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ベトナム国内の金価格が異常な急騰を見せている。3月24日・25日のわずか2営業日で、SJC金塊(ベトナム政府公認の金地金ブランド)は買い・売りともに900万ドン/ルオン(約37.5グラム)の上昇を記録。純度99.99%の指輪金(いわゆる「4 số 9」)に至っては、ブランドによって890万〜1,130万ドン/ルオンもの値上がりとなった。21日・23日の急落分を完全に取り戻す「V字回復」であり、ベトナムの金市場は依然として激しいボラティリティの渦中にある。
SJC金塊:主要販売店が一斉に175万ドン/ルオン台へ
3月25日午前11時時点で、SJC社、DOJI(ベトナム大手宝飾・金取引企業)、PNJ(フーニュアンジュエリー、ホーチミン証券取引所上場)、バオティン・ミンチャウ、バオティン・マンハイ、フークイー、ゴックタムといった主要金販売企業が軒並み、SJC金塊の取引価格を買い1億7,200万ドン〜売り1億7,500万ドン/ルオンに設定した。前日24日の終値と比較すると、1日だけで480万ドン/ルオンの上昇である。
ホーチミン市の有力販売店ミーホンも売値を1億7,500万ドン/ルオンに設定。ただし買値は1億7,250万ドン/ルオンとやや高めで、前日比でそれぞれ430万ドン、480万ドンの上昇となった。
2日間の累計で見ると、SJC金塊の上昇幅は大半の販売店で900万ドン/ルオン。特にDOJIでは累計1,120万ドン/ルオンという突出した値上がりを記録している。
指輪金(99.99%純度):ブランド間で最大1,130万ドンの上昇
SJC金塊と同様の上昇トレンドが、指輪金市場でも顕著に表れた。25日午前の取引では、各ブランドとも400万〜490万ドン/ルオンの値上がりを記録。2日間の累計上昇幅は890万〜1,130万ドン/ルオンに達した。
具体的な各社の動きは以下の通りである。
SJC社:朝の開場時に買い1億7,150万〜売り1億7,450万ドン/ルオンで取引を開始し、450万ドン/ルオンの上昇。開場からわずか30分で更に30万ドン/ルオンを上乗せし、最終的に買い1億7,180万〜売り1億7,480万ドン/ルオンとなった。前日比では480万ドン/ルオンの上昇である。
DOJI:「トロン9999フンティンブオン」ブランドの指輪金を買い1億7,170万〜売り1億7,470万ドン/ルオンで開始(450万ドン上昇)。約1時間後に30万ドンを追加し、買い1億7,200万〜売り1億7,500万ドン/ルオンに到達した。
フークイー:同じく買い1億7,200万〜売り1億7,500万ドン/ルオンを提示。午前中に2度の連続値上げを経て、前日比480万ドン/ルオンの上昇で午前の取引を終えた。
PNJ:午前11時時点で買い1億7,190万〜売り1億7,490万ドン/ルオン。前日比490万ドン/ルオンの上昇となった。
バオティン・ミンチャウおよびバオティン・マンハイ:この2社は市場で最も高い売値を提示。開場時に450万ドン/ルオン上昇して買い1億7,220万〜売り1億7,520万ドン/ルオンとし、さらに約1時間後に30万ドンを追加。最終的に買い1億7,250万〜売り1億7,550万ドン/ルオンとなり、SJC金塊の売値をも上回る水準に達した。前日比では480万ドン/ルオンの上昇である。
ゴックタム(ホーチミン市):買い1億6,300万〜売り1億6,700万ドン/ルオンを提示。前日比400万ドン/ルオンの上昇にとどまり、市場全体と比べると上昇幅は最も小さい。売値も他社より大幅に低く、地域間・ブランド間の価格差が鮮明になっている。
背景:国際金価格の急反発と国内プレミアムの拡大
今回の国内価格急騰の直接的な要因は、国際金価格の急反発である。3月24日の国際市場では、金スポット価格が約1.5%上昇し、4営業日連続の下落に終止符を打った。25日午前11時時点ではさらに2.1%超の上昇を記録し、1オンス=4,567.8ドルの水準に到達している。
注目すべきは、国内金価格と国際価格の乖離(プレミアム)の大きさである。ベトコムバンク(ベトナム最大の国有商業銀行)の為替レート(税・手数料込み)で換算すると、SJC金塊と国際価格の差は約2,836万ドン/ルオンに達する。指輪金についてはブランドにより2,036万〜2,886万ドン/ルオンと幅がある。このプレミアムの高さは、ベトナム国内の金需要の根強さと、金輸入に対する規制(ベトナム国家銀行による金塊の独占的供給体制)に起因するものである。
ベトナムでは歴史的に金が「安全資産」として強く支持されており、不動産取引や婚礼の贈答品としても広く使われる。特に2024年以降、世界的な地政学リスクの高まりや主要中央銀行の金準備積み増しを背景に、国際金価格は歴史的高値圏での推移を続けている。ベトナム国内でもドン安懸念やインフレ期待と相まって、金への資金流入が加速してきた。
21日・23日には「暴落」と表現されるほどの急落が発生していたが、今回の2営業日でその下落分を完全に回復した形となる。このV字回復は、国内投資家の「押し目買い」意欲の強さを如実に示している。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の金価格の乱高下は、ベトナム市場の投資家にとっていくつかの重要な示唆を含んでいる。
第一に、株式市場への資金フローとの関係である。金価格が高騰し、かつボラティリティが高い局面では、個人投資家の資金が金市場に吸い上げられ、株式市場の売買高が低下する傾向がベトナムでは繰り返し観察されてきた。VN-Indexが上値の重い展開を続ける中、金価格の動向は株式市場のセンチメントにも間接的に影響を及ぼす。
第二に、PNJ(フーニュアンジュエリー、銘柄コード:PNJ)への影響である。PNJはベトナム最大の宝飾品チェーンであり、金の小売販売を主力事業の一つとしている。金価格の急騰局面では在庫評価益が生じる一方、消費者の購買意欲が減退するリスクもある。金の売買スプレッド(買値と売値の差)が300万ドン/ルオン前後で推移していることから、販売マージンは一定程度確保されているものの、価格の乱高下は事業の予見性を低下させる。
第三に、為替との連動である。金価格のプレミアム拡大は、ドン安圧力の高まりを反映している側面がある。ベトナム国家銀行はドンの安定維持に注力しているが、金とドルの両方に対する需要増は、為替管理の難易度を高める。日本企業にとっては、ベトナム現地法人の資金管理やヘッジ戦略の見直しが必要になる可能性がある。
第四に、2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げとの関連である。金市場の過熱は、ベトナム金融市場の「成熟度」に対する海外投資家の評価に微妙な影響を与え得る。ただし、FTSE格上げの判断基準は主に株式市場のアクセシビリティや決済制度の改善に焦点が当たっており、金市場の動向が直接的に格上げを左右することはないと見られる。むしろ注目すべきは、金市場への資金集中が株式市場の流動性を圧迫しないかという点である。
いずれにせよ、ベトナムの金市場は国際動向と国内特有の需給構造が複雑に絡み合い、独自の値動きを形成している。国内プレミアムが2,000万〜2,800万ドン/ルオン台で高止まりしている現状は、ベトナム経済のマクロ環境を読み解くうえでも重要な指標であり、引き続き注視が必要である。
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