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2026年3月16日(月)の国際金市場で、金のスポット価格は前週末比12.5ドル安の5,007.2ドル/オンスで取引を終えた。一時は心理的節目である5,000ドルを割り込み、約1カ月ぶりの安値を付ける場面もあったが、ドル安の進行に支えられ辛うじて大台を死守した。世界最大の金ETFであるSPDR Gold Trust(SPDRゴールド・トラスト)は0.9トンの売り越しとなり、2週連続の純売却が続いている。米国とイランの軍事衝突に端を発した原油高が「高インフレ・高金利の長期化」を意識させ、利息を生まない金にとって逆風となっている構図である。
金価格の動き——5,000ドル攻防の一日
ニューヨーク市場の取引終了時点で、金のスポット価格は5,007.2ドル/オンスとなり、前週末の終値から12.5ドル(0.24%)の下落であった。キトコ(Kitco)のデータによる。COMEX(ニューヨーク商品取引所)の2026年4月限の金先物も1.2%安の5,002.2ドル/オンスで引けている。
取引時間中には5,000ドルの大台を一時的に割り込み、約1カ月ぶりの安値水準を記録した。銀のスポット価格も一時、重要な節目の80ドル/オンスを下回る場面があったが、終値では0.17ドル高(+0.21%)の80.87ドル/オンスまで持ち直した。
金・銀がともに大台を維持できた最大の要因はドル安である。主要6通貨に対するドルの強さを示すドルインデックス(Dollar Index)は、この日0.54%下落し99.82ポイントで取引を終えた。前週末の金曜日には10カ月ぶりの高値を付け、週間では1.5%超の上昇を記録していたが、週明けは一転して調整が入った格好である。ドル建てで取引される金は、ドル安局面ではドル圏外の投資家にとって割安感が生まれるため、買い支えが入りやすい。
原油高と「高金利長期化」の連鎖——金の上値を抑える構図
市場の根底にあるテーマは、2026年2月28日に勃発した米国とイランの軍事衝突である。トランプ大統領はこの日、同盟国に対しホルムズ海峡を航行する船舶の防護を呼びかけた。ホルムズ海峡は世界の原油輸送の約2割が通過する要衝であり、同海峡の安全保障リスクは原油市場を直撃する。
この日のロンドン市場でブレント原油先物は下落したものの、終値では100ドル/バレルの大台を維持した。衝突前と比較すると約39%高い水準であり、年初来では60%超の上昇となっている。
原油高の長期化は、インフレ圧力を高め、中央銀行——とりわけ米連邦準備制度理事会(FRB、通称Fed)——が利下げに踏み切る余地を狭める。金は利息を生まない資産であるため、金利が高止まりする環境では保有コストが相対的に高くなり、投資妙味が薄れる。これが足元で金価格の上値を抑えている最大の要因である。
FOMC直前——市場が注目する「Fed の見通し」
こうした金利見通しの変化は、まさにFedの金融政策決定会合(FOMC)の直前に起きている。会合は火曜日に開幕し水曜日に結果が発表される予定で、今回はフェデラルファンド(FF)金利の据え置きがほぼ確実視されている。
市場の関心は金利そのものではなく、Fedが示す経済見通しと今後の利下げパス(経路)に集中している。半年前にはインフレ鈍化を背景に複数回の利下げが織り込まれていたが、原油高によるインフレ再加速を受けて、その期待は大幅に後退している。Fedがタカ派的なトーンを維持すれば、金にとってはさらなる逆風となる。
SPDR Gold Trust——2週連続の売り越し
世界最大の金ETFであるSPDR Gold Trustは、この日0.9トンの売り越しを行い、保有量は1,070.7トンに減少した。同ファンドは前週まで2週連続で純売却しており、その合計は29.4トンに上る。機関投資家やETFを通じた金保有の縮小は、金利環境の変化を反映した資金フローの変調を示している。
それでも「6,000ドル」を見据える強気派
一方で、金に対する強気な見方は根強い。RJOフューチャーズ(RJO Futures)のシニアストラテジスト、ボブ・ハーバーコーン氏はロイター通信に対し、次のように語った。
「原油高はインフレを押し上げ、中央銀行の利下げ意欲を半年前よりも後退させる。これは金には不利だ。しかし、世界で起きていることを考えれば、私は依然として金の上昇見通しに非常に楽観的である。市場に参入するタイミングを待っている大量の資金がまだ存在する。金価格は6,000ドル/オンスに達する可能性があると予想している」
地政学リスクの高まり、各国中央銀行による外貨準備の金シフト、そして世界的な財政拡張の流れは、中長期的には金価格を下支えする要因であり続ける。短期的な金利要因と中長期の構造的要因のせめぎ合いが、まさに5,000ドル前後の攻防として表れているといえよう。
アジア時間の動きとベトナムへの影響
3月17日朝(ベトナム時間6時15分)時点で、金スポット価格は5,006.7ドル/オンス(前日比0.5ドル安)、銀スポット価格は81.05ドル/オンス(同0.18ドル高)と、ほぼ横ばいで推移している。
ベトコムバンク(Vietcombank、ベトナム最大の国営商業銀行)のドル売りレートで換算した場合、金スポット価格は約1億5,880万ドン/ルオン(1ルオンは約37.5グラムに相当するベトナム独自の金計量単位)に相当する。同時点のベトコムバンクのドル為替レートは、買い26,051ドン、売り26,321ドンで、前日から買い・売りともに3ドンの上昇であった。
ベトナム国内の金市場は、国際価格との連動に加え、国内の需給やベトナム国家銀行(中央銀行)の金入札政策にも影響を受ける。足元では国際金価格の高騰を受けてベトナム国内の金価格も歴史的な高水準にあり、都市部を中心に金投資への関心が高まっている。
投資家・ビジネス視点の考察
今回のニュースは、直接的にはベトナム株式市場の個別銘柄を動かすものではないが、マクロ環境としてベトナム市場に複数の経路で影響を及ぼす。
第一に、原油高とインフレの波及である。ベトナムは原油の純輸出国から近年は純輸入国へ転じつつあり、原油価格の上昇は輸入コスト増を通じてインフレ圧力を高める。ベトナム国家銀行が利下げに慎重にならざるを得なくなれば、不動産セクターや銀行セクターにとってはマイナス材料となる。一方、ペトロベトナムガス(GAS)やペトロベトナム・ドリリング(PVD)など石油・ガス関連銘柄にとっては追い風が続く可能性がある。
第二に、ドル安・ドン高の恩恵である。ドルインデックスの低下はベトナムドンの安定に寄与し、海外からの資本流入を下支えする。2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げにとっても、為替の安定は重要な前提条件の一つである。格上げが実現すれば、パッシブファンドを中心に数十億ドル規模の資金流入が期待されるだけに、ドル環境の変化は注視すべきポイントである。
第三に、金価格高騰が消費行動に与える影響である。ベトナムでは「金」は資産保全の手段として広く浸透しており、金価格の高止まりは家計の消費マインドに微妙な影響を及ぼす。金に資金が滞留すれば、株式市場への個人投資家の資金流入が鈍化する可能性もある。
日本企業への示唆としては、ベトナムに生産拠点を置く製造業にとって、原油高に伴う物流コスト・原材料コストの上昇が利益を圧迫するリスクがある。為替面ではドン安リスクが後退する一方、円安が続く場合には本国送金時の為替差益が縮小する点にも留意が必要である。
総じて、地政学リスクと金利環境の不透明感は当面続く見通しであり、金の5,000ドル攻防とドルの方向感が、ベトナムを含むアジア新興国市場のセンチメントを左右する重要な変数であり続けるだろう。
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出典: 元記事












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