ベトナム・ダナン市で架空請求書の大規模売買が発覚—企業経営者6名を起訴、数十億ドン規模の脱税スキームの全容

Đà Nẵng: Nhiều chủ doanh nghiệp bị khởi tố vì mua bán hóa đơn trái phép
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ベトナム中部の主要都市ダナン市で、付加価値税(VAT)の架空請求書を大規模に売買していた企業経営者ら6名が相次いで起訴された。総額は数十億ドン規模に達し、請求書ブローカーや幽霊会社を駆使した巧妙な脱税スキームの実態が明らかになりつつある。ベトナムの税務・投資環境の透明性に直結する問題として、日本の投資家・進出企業にとっても注目すべき事案である。

目次

事件の概要:3日間で4件立件、6名を起訴

ダナン市公安局長の指示のもと、同市経済犯罪捜査課は2026年3月13日から15日にかけて、わずか3日間で4件の刑事事件を立件した。同時に起訴された被疑者は以下の6名である。

  • T.T.M — 「プロフェッショナル・カラーズ観光イベント有限会社」取締役(アンハイ区所在)
  • V.T.L — 「ダットクアン建設・貿易・運輸有限会社」取締役(ディエンバン区所在)
  • Đ.T.M.T — 「ムオイ・ミンタム私営企業」代表(アンタン区所在)
  • T.V — 「ホアンナム建設・貿易・サービス有限会社」取締役(ディエンバンドン区所在)
  • L.T.M.N(1973年生、ダナン市アンハイ区在住)— ブローカー
  • Đ.Đ.C — ブローカー

容疑は「国家予算に係る請求書・証憑の違法売買」である。ベトナム刑法においてこれは経済犯罪に分類され、規模によっては重い刑事罰が科される。

スキームの全容:なぜ架空請求書が必要だったのか

捜査によると、上記の企業群は事業運営の過程で、運送サービスの支払い、電気・水道関連資材の購入、建設現場の資材調達、コンクリート打設用機材のリースなど、さまざまな実費を支出していた。しかし、これらの支出に対応するVAT請求書(ホアドン=hóa đơn)を正規に取得していなかった。

ベトナムの税制では、企業が仕入れにかかるVATを申告・控除するためには、正規のVAT請求書が必須となる。請求書がなければ、仕入税額控除が認められず、結果としてVAT負担が増大する。さらに法人所得税(CIT)の計算においても、正規請求書のない支出は損金として認められない。

こうした「請求書の欠如」を解決するため、被疑者らは仲介ブローカーと結託し、数百枚にのぼる架空のVAT請求書を購入した。総額は数十億ドンに達し、請求書の購入手数料は税抜き金額の6〜10%であった。つまり、1億ドンの架空請求書を手に入れるために600万〜1,000万ドンを支払う構図である。

巧妙な手口:幽霊会社と資金洗浄テクニック

この事件で注目すべきは、犯行の巧妙さである。捜査当局が確認した手口は以下の通りだ。

1. 幽霊会社(ペーパーカンパニー)の利用
ダットクアン社、ムオイ・ミンタム企業、ホアンナム社に対して請求書を発行していた「売り手」企業は、実態として書類上のみ存在する幽霊会社であった。登記上の住所には実際の事業所がなく、倉庫も在庫も存在せず、すでに所在地を放棄していた。ベトナムでは法人設立が比較的容易であることから、この種のペーパーカンパニーが脱税スキームに悪用されるケースは後を絶たない。

2. 個人口座を使った資金フローの偽装
被疑者らは法人口座ではなく個人の銀行口座を使い、請求書の金額に見合った送金を行うことで、あたかも実際の商取引が存在したかのように見せかけていた。

3. 請求書金額の分割(2,000万ドン未満への細分化)
ベトナムの規定では、一定金額以上の取引は銀行振込による決済が義務付けられている。この規制を回避するため、1枚あたりの請求書金額を2,000万ドン未満に分割する手口が使われていた。これにより、現金取引でも税務当局の監視を逃れることが可能になる。

4. 仲介ブローカーの暗躍
起訴された6名のうち、L.T.T.NとĐ.Đ.Cは「請求書ブローカー(コー・ホアドン)」として活動していた人物である。大元の請求書供給元(いわゆる「元締め」)と企業経営者の間を取り持ち、税抜き金額の1%を仲介手数料として受け取っていた。ベトナムではこうした「コー」(ブローカー)の存在が、不動産、株式、行政手続きなどさまざまな場面で見られるが、請求書取引においても組織的なネットワークが形成されていることが今回の事件で浮き彫りとなった。

ダナン市の現状:繰り返される警告にもかかわらず横行する違法取引

ダナン市公安局は、これまでも架空請求書の売買について繰り返し警告を発してきた。しかし、同市においてはVAT請求書や売上請求書の違法売買が依然として広く行われており、その手口はますます巧妙化しているという。

ダナン市はベトナム中部最大の経済都市であり、建設・観光・貿易が主要産業である。特に建設業では、日雇い労働者への支払いや小規模資材業者からの仕入れなど、正規の請求書を取得しにくい取引が構造的に多い。このことが、架空請求書への需要を生む土壌となっている。

捜査当局は現在も捜査を拡大中であり、近年摘発された他の架空請求書売買ネットワークとの関連についても、関与が疑われる企業・個人の特定を進めている。当局は企業・個人に対し、事業活動における法令遵守を徹底し、請求書の違法売買や経費の架空計上を絶対に行わないよう強く呼びかけている。

投資家・ビジネス視点の考察

ベトナム税務環境の透明化と市場への影響
今回の事件は、ベトナム当局が税務コンプライアンスの厳格化に本腰を入れていることを改めて示すものである。2023年以降、ベトナム政府は電子請求書(e-invoice)の全面導入を推進しており、紙ベースの請求書偽造や架空取引の検出精度は格段に向上している。今回の一斉摘発も、こうしたデジタル化の成果が背景にあると見られる。

日本企業への示唆
ベトナムに進出している日系企業にとって、サプライチェーン上の取引先が架空請求書に関与していた場合、自社も巻き込まれるリスクがある。特に建設・製造業では、下請け業者の請求書管理が甘いケースが散見されるため、取引先のデューデリジェンスと請求書の真正性確認が不可欠である。ベトナムの税務調査は近年ますます精緻化しており、「知らなかった」では済まされない状況になりつつある。

FTSE新興市場指数への格上げとの関連
2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナムの格上げにおいて、市場の透明性やガバナンスの質は重要な評価項目となる。税務不正の取り締まり強化は、ベトナム政府が市場の信頼性向上に向けて具体的なアクションを取っている証左であり、格上げの追い風材料と捉えることができる。一方で、こうした摘発が相次ぐこと自体が、依然として不正が蔓延している実態を浮き彫りにしている面もあり、投資家としてはベトナム市場のガバナンスリスクを引き続き注視する必要がある。

中小企業セクターへの影響
ベトナムの中小企業は全企業数の約97%を占めるとされるが、今回のように税務処理の不備や不正に手を染めるケースは構造的な課題である。政府が取り締まりを強化すればするほど、コンプライアンスコストの増大に耐えられない零細企業の淘汰が進む可能性がある。中長期的には市場の健全化につながるが、短期的には一部セクターで混乱が生じる可能性にも留意すべきである。


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出典: 元記事

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