ベトナム産コショウの輸出が好調だ。2025年の年初2カ月間で輸出量は前年同期比30%超の伸びを記録し、なかでもタイ向けが突出した成長を見せている。タイのコショウ市場はほぼベトナムからの供給に依存する構造となっており、「独占」とも表現される状態が鮮明になってきた。世界最大のコショウ輸出国としての地位を盤石にしつつあるベトナムの動向は、日本の食品業界にとっても無視できないトレンドである。
年初2カ月で輸出3割増──好調の背景
ベトナムは長年にわたり世界最大のコショウ輸出国の座を維持してきた。主要産地は中部高原(タイグエン)地方のザライ省、ダクラク省、ダクノン省、そして南東部のビンフオック省やバリア・ブンタウ省などに広がる。国際コショウ共同体(IPC)の統計でもベトナムは世界のコショウ輸出シェアの約40%前後を占めるとされ、ブラジルやインドネシア、インドといった競合国を大きくリードしている。
2025年1〜2月の輸出が前年同期比30%超という力強い伸びを示した背景には、複数の要因が指摘されている。第一に、世界的な香辛料需要の回復がある。コロナ禍以降、家庭内調理の増加やエスニック料理ブームにより、コショウを含むスパイス類の国際需要は堅調に推移してきた。第二に、ベトナム国内での生産管理の高度化により、品質面で国際的な評価が高まっていることも見逃せない。ベトナム産コショウは従来、価格競争力を武器にしてきたが、近年はオーガニック認証を取得した高付加価値品の輸出も増加傾向にある。
タイ市場で「独占」状態に──なぜベトナム産なのか
今回の統計で特に注目されるのが、タイ市場におけるベトナム産コショウの圧倒的なシェアである。タイは世界有数の食品加工国であり、トムヤムクンをはじめとするタイ料理には大量のスパイスが使用される。しかしながら、タイ国内でのコショウ生産量は限定的で、自国消費を賄うには海外からの輸入に頼らざるを得ない構造となっている。
地理的近接性もベトナム産が選ばれる大きな理由だ。陸路・海路ともに輸送コストが低く、鮮度を保った状態での納入が可能である。さらに、ASEAN域内の関税優遇措置(ATIGA=ASEAN物品貿易協定)により、ベトナムからタイへのコショウ輸出にはほぼゼロ関税が適用されるケースが多い。価格・品質・物流のすべてにおいてベトナム産が優位に立つ結果、タイのコショウ輸入市場はベトナムにほぼ「独占」される状況が生まれたと考えられる。
世界のコショウ市場と価格動向
国際市場におけるコショウ価格は、2023年後半から上昇基調に転じた。主因はベトナム国内での在庫減少と、エルニーニョ現象に伴う東南アジア各国での作柄不安である。ベトナムでは2024年の収穫期に一部地域で干ばつの影響が出たとされ、供給のタイト化が価格を押し上げた。こうした価格上昇は輸出金額を増大させる一方で、国内農家の収益改善にもつながっており、生産意欲の向上が2025年の輸出増にも寄与しているとみられる。
ベトナムのコショウ輸出先は多岐にわたる。米国、EU諸国、インド、中東、そして日本も重要な輸出先の一つである。日本は香辛料の消費大国であり、テーブルコショウから食品加工用まで幅広いグレードのベトナム産コショウを輸入している。
日本の食品業界への示唆
ベトナム産コショウのタイ市場独占という現象は、日本の食品関連企業にとってもいくつかの示唆を含んでいる。まず、ベトナムが世界のコショウ供給において圧倒的な支配力を持っている以上、日本のスパイスメーカーや食品加工企業にとって、ベトナムとの安定的な調達関係の維持は経営上の最重要課題の一つである。供給元の集中リスクを意識しつつも、品質と価格の両面でベトナム産に代わる選択肢は限られているのが実情だ。
また、タイの食品加工産業がベトナム産コショウに大きく依存しているという事実は、タイで加工された食品を輸入している日本企業にとっても、サプライチェーンの上流リスクとして認識すべきポイントとなる。ベトナムの天候不順や輸出規制といった事態が発生すれば、タイ経由で間接的に日本市場にも影響が波及する可能性がある。
今後の展望
ベトナム政府はコショウを含む農産物の輸出高付加価値化を国家戦略の一つに位置づけており、加工品(ホワイトペッパー、粉末コショウ、有機コショウなど)の輸出比率を高める方針を掲げている。単なる原料輸出国から、付加価値を取り込む加工輸出国への転換が進めば、ベトナムのコショウ産業はさらに競争力を強化することになるだろう。
一方で、コショウの国際価格が高止まりすれば、カンボジアやブラジルなど他産地の増産を促す可能性もある。ベトナムが「世界のコショウ王国」としての地位をどこまで維持・強化できるか、今後の動向から目が離せない。
出典: VN Express
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