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ベトナム中部の主要都市ダナン(Đà Nẵng)が、2026年の観光需要喚起に向けた大型キャンペーン「ダナン──原点に触れる(Đà Nẵng – Chạm về Nguyên Bản)」を正式に発表した。地政学リスクや気候変動で世界の旅行者の嗜好が大きく変化するなか、「深い体験」と「本物の価値」を前面に打ち出す戦略は、ダナンの観光産業のみならず、ベトナム経済全体の成長トレンドを読む上でも注目に値する。
記者会見の概要——MICE 2026プログラムも同時発表
2026年3月24日午後、ダナン市内のアリヤナ国際会議宮殿(Cung Hội nghị Quốc tế Ariyana Đà Nẵng)において、ダナン市観光局(Sở Du lịch thành phố Đà Nẵng)が記者会見を開催し、観光客誘致のための需要喚起プログラムおよび「MICE 2026」プログラムを公表した。MICEとは「Meeting(会議)・Incentive(報奨旅行)・Convention(大会)・Exhibition(展示会)」の頭文字で、ビジネス観光の柱となる分野である。ダナンはベトナム国内でもMICE誘致に最も積極的な都市の一つであり、今回の発表はレジャー観光とビジネス観光の両輪を同時に強化する狙いがある。
キャンペーンの背景——変わる世界の旅行者心理
記者会見で登壇したダナン市文化・スポーツ・観光局副局長のグエン・ティ・ホアイ・アン(Nguyễn Thị Hoài An)氏は、2026年の世界観光が「深い転換期」に入っていると強調した。中東における地政学的緊張の継続、そして年々激化する異常気象が、旅行者の心理と行動を根本から変えつつあるという。
同氏によれば、現代の旅行者はもはや「行って見るだけ」の旅行を求めていない。心のバランス、安らぎ、そして旅先との「本物のつながり」を渇望している。旅の価値は風景だけでなく、感情に触れ、土地のアイデンティティを呼び覚まし、長く心に残る余韻をもたらす力にある——。こうした認識のもと、ダナン市は従来のビーチリゾート路線から一歩進み、「体験の深さ」で差別化を図る方針を鮮明にした。
5つの「タッチポイント」——感情に訴える体験設計
キャンペーンの核となるのは、旅行者の五感を呼び覚ます5つの「タッチポイント(điểm chạm)」で構成された体験プログラムである。それぞれの内容を詳しく見ていこう。
①「アイデンティティに触れる(Chạm về Bản sắc)」——伝統工芸村での文化体験
タンハー(Thanh Hà)陶器村、キンボン(Kim Bồng)木工村、チャークエ(Trà Quế)野菜・ハーブ村など、ダナン近郊の伝統工芸村を巡るプログラムである。旅行者は精緻な手工芸品の製作過程を見学するだけでなく、現地の職人(nghệ nhân)から直接、その土地に根差した文化の物語を聞くことができる。なお、タンハー陶器村はホイアン(Hội An=ダナンの南約30kmに位置するユネスコ世界遺産の古都)に近接しており、日本人観光客にも馴染み深いエリアである。
②「静寂に触れる(Chạm về Tĩnh lặng)」——ウェルネス&スピリチュアル体験
五行山(Ngũ Hành Sơn=マーブルマウンテンとも呼ばれる、大理石の5つの山からなる景勝地)やタムタイ寺(chùa Tam Thai)を舞台に、瞑想ツアー、茶道体験、ハーブ療法などを提供する。近年、世界的に「ウェルネスツーリズム」市場は急成長しており、グローバル・ウェルネス・インスティテュート(GWI)の推計によれば、その市場規模は年間1兆ドルを超える。ダナンがこの分野に本格参入する意義は大きい。
③「原生に触れる(Chạm về Nguyên sơ)」——自然探索アドベンチャー
ソンチャ半島(bán đảo Sơn Trà=ダナン市街地からわずか10kmの距離にある自然保護区で、絶滅危惧種のアカアシドゥクラングールが生息)、クーラオチャム(Cù Lao Chàm=ユネスコ生物圏保護区に指定された島嶼群)、さらに山岳地帯のタイザン(Tây Giang=クアンナム省西部の少数民族コトゥ族が暮らす高地)を舞台としたトレッキング、SUP(スタンドアップパドルボード)、薬草探索などのアクティビティを展開する。都市近郊にこれほど多様な自然環境を持つ点は、ダナンの大きな競争優位である。
④「瞬間に触れる」——イベント&フェスティバル体験
ダナンでは毎年、国際花火大会(DIFF)をはじめ大型イベントが開催されており、これらを「記憶に残る瞬間」として観光体験に組み込む。MICEプログラムとの連携もここに位置づけられる。
⑤「味覚に触れる(Chạm về Vị giác)」——クアン地方の食文化体験
クアン地方(xứ Quảng=ベトナム中部のクアンナム省・ダナン市一帯を指す歴史的名称)の郷土料理を堪能するガストロノミーツアーである。ミークアン(小麦麺の汁なし料理)やバインチャン(ライスペーパー)など、中部ならではの食文化を、地元の料理人や職人と交流しながら体験できる。フードツーリズムは近年アジア全域で人気が高まっており、ダナンの食文化は日本人旅行者からの評価も極めて高い分野である。
投資家・ビジネス視点の考察
今回のキャンペーンは単なる観光プロモーションにとどまらず、ベトナム経済・株式市場を分析する上でも複数の示唆を含んでいる。
1. 観光関連銘柄への追い風
ダナンはホーチミン証券取引所(HOSE)およびハノイ証券取引所(HNX)に上場する複数の観光・ホテル・航空関連企業の事業エリアである。たとえば、ダナン国際空港の旅客数増加はベトジェットエア(VJC)やベトナム航空(HVN)の中部路線収益に直結する。また、サンワールド・バーナーヒルズを運営するサングループなど、ダナンに大型リゾートを展開するデベロッパーにとっても、MICEを含む高付加価値観光の拡大はプラス材料となる。
2. ウェルネス・体験型観光は高単価セグメント
「見るだけの観光」から「深い体験」への転換は、一人当たり観光消費額の引き上げに直結する。ダナン市が意図的にウェルネスやガストロノミーを前面に出している背景には、量(旅行者数)だけでなく質(消費単価)で観光収入を伸ばす戦略がある。これはベトナム政府が掲げる「2030年までに観光をGDP比で10%以上の基幹産業に育てる」という国家目標とも整合する。
3. 日本企業・日本人投資家への含意
ダナンは日本のODA(政府開発援助)によるインフラ整備が進んだ都市であり、日系企業の進出も多い。日本からの直行便も複数運航されており、観光需要の拡大は日系ホテルチェーンや旅行代理店にとってもビジネスチャンスとなる。また、ダナン周辺では不動産開発が活発で、観光インフラの拡充は中長期的に不動産価格にもプラスに作用する可能性がある。
4. FTSE新興市場指数への格上げとの関連
2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げが実現すれば、海外機関投資家の資金流入が加速する。観光産業の高度化・多角化は、ベトナム経済の「質的成長」を示す好材料であり、格上げ審査においてもポジティブな文脈で語られる可能性がある。観光収入の増加は経常収支の改善にも寄与するため、マクロ経済の安定という観点からも無視できない。
総じて、ダナンの今回のキャンペーンは「体験の深さ」で世界の旅行者を引きつけようとする意欲的な試みである。ポストコロナの観光業界がまさに「量から質へ」と転換するタイミングにおいて、ダナンがベトナムの観光先進都市としてどこまでブランド力を高められるか、引き続き注視したい。
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