ベトナム暗号資産取引所ONUS背後の企業に当局が調査—HVA GroupとEric Vuong氏の関係とは

Cơ quan chức năng làm việc với công ty 'đứng sau' sàn tiền số ONUS
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ベトナムで広く利用されてきた暗号資産(仮想通貨)取引プラットフォーム「ONUS」の運営に深く関与してきた企業グループに対し、ベトナムの関係当局が本格的な調査に乗り出した。ONUSの戦略パートナーであるHVA Groupを率いるEric Vuong(エリック・ヴォン)氏は、現在当局に対して情報を提供していることを認めた。ベトナムにおける暗号資産規制の行方を占ううえで、極めて重要な動きである。

目次

ONUSとは何か——ベトナム最大級の暗号資産プラットフォーム

ONUS(オーヌス)は、ベトナム国内で最も知名度の高い暗号資産取引プラットフォームの一つである。スマートフォンアプリを中心に、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)をはじめとする主要な暗号資産の売買サービスを展開し、若年層を中心としたベトナム人ユーザーから高い支持を集めてきた。ベトナムは東南アジアの中でも暗号資産の利用率が特に高い国として知られており、ブロックチェーン分析企業チェイナリシス(Chainalysis)のグローバル暗号資産採用指数でも常に上位にランクインしている。こうした市場環境の中で、ONUSは「ベトナム発の仮想通貨取引所」としてブランドを確立してきた。

HVA GroupとEric Vuong氏——「背後にいる企業」の実態

今回の報道で焦点となっているのは、ONUSの「戦略的パートナー」を自称するHVA Groupという企業グループである。同グループはEric Vuong(エリック・ヴォン)氏が率いており、ONUSの運営や事業展開において重要な役割を果たしてきたとされる。「đứng sau(背後にいる)」というベトナム語の表現が記事タイトルに使われていることからもわかるように、HVA Groupは表向きの運営主体とは別に、実質的にONUSの経営・戦略に深く関与してきた存在とみられている。

HVA Group側は、ベトナムの「機能当局(cơ quan chức năng)」――これは公安省(ベトナムの警察・治安機関)や情報通信省、あるいは国家銀行(中央銀行)など複数の政府機関を含む可能性がある――との間で、暗号資産取引所に関する情報提供を行っていることを公式に認めた。この「情報提供」が任意の協力なのか、あるいは強制的な捜査の一環なのかについては現時点で明確になっていないが、当局が暗号資産プラットフォームの運営実態に踏み込んだ調査を行っている事実は確かである。

ベトナムにおける暗号資産規制の現状と変遷

ベトナムの暗号資産をめぐる法制度は、長らく「グレーゾーン」の状態が続いてきた。ベトナム国家銀行(SBV、中央銀行に相当)は2018年以降、暗号資産を「合法的な決済手段として認めない」という立場を明確にしているが、暗号資産の保有や売買そのものを明確に禁止する法律は存在しなかった。つまり、「決済には使えないが、資産として保有・取引すること自体は違法ではない」という曖昧な状態が継続してきたのである。

しかし近年、ベトナム政府は暗号資産に関する法整備を急速に進めつつある。2024年にはグエン・フー・チョン書記長(当時)のもとで金融犯罪への取り締まり強化が打ち出され、暗号資産を利用したマネーロンダリングや詐欺事件への対処が重要課題として浮上した。2025年以降もこの流れは加速しており、政府は暗号資産取引所に対するライセンス制度の導入や、本人確認(KYC)義務の厳格化、資金洗浄防止(AML)に関する新たな枠組みの構築を検討している。

今回のONUSに対する調査は、こうした規制強化の流れの中で発生したものであり、ベトナム当局が「国内で活動する暗号資産プラットフォームの運営実態を把握し、法的枠組みに組み込む」という強い意志を持っていることを示すものといえる。

なぜ「背後の企業」が問題になるのか

ベトナムでは、テクノロジー関連のスタートアップやフィンテック企業が、複数のペーパーカンパニーや関連企業を通じて事業を運営するケースが少なくない。特に暗号資産業界では、規制の不透明さゆえに、運営主体を意図的に分散させたり、海外法人を介して資金の流れを複雑化させたりする傾向がある。ONUSのケースにおいても、表向きの運営会社とは別にHVA Groupが「戦略パートナー」として実質的な経営に関与していた構図が、当局の関心を引いた可能性が高い。

こうした企業統治(ガバナンス)の不透明性は、ベトナムの金融市場全体にとっても重要な課題である。上場企業においても、オーナー家族やグループ企業間の不透明な取引が問題視されることがあり、2022年のFLCグループ事件やヴァンティンファット(Vạn Thịnh Phát)グループ事件では、不正会計や市場操作によって多くの投資家が損害を被った。暗号資産の分野でも、同様の不透明な企業構造が消費者保護やマネーロンダリング対策の観点からリスクとみなされている。

Eric Vuong氏の経歴と役割

Eric Vuong氏は、ベトナムのテクノロジー・金融業界で一定の知名度を持つ人物である。HVA Groupの代表として暗号資産やブロックチェーン関連の事業を主導してきたとされ、ONUSの成長期において戦略面でのアドバイスや資金面での支援を行ってきたとみられている。同氏が当局に対して積極的に情報提供を行っていることを公表した背景には、協力的な姿勢を見せることで法的リスクを軽減する狙いがあると考えられる。ただし、捜査の詳細や対象範囲については現時点で公開されていない。

投資家・ビジネス視点の考察

今回のONUS/HVA Group調査は、ベトナムの金融市場および暗号資産業界に対して複数の重要なインプリケーションを持つ。

1. ベトナム株式市場への直接的な影響は限定的だが、間接的な影響に注意
ONUSは非上場のプラットフォームであり、HVA Groupも上場企業ではないため、ホーチミン証券取引所(HOSE)やハノイ証券取引所(HNX)に上場する個別銘柄への直接的な影響は限られる。しかし、暗号資産関連の規制強化はフィンテックセクター全体に対する投資家心理に影響を与える可能性がある。FPT(ベトナム最大のIT企業)やViettel系列のテクノロジー企業など、ブロックチェーン技術やデジタル金融に関連する銘柄の動向には注意が必要である。

2. ベトナムの金融規制透明化はFTSE格上げ議論にプラス
2026年9月に最終決定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げに向けて、市場の透明性やガバナンスの向上は極めて重要な評価ポイントである。暗号資産を含む金融市場全般で当局が不正や不透明な運営に対して毅然とした姿勢を示すことは、国際的な投資家に対して「ベトナムは規制の質を高めている」というシグナルとなりうる。FTSE格上げが実現すれば、数十億ドル規模のパッシブ資金がベトナム市場に流入する可能性があるだけに、この文脈での規制強化はむしろポジティブに評価される面もある。

3. 日本企業・日本人投資家への示唆
ベトナムに進出している日本のフィンテック企業やブロックチェーン関連企業にとって、今回の動きは現地の規制環境を再点検する契機となるだろう。ベトナム政府が暗号資産取引所のライセンス制度や運営基準を明確化する方向に向かっているのであれば、コンプライアンス体制を整備した上で正規に参入するチャンスが生まれる可能性もある。一方で、規制の不確実性が残る段階での安易な進出にはリスクが伴う。ベトナムでの金融事業を検討する日本企業は、現地の法律事務所やコンサルティングファームとの密接な連携が不可欠である。

4. ベトナム経済全体のトレンドにおける位置づけ
ベトナムはデジタルエコノミーの急成長期にあり、電子決済やデジタルバンキングの普及が加速している。Momo(モモ)、ZaloPay(ザロペイ)、VNPay(ヴイエヌペイ)といったフィンテックプラットフォームが日常生活に浸透する中、暗号資産もまた「デジタル資産」として若い世代を中心に高い関心を集めている。今回の調査は、こうしたデジタル金融の急拡大に対して、政府が「規制の遅れ」を取り戻そうとしている動きの一環として理解すべきである。規制が整備されれば、むしろベトナムのデジタル金融エコシステム全体の信頼性が高まり、中長期的な成長基盤が強化される可能性がある。


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出典: 元記事

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