ベトナムのホー・クオック・ズン(Hồ Quốc Dũng)副首相は2025年3月19日、中部高原(タイグエン)地方のダクラク省を訪れ、カインホア~バンメトート高速道路(cao tốc Khánh Hòa – Buôn Ma Thuột)の建設進捗を視察した。副首相は、同高速道路の第2区間について2026年9月2日(ベトナムの独立記念日)までに技術開通を達成し、2026年中に全線の完成を目指すよう関係機関に強く求めた。
プロジェクトの全体像──総延長117km超、総投資額約2兆1,935億ドン
カインホア~バンメトート高速道路は、南シナ海に面した中南部沿岸のカインホア省(省都ニャチャンで知られるリゾート地)と、中部高原最大の都市であるダクラク省バンメトート市を結ぶ総延長117km超の高速道路である。総投資額は約2兆1,935億ドン(約21,935 tỷ đồng)に上り、以下の3つのサブプロジェクトで構成されている。
- 第1区間(Dự án thành phần 1):延長約31km。カインホア省人民委員会が主管。
- 第2区間(Dự án thành phần 2):延長約37km。建設省(Bộ Xây dựng)が実施主体。山岳地帯を貫く最難関区間。
- 第3区間(Dự án thành phần 3):延長約48km。ダクラク省人民委員会が管理。
このうち第3区間は、すでに2025年12月19日に技術開通を達成しており、建設工事の出来高は94%を超え、残りの仕上げ工事が進行中である。一方、最も難工事とされる第2区間は施工量ベースで約64%の進捗にとどまっており、完成に向けた加速が急務となっている。
副首相の指示──乾季を最大限活用し工期短縮を
視察後、ズン副首相は各事業者からの報告を聴取したうえで、以下のような具体的指示を発した。
第一に、ベトナム中部高原地域は雨季と乾季がはっきり分かれる気候特性を持つため、現在の乾季の好条件を最大限に活かし、各区間の施工を前倒しすること。特に第2区間は急峻な地形と厳しい気象条件が重なる区間であり、これらの困難を克服して2026年9月2日までの技術開通、そして2026年内の全線完成を実現するよう強調した。
第二に、ダクラク省に対しては、残存する課題の早期解決を図り、全線の予定どおりの供用開始を確保するよう求めた。加えて、サービスエリア(休憩施設)やITS(高速道路交通管理システム)などの整備も並行して進め、開通後の運用効率を高めるよう指示している。
さらなる高速道路網の拡充──バンメトート~トゥイホア線の検討も
今回の視察では、高速道路ネットワークのさらなる拡大についても議論が交わされた。ズン副首相は、ダクラク省に対し、バンメトート~トゥイホア(Buôn Ma Thuột – Tuy Hòa)間の高速道路建設案を調査・提案するよう指示した。トゥイホアはフーイエン省の省都で、カインホア省の北側に位置する沿岸都市である。この路線が実現すれば、西部高原(タイグエン)地域と中部沿岸地域の間に複数の東西軸が形成され、物流・人流の選択肢が大幅に広がることになる。
また、ダクラク省の指導部は中央政府に対し、カインホア~バンメトート高速道路の終点と省内の東西幹線道路を接続するプロジェクトの早期実施を要望した。高速道路単体では効果が限定的であり、地方の既存道路網との有機的な接続があって初めてその投資効果が最大化されるとの認識からだ。ズン副首相はこの提案に同意し、関係省庁に対して地方と連携して計画を策定し、権限ある機関に上申するよう指示した。
なぜこの高速道路が重要なのか──地政学的・経済的背景
ベトナムの中部高原(タイグエン)は、ダクラク省、ザライ省、コントゥム省、ラムドン省、ダクノン省の5省から成る内陸高地である。コーヒー(ベトナムは世界第2位のコーヒー輸出国)やカカオ、胡椒、天然ゴムなどの一大農業生産地であり、近年はボーキサイト鉱山の開発も進んでいる。しかし、沿岸部との交通インフラが脆弱であったため、農産物の輸送コストが高止まりし、地域の経済発展のボトルネックとなってきた。
カインホア~バンメトート高速道路が全通すれば、バンメトートからカインホア省の港湾・物流拠点へのアクセスが劇的に改善される。ニャチャン周辺にはバンフォン(Vân Phong)国際トランシップ港の開発計画もあり、高原地帯の農産物・鉱産物を海外に輸出するサプライチェーンの効率化が期待される。観光面でも、ニャチャンのビーチリゾートとバンメトートのコーヒー農園ツアーを組み合わせた周遊ルートの形成が見込まれ、地域経済への波及効果は大きい。
日本企業・投資家への示唆
ベトナム政府は2021年から2030年にかけて全国の高速道路網を約5,000kmに拡大する計画を推進しており、本プロジェクトもその一環に位置づけられる。日本企業にとっては、建設機械・資材の供給、ITS(高速道路交通管理システム)の技術提供、さらには高速道路沿線での工業団地・物流施設の開発など、多方面でビジネス機会が生まれうる。特にダクラク省は農業加工分野での投資誘致を積極化しており、輸送インフラの改善は進出判断にプラスに作用するだろう。
2026年9月2日という期限は、ベトナムの第81回独立記念日に合わせた象徴的な目標でもある。政治的な意志が強く働くプロジェクトであるだけに、今後も工期の遵守に向けた政府の積極的な関与が続くものと見られる。
出典: Vn Economy
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