ベトナムの経済メディア大手「VnEconomy(タップチー・キンテー・ベトナム=ベトナム経済雑誌)」が、2026年3月19日に年次刊行物『経済2024-2025:ベトナムと世界(Kinh tế 2024-2025: Việt Nam và Thế giới)』を発行する。同誌は毎年初頭に刊行される特別版で、前年のベトナム経済および世界経済の全体像を多角的に分析し、翌年の展望を示す内容として、政策立案者やビジネス関係者から高い評価を受けてきた。今回の2025-2026年版では、ベトナム経済が直面する「成長モデルの転換点」に焦点を当て、従来型の成長エンジンの限界と、新たな成長ドライバーの台頭を徹底分析している。
2025年は「転換の基点」──旧い成長サイクルの終焉と新時代の幕開け
同刊行物によれば、2025年はベトナム経済にとって「蝶番(ちょうつがい)の年」、すなわち旧い発展サイクルを閉じ、新たなサイクルを開く節目の年と位置づけられている。ベトナムは1986年のドイモイ(刷新)政策以降、約30年にわたり外資導入・輸出主導型の製造業、安価で豊富な労働力、そしてインフラ投資といった「伝統的な成長ドライバー」を支柱に高成長を遂げてきた。しかし近年、これらの成長エンジンは効力の低下が顕著になりつつある。
具体的には、人件費の上昇による低コスト製造拠点としての競争力の鈍化、公共投資の乗数効果の逓減、そして不動産セクターの調整局面などが重なり、従来型モデルだけでは持続的な高成長を維持することが難しくなっている。一方で、世界的な地政学リスクの高まり──米中対立の長期化、ロシア・ウクライナ紛争の影響、サプライチェーンの再編──は、ベトナムにとってリスクであると同時に、「チャイナ・プラスワン」の受け皿として飛躍するチャンスでもある。
2026年の鍵を握る「三つの新成長エンジン」
今回の刊行物が特に注目しているのは、2026年以降のベトナム経済を牽引すると期待される三つの新たな成長ドライバーである。
第一に「グリーン経済(経済xanh)」。ベトナムは2021年のCOP26で「2050年カーボンニュートラル」を宣言しており、再生可能エネルギーへの転換や、EUが導入した炭素国境調整メカニズム(CBAM)への対応が急務となっている。太陽光・風力発電への投資拡大や、グリーンボンド市場の整備が進みつつあり、環境関連産業は今後の成長分野として大きな期待を集めている。
第二に「デジタル経済(経済số)」。ベトナムのデジタル経済は東南アジアでも最も急速に成長している市場の一つであり、フィンテック、eコマース、デジタル決済などが急拡大している。政府も「デジタルトランスフォーメーション(DX)国家計画」を推進しており、2030年までにGDPに占めるデジタル経済の比率を30%に引き上げる目標を掲げている。
第三に「知識経済(経済tri thức)」。半導体設計、AI(人工知能)、ソフトウェア開発などの高付加価値産業の育成が本格化しつつある。米エヌビディアやサムスン電子がベトナムでの研究開発拠点を拡充する動きも見られ、単なる「世界の工場」から「知識集約型経済」への転換が模索されている。
「二桁成長の時代」は実現可能か──複数のシナリオを専門家が分析
同刊行物では、複数の経済専門家による分析・論評を通じ、「2026年のベトナム経済と世界経済にとって、どのような成長シナリオが適切か」という問いに迫っている。とりわけ注目されるのは、「伝統的な成長ドライバーの刷新」と「新たな成長ドライバーの創出」を同時に進めながら、資源のボトルネック(人材不足、資本市場の未成熟、制度的制約など)を解消し、「二桁成長(年率10%以上)の時代」への道を切り開けるかという論点である。
ベトナム政府は2026年から始まる新たな5カ年計画(2026-2030年)において、GDP成長率の大幅な引き上げを目標に掲げる方針を示している。共産党のトー・ラム書記長は「ベトナムの新時代(Kỷ nguyên mới)」を繰り返し強調しており、経済面での野心的な目標設定が政治的にも後押しされている形だ。
日本企業・投資家にとっての示唆
日本にとってベトナムは、最大規模のODA(政府開発援助)供与先であると同時に、製造業の移転先・サプライチェーンの要衝として極めて重要な存在である。日本企業のベトナム進出は年々増加しており、在ベトナム日系企業数は約2,000社を超える。
今回の刊行物が示す「成長モデルの転換」は、日本企業にとっても戦略の見直しを迫るものとなり得る。従来の「安価な労働力を活用した製造拠点」という位置づけだけでなく、グリーンテクノロジーやDX分野での協業、高度人材の育成支援といった新たなビジネスチャンスが広がりつつある。一方で、制度変更のスピードや規制の不透明さといったリスクにも引き続き注意が必要である。
ベトナム経済が本当に「二桁成長の新時代」に突入できるのか、それとも中所得国の罠に陥るのか──2026年はその分岐点を占う極めて重要な一年となりそうだ。
出典: VnEconomy
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