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ベトナム株式市場は地政学リスクや米中対立、世界的な高金利環境といった外部要因に繰り返しさらされてきた。その中で「急落後に素早く回復する銘柄」と「低迷が長引く銘柄」には明確な違いがある。ベトコムバンク・ファンドマネジメント(VCBF)のグエン・ズイ・アイン(Nguyễn Duy Anh)ポートフォリオマネジメント・ディレクター(CFA)が、テレビ番組「フォータイチン(Phố tài chính=金融街)」で語った市場見通しと投資戦略を詳報する。
歴史が示す「暴落と回復」のパターン
グエン・ズイ・アイン氏はまず、外部ショックによる市場の急変動は決して珍しい現象ではないと強調した。具体例として挙げたのは以下の3つである。
- 2008年の世界金融危機:リーマンショックを契機にベトナム市場も大幅下落した。
- 2018〜2019年の米中貿易摩擦:関税引き上げの応酬がアジア新興国市場全体を揺さぶった。
- 2020年のコロナショック:パンデミックによる世界同時株安。
とりわけ注目すべきは2020年の回復スピードである。VN-Indexはコロナショックの底値からわずか18カ月足らずで2倍以上に上昇した。これはベトナム経済と企業利益の回復力を如実に映し出した結果だ。
現在の市場環境——複合リスクへの対処が鍵
同氏は、現在の局面が過去と異なる点として「複数のリスク要因が同時に存在していること」を指摘した。地政学的な緊張、世界的に依然高水準にある金利、さらに一部資産が前期に大きく上昇した反動リスクが重なっている。これらが同時進行するため、市場は新たな情報に対して過敏に反応しやすい状態にある。
しかし同氏は「変動は市場の本質的な一部である。重要なのは経済のファンダメンタルズと企業の長期的な健全性に目を向けることだ」と冷静な姿勢を示した。
ベトナムのマクロ経済——3つのポジティブ要因
グエン・ズイ・アイン氏が挙げたベトナム経済の下支え材料は次の通りである。
- 公共投資の加速:政府はインフラ整備を積極的に推進しており、資金が経済全体に循環するとともに物流コストの低減にも寄与している。高速道路網の拡充や港湾整備など、大型プロジェクトが相次いで動いている。
- FDI(外国直接投資)の実行額が高水準を維持:サムスンやLGといった韓国系、さらには中国からの生産移転需要も継続しており、製造業を中心に実行ベースの投資が堅調である。
- 国内消費と観光の回復:コロナ後の消費リバウンドに加え、国際観光客の増加がサービス業を押し上げている。
加えて、ベトナム政府はVAT(付加価値税)の減税措置、扶養家族控除額の引き上げ、ビジネス環境の改善といった政策パッケージを展開中である。IMF(国際通貨基金)は、制度改革と効率的な公共投資が実現すれば、2030年までにベトナムのGDPをさらに2%押し上げる効果があると試算している。
一方で、ベトナムは貿易依存度(GDP比で約200%前後)が非常に高い「開放型経済」であるため、国際貿易の変動に影響を受けやすい構造的な脆弱性も抱えている。それでもマクロ全体の基盤は比較的安定していると同氏は評価した。
市場の耐性を高める3つの構造改革
VCBF幹部は、ベトナム株式市場そのものの「ショック耐性」を強化するために、以下の3点が重要だと提言した。
①市場の規模と深みの拡大
現在、ベトナム株式市場の時価総額は約10,000兆ドン(GDP比約85%)に達している。政府は翌年にはこれをGDP比100%に引き上げる目標を掲げており、株式市場を経済全体の主要な資金調達チャネルとして機能させる方針である。
②長期資金の呼び込み
機関投資家や外国人投資家による長期マネーの流入が増えれば、短期的な心理に左右される価格変動は抑制される。現状、ベトナム市場は個人投資家の売買比率が約8割と極めて高く、機関投資家の存在感を高めることが急務である。
③透明性とコーポレートガバナンスの向上
企業の情報開示が充実すれば、投資家はセンチメントではなくファンダメンタルズに基づいた投資判断を行えるようになる。これはFTSE(フッツィー・ラッセル)による新興市場指数への格上げ審査においても重要な評価項目となっている。
暴落局面で投資家が取るべき3つの行動
グエン・ズイ・アイン氏は、個人投資家が市場の急変動を乗り越えるための具体策として以下を挙げた。
第一に、ポートフォリオの分散。特定の銘柄やセクターに集中投資するリスクを避け、業種・時価総額・地域を分散させることが基本中の基本である。
第二に、ファンダメンタルズの優れた企業への投資。健全なバランスシート、安定したキャッシュフロー、長期的な競争優位性を備えた企業は、景気後退局面でも耐久力があり、回復期にはいち早く株価が戻る傾向がある。これが「急落後に回復する銘柄」の最大の共通点である。
第三に、長期的な視野を保つこと。歴史的に見れば、大幅調整の局面はしばしば最も魅力的な投資機会を提供してきた。短期の恐怖に支配されず、長期で資産形成を行う姿勢が、結果として大きなリターンを生む。
同氏は最後に次のように力強く述べた。「世界経済の過去100年を振り返ると、株式は他のすべての資産クラスと比較して最も高いリターンを生み出してきた。短期的な下落はあっても、長期投資であれば確実に良いリターンを投資家にもたらす」。
投資家・ビジネス視点の考察
今回のVCBF幹部の発言は、ベトナム市場における「質の高い銘柄への長期投資」の有効性を改めて裏付けるものである。日本の投資家にとって、以下の点が特に重要だ。
①FTSE新興市場指数格上げとの関連:2025年9月のFTSE分類見直しでベトナムがセカンダリー・エマージング市場に格上げされれば、数十億ドル規模のパッシブ資金流入が見込まれる。格上げに向けた透明性向上やガバナンス改善は、まさに今回同氏が提言した構造改革と方向性が一致しており、格上げが実現すれば長期資金の流入が市場の安定性を大幅に高める好循環が期待できる。
②注目セクターと銘柄特性:同氏の言う「健全な財務・安定キャッシュフロー・長期競争優位」を備えた銘柄群としては、大手商業銀行(VCB=ベトコムバンク、BID=BIDVなど)、生活必需品(VNM=ビナミルク)、IT・テクノロジー(FPT=FPTコーポレーション)などが候補に挙がる。公共投資拡大の恩恵を受けるインフラ・建設関連も中長期で注視すべきである。
③日本企業への示唆:ベトナムのFDI実行額が高水準を維持している背景には、中国+1戦略やサプライチェーン再編がある。日系製造業にとって、ベトナムの安定したマクロ基盤は引き続き進出先としての魅力を高めている。一方で、グローバル貿易摩擦の激化はベトナム経由の輸出にも影響しうるため、関税動向には注意が必要である。
④VN-Indexの位置づけ:VN-Indexは2024年後半から方向感を欠く動きが続いているが、GDP比85%という時価総額はまだ成長余地が大きい。政府が掲げる100%目標が達成に向かう過程で、新規上場やIPOの活発化が市場全体の底上げにつながる可能性がある。
総じて、短期の変動に惑わされず、ベトナム経済のファンダメンタルズと個別企業の競争力を冷静に見極める姿勢が、最も合理的な投資アプローチであると言えるだろう。
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