ベトナム政府は、食品の公表・登録手続きを定めた「政令46号(Nghị định 46)」および関連する「決議66号(Nghị quyết 66)」の施行を再び延期する方針を決定した。新たな施行時期は、現在国会で審議が進む「食品安全法(改正版)」およびその施行細則が正式に発効するまでとされており、事実上の無期限延期となる。食品業界にとっては規制の不透明感が続く一方、過度な行政負担の回避という観点からは一定の猶予が与えられた形だ。
政令46号とは何か──その背景と経緯
政令46号は、ベトナム国内で流通する食品の安全基準や、製品の公表(自己宣言)・登録手続きについて定めた政府規定である。ベトナムでは従来、食品の製造・輸入にあたり、当局への届け出や安全性の証明書類提出など複雑な行政手続きが求められてきた。政令46号はこうした手続きの整理・簡素化を目指して制定されたものの、実務面での混乱や業界からの反発もあり、施行が繰り返し延期されてきた経緯がある。
決議66号は政令46号を補完する形で出された国会決議で、食品の公表・登録に関する暫定的な運用ルールを定めている。両規定はセットで語られることが多く、今回も同時に延期措置が取られた。
なぜ延期が繰り返されるのか
延期の最大の理由は、上位法である「食品安全法」そのものが現在改正作業の最中にあることだ。ベトナム国会では食品安全法の抜本改正が議論されており、改正法が成立すれば、それに基づく新たな施行細則(ガイドライン)も策定される。政令46号や決議66号の内容が改正法と矛盾する可能性があるため、新法の枠組みが固まるまで旧規定の施行を見合わせるという判断である。
ベトナムでは近年、法令の制定・改正サイクルが加速しており、政令や通達が上位法の改正に追いつかないケースが頻発している。食品安全分野はとりわけ関係省庁(保健省、農業農村開発省、商工省)が多岐にわたるため、調整に時間を要する傾向がある。
食品業界への実務的な影響
今回の延期措置により、現行の暫定的な運用ルールがそのまま継続されることになる。食品メーカーや輸入業者にとっては、新たな手続き変更への対応が当面不要となるため、短期的には負担軽減といえる。しかし、いつ新制度が始まるのか見通しが立たない状況は、中長期的な事業計画の策定を難しくする要因でもある。
とりわけ、ベトナムに食品を輸出している日系企業や、現地で食品加工・製造を手がける日系メーカーにとっては注意が必要だ。ベトナムの食品登録制度は、日本の制度とは大きく異なり、製品ごとの届け出や成分証明の要求が厳格な場合がある。改正法の内容次第では、手続きの簡素化が進む可能性もある一方、新たな規制が追加されるリスクも否定できない。
日本企業が注視すべきポイント
ベトナムは約1億人の人口を抱え、中間層の拡大に伴い食品市場が急成長している。日本からの食品輸出額も年々増加傾向にあり、菓子類、調味料、水産加工品、乳製品など幅広い品目がベトナム市場に流通している。JETROの調査によれば、ベトナムは日本の農林水産物・食品の輸出先として東南アジア有数の重要市場に位置づけられている。
こうした中、食品安全法の改正動向は日本企業のベトナム事業戦略に直結する。改正法の国会審議スケジュールや、保健省が公表するガイドライン草案の内容を早期に把握し、必要な対応を準備しておくことが肝要である。現地の法律事務所やコンサルタント、日本商工会議所(JCCH)などの情報ネットワークを活用した情報収集が推奨される。
考察──規制の「空白期間」が意味するもの
ベトナムの法制度は、経済成長のスピードに法整備が追いつかないという構造的な課題を抱えている。食品安全分野においても、消費者保護の強化と企業の事業環境整備のバランスをどう取るかが問われている。今回の延期は、拙速な規制導入を避けるという意味では合理的な判断だが、規制の「空白期間」が長引けば、食品安全に関する監督体制の弱体化を招く恐れもある。
ベトナム政府がどのようなタイムラインで改正食品安全法を成立させ、実効性のある施行細則を整備できるか。今後の国会審議の行方が、食品業界全体の方向性を左右することになるだろう。
出典: VN Express
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