の要請内容
2025年3月19日に行われた電話会談で、チン首相はアルジェリア側に対し、ベトナムのエネルギー安全保障を確保するため、原油(dầu thô)と天然ガス(khí đốt)の供給について協力を求めた。ベトナムは近年、国内の原油生産量が減少傾向にある一方、工業化と都市化の進展によりエネルギー消費量は右肩上がりで増加しており、安定的な調達ルートの確保が国家的優先課題となっている。
チン首相はまた、エネルギー分野にとどまらず、両国間の経済・貿易関係全般の拡大についても意見を交わしたとみられる。ベトナムとアルジェリアは1962年の外交関係樹立以来、長年にわたる友好関係を維持しており、今回の会談はその関係を実利的な経済協力へと深化させる狙いがある。
アルジェリアの石油・天然ガス大国としての位置づけ
アルジェリアはアフリカ大陸で最大の面積を持つ国であると同時に、世界有数のエネルギー資源国でもある。天然ガスの確認埋蔵量は世界第10位前後に位置し、欧州への主要なガス供給国の一つとして知られる。国営企業ソナトラック(Sonatrach)は世界最大級のエネルギー企業であり、原油・天然ガスの探査から生産、輸出までを一手に担っている。
近年、ロシア・ウクライナ紛争を契機に世界的なエネルギー供給の再編が進むなか、アルジェリアは欧州のみならずアジアの新興国からも調達先として注目を集めている。ベトナムがこのタイミングでアルジェリアとのエネルギー協力を打ち出したことは、国際的なエネルギー地政学の変化を的確に捉えた動きといえるだろう。
ベトナムのエネルギー事情と調達多角化の背景
ベトナムは長年、南部沖合のバクホー油田(白虎油田)を中心とした国内原油生産により一定の自給体制を維持してきた。しかし、主要油田の老朽化と生産量の自然減退により、国内の原油生産は2004年のピーク時(日量約40万バレル)から大幅に減少している。一方で、製造業の集積や人口約1億人を擁する国内市場の拡大により、電力需要は年率8〜10%のペースで伸び続けており、エネルギーの「需給ギャップ」は年々拡大している。
ベトナム政府は2023年に承認した「第8次国家電力開発計画(PDP8)」において、再生可能エネルギーの拡大とともに、液化天然ガス(LNG)の輸入を本格化させる方針を打ち出している。現在、南部のティーバイ(Thị Vải)LNG受入基地が稼働を開始しているほか、複数のLNG火力発電プロジェクトが計画段階にある。アルジェリアからのLNG調達が実現すれば、中東やオーストラリアに偏りがちな輸入先の分散につながる。
日本企業・投資家への影響と考察
ベトナムのエネルギー調達多角化の動きは、同国に生産拠点を持つ日本企業にとっても重要なシグナルである。安定したエネルギー供給はベトナムの投資環境の根幹を成すものであり、電力不足や価格高騰のリスクが軽減されれば、製造業を中心としたサプライチェーン拠点としての魅力がさらに高まる。
また、日本のエネルギー関連企業やプラントエンジニアリング企業にとっては、ベトナムのLNGインフラ整備やガス火力発電所建設に参画する商機が広がる可能性がある。JERAや三菱商事、丸紅などはすでにベトナムのLNGプロジェクトに関与しており、今後の調達先拡大に伴い、関連ビジネスの裾野がさらに広がることが期待される。
ベトナムが中東・東南アジア域内に加え、アフリカという新たな調達軸を構築しようとしている点は、同国のエネルギー外交が成熟しつつあることを示している。今後、チン首相の要請がどのような具体的な協定や供給契約に結実するかが注目される。
出典: VN Express
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