ベトナム、稼働40年超の石炭火力発電所を閉鎖へ—水素・アンモニア転換できなければ撤退も

Nhà máy điện than trên 40 năm không chuyển đổi nhiên liệu có thể bị đóng cửa
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ベトナム政府が、稼働年数40年を超える老朽化した石炭火力発電所について、水素やグリーンアンモニアなどクリーン燃料への転換が不可能な場合、閉鎖に向けた交渉を進める方針を打ち出した。東南アジア有数の石炭火力依存国であるベトナムにとって、エネルギー転換の本気度を示す大きな政策転換である。

目次

政策の概要——「転換か、閉鎖か」の二択

ベトナム政府は、稼働開始から40年以上が経過した石炭火力発電所に対し、水素(hydrogen)やグリーンアンモニア(amoniac xanh)といったクリーン燃料への転換を求める方針を明確にした。転換が技術的・経済的に困難と判断された場合には、発電事業者との交渉を通じて段階的に閉鎖へ導くことになる。

ベトナムでは現在、電源構成に占める石炭火力の比率が依然として高い。2023年時点で総発電量の約30〜35%を石炭火力が担っており、経済成長に伴う電力需要の急増を下支えしてきた。北部のクアンニン省(Quảng Ninh)やハイフォン市(Hải Phòng)、南部のビントゥアン省(Bình Thuận)などには大規模な石炭火力発電所が集積している。その中には、1980年代以前に旧ソ連の技術支援で建設された老朽プラントも含まれており、設備効率の低さや環境負荷の大きさが長年の課題であった。

背景にある国際的な脱炭素圧力とJETP

この政策の背景には、ベトナムが2021年のCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)で表明した「2050年までのカーボンニュートラル達成」という国際公約がある。また、2022年12月にはG7諸国や欧州連合(EU)などとの間で「公正なエネルギー転換パートナーシップ(JETP:Just Energy Transition Partnership)」が締結され、155億ドル規模の資金動員が約束された。JETPでは石炭火力の早期廃止が主要テーマとなっており、今回の閉鎖方針はこのJETPのロードマップに沿ったものと見られる。

日本もJETPの主要な資金拠出国の一つであり、JICA(国際協力機構)や民間企業を通じたベトナムのエネルギー転換支援に深く関与している。特に、日本が得意とするアンモニア混焼技術や水素サプライチェーン構築は、ベトナム側が求める「既存石炭火力の燃料転換」に直結する技術分野である。IHIや三菱重工業、JERA(東京電力と中部電力の合弁)といった日本企業が、ベトナムの石炭火力発電所における混焼実証プロジェクトに参画しており、今後の事業拡大が期待される局面にある。

水素・グリーンアンモニアへの転換は現実的か

ただし、水素やグリーンアンモニアへの燃料転換には多くの課題が残る。第一に、グリーン水素やグリーンアンモニアの製造コストは依然として高く、大規模な商業利用に至っていない。第二に、既存の石炭火力ボイラーをアンモニア混焼・専焼に対応させるための改修費用は膨大であり、稼働40年超の老朽設備にこうした投資を行う経済合理性があるかは疑問が残る。第三に、水素やアンモニアの輸送・貯蔵インフラがベトナム国内に整備されておらず、サプライチェーンの構築には相当な時間と投資が必要である。

こうした現実を踏まえると、稼働40年超の最も古い発電所群については、転換よりも閉鎖が現実的な選択肢となる可能性が高い。政府としても、交渉による「秩序ある退出」を促すことで、電力供給への影響を最小限に抑えつつ、脱炭素への国際的なコミットメントを履行する狙いがある。

電力供給への影響——代替電源の整備が急務

ベトナムは近年、電力不足に悩まされてきた。2023年には北部を中心に深刻な電力危機が発生し、工場の操業停止や計画停電が相次いだ。石炭火力の閉鎖を進めるにあたっては、代替電源の確保が最重要課題となる。

ベトナム政府が2023年5月に承認した「第8次国家電力開発計画(PDP8)」では、2030年までに風力・太陽光を中心とした再生可能エネルギーの導入を大幅に拡大する方針が示されている。特に洋上風力発電はベトナムの長い海岸線を活かした有望分野であり、デンマークのオーステッドや日本の住友商事、丸紅など国内外の企業が事業参入を検討している。LNG(液化天然ガス)火力発電の新設も進められており、タイビン省(Thái Bình)やバリア・ブンタウ省(Bà Rịa – Vũng Tàu)でLNG受入基地の建設が進行中である。

投資家・ビジネス視点の考察

今回の政策方針は、ベトナム株式市場および関連銘柄に複数の影響を及ぼし得る。

【石炭火力関連企業への影響】
ベトナムの上場企業の中では、ペトロベトナム・パワー(PV Power、コード:POW)やベトナム電力グループ(EVN)傘下の発電子会社が石炭火力発電所を運営している。老朽プラントの閉鎖は短期的には発電容量の減少につながるが、中長期的にはクリーンエネルギーへのポートフォリオ転換を促す追い風ともなり得る。POWはすでにLNG火力やガスタービン発電へのシフトを進めており、こうした動きが加速する可能性がある。

【再生可能エネルギー・LNG関連銘柄】
石炭火力の縮小は、再生可能エネルギー関連やLNG関連企業にとって追い風である。ペトロベトナム・ガス(GAS)はLNGバリューチェーンの中核を担う企業であり、LNG火力の拡大は同社の成長ストーリーを後押しする。また、風力・太陽光発電に参入する企業群(BCG Energy、PC1など)にも注目が集まるだろう。

【日本企業への影響とビジネス機会】
前述の通り、アンモニア混焼・水素技術分野では日本企業が世界的に先行している。ベトナムが本格的に石炭火力の燃料転換を進めるならば、IHI、三菱重工業、JERA、住友商事などにとって大きなビジネス機会が生まれる。また、老朽プラントの解体・リプレース需要も発生する可能性があり、エンジニアリング企業にとっても商機となり得る。

【FTSE新興市場指数への格上げとの関連】
2026年9月に判断が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げにおいては、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みも市場の成熟度を示す要素の一つとして注目される。脱炭素政策の推進は、国際的な機関投資家からの評価を高める要因となり、格上げに向けたポジティブなシグナルと解釈できる。格上げが実現すれば、数十億ドル規模の海外資金流入が見込まれるだけに、こうした政策面での進展は市場全体にとっても重要な意味を持つ。

【ベトナム経済全体のトレンドにおける位置づけ】
ベトナムは「世界の工場」としての地位を急速に高めているが、その一方で、サプライチェーンのグリーン化を求める欧米のバイヤーや投資家からの圧力も強まっている。EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)の本格導入を控え、製造業の電力源がクリーンかどうかは、ベトナムの輸出競争力にも直結する問題である。石炭火力の段階的廃止は、短期的なコスト増をもたらす可能性があるものの、中長期的にはベトナムの国際競争力を維持・強化するための不可欠な投資と位置づけられる。


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出典: 元記事

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