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3月25日(水)の米国株式市場は、原油価格の一時的な下落と米イラン間の停戦交渉への期待感から上昇した。しかし、原油価格は終値で依然として100ドル/バレルの大台を維持しており、市場の楽観論は極めて脆弱な状態にある。ホルムズ海峡の封鎖が続く中、ベトナムを含むアジア新興国のエネルギー安全保障にも深刻な影響が及んでいる。
米主要3指数はそろって上昇、ダウは305ドル高
25日の終値は以下の通りである。ダウ工業株30種平均は前日比305.43ドル(0.66%)高の46,429.49ドル。S&P500種株価指数は0.54%高の6,591.9ポイント。ナスダック総合指数は0.77%高の21,929.83ポイント。3指数いずれもプラスで取引を終えた。
今週の米国株は、米イラン戦争を巡る報道に振り回される展開が続いている。月曜日に大幅反発した後、火曜日には反落。そして水曜日に再び上昇するという、方向感の定まらない相場となっている。
米イラン交渉の行方—15項目の提案と5項目の対案
相場を動かした最大の材料は、米イラン間の停戦交渉に関する報道であった。AP通信がパキスタン政府関係者の話として報じたところによると、米国はイランに対して戦争終結に向けた15項目の提案を提示した。一方、イラン国営メディアは、イランが米国の提案を拒否し、代わりにホルムズ海峡の管理権をイランに付与する内容を含む5項目の対案を提示したと伝えた。
この報道を受け、原油価格は一時5%以上急落し、ブレント原油は100ドル/バレルを大きく割り込む場面もあった。しかし取引終盤にかけて下げ幅を縮小し、結局100ドルの大台は維持される結果となった。
終値ベースでは、WTI原油先物(ニューヨーク市場)は前日比2.2%安の90.32ドル/バレル、ブレント原油先物(ロンドン市場)は2.17%安の102.22ドル/バレルであった。
交渉への期待は「極めて脆い」—軍事的緊張は継続
市場アナリストらは、米国とイランの間にはなお大きな立場の隔たりがあることを認識している。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、米国が陸軍第82空挺師団を中東に展開していると報じた。第82空挺師団は米軍の即応部隊として知られ、その派遣は軍事的エスカレーションの可能性を示唆するものである。
さらにロイター通信によれば、イラン軍の最高位報道官であるエブラヒム・ゾルファガリ氏は、イラン国営テレビで「我々が繰り返し述べてきた通り、彼ら(米国)と交渉することは絶対にない。今もなければ、将来もない」と断言した。この発言は、交渉による早期解決への期待を大きく後退させるものである。
米大手銀行JPモルガン・チェース(JPMorgan Chase)のレポートも慎重な見方を示している。同レポートは「イランが軍事活動を縮小するかどうか、またイスラエルの利益を満たすために何が必要かについては、依然として多くの懐疑論がある。米国株式市場はさらなる回復を望んでいるように見えるが、イランが従来の要求—将来の攻撃を受けないという保証や、今回の紛争で被った損害への賠償—を撤回するかどうかも不明である」と指摘した。
ホルムズ海峡—世界のエネルギー動脈の「窒息」
米イラン戦争による最大の地政学的リスクは、ホルムズ海峡(Strait of Hormuz)の航行障害である。ホルムズ海峡はペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ幅約33kmの狭い水路で、世界の原油消費量の約5分の1、液化天然ガス(LNG)消費量の約5分の1がこの海峡を通過する。エネルギーの「チョークポイント(急所)」として知られるこの海峡の封鎖は、世界経済に甚大な影響を及ぼす。
国連駐在のイラン代表団は火曜日、イランと「敵対的でない」国の船舶については、イラン当局との調整のもとでホルムズ海峡を安全に通過できると表明した。実際、ここ数日で中国、インド、パキスタンの船籍を持つ船舶がホルムズ海峡を通過している。これは事実上、イランが海峡の通行権を政治的に選別していることを意味する。
ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)のグローバル商品市場分析責任者であるダーン・ストライフェン氏は、今回の事態を「数十年で最大の原油供給の途絶」と評した。同氏によれば、投資家はこの供給途絶が長期化し、世界の原油在庫が低水準に落ち込むシナリオを織り込み始めている。ただし、ゴールドマン・サックスはホルムズ海峡が4月中に再開されるとの見通しを示している。
ベトナム・新興国市場への影響と投資家視点の考察
今回の米イラン情勢は、ベトナム経済・ベトナム株式市場に対しても複数のルートで影響を及ぼす。
第一に、エネルギーコストの上昇である。ベトナムは原油の純輸入国に転じつつあり、100ドル/バレルを超える原油高は、輸送コスト・製造コストの上昇を通じてインフレ圧力を高める。ペトロリメックス(Petrolimex、銘柄コード:PLX)やPVガス(GAS)などエネルギー関連銘柄には短期的な恩恵がある一方、航空(ベトジェットエア:VJC、ベトナム航空:HVN)や物流セクターにはコスト増が重くのしかかる。
第二に、グローバルなリスクオフの波及である。米国株が不安定な値動きを続ける中、外国人投資家のリスク許容度が低下すれば、ベトナムを含む新興国市場からの資金流出が加速する可能性がある。VN指数は足元で1,200〜1,300ポイント近辺のレンジで推移しているが、地政学リスクの高まりは下方圧力となりうる。
第三に、2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げとの関連である。ベトナムがフロンティア市場から新興市場に格上げされれば、大規模なパッシブ資金の流入が期待される。しかし、原油高によるインフレ加速や経常収支の悪化は、格上げ判断に際してのマクロ経済安定性の評価にネガティブに作用する可能性がある。中長期的な視点では、ホルムズ海峡問題の早期解決がベトナムにとっても望ましいシナリオである。
第四に、日本企業への影響である。ベトナムに製造拠点を持つ日本企業にとって、原油高はサプライチェーン全体のコスト増に直結する。特にベトナム南部の工業団地に集積する電子部品・自動車部品メーカーは、輸送コストの上昇に注意が必要である。また、LNG価格の高騰はベトナム国内の電力コスト上昇にもつながるため、製造業全般にとって逆風となる。
ゴールドマン・サックスが予測する4月中のホルムズ海峡再開が実現するかどうかが、今後数週間の最大の焦点である。投資家としては、過度な悲観も楽観も避けつつ、原油価格と地政学リスクの動向を注視し、エネルギーセクターとディフェンシブ銘柄のバランスを意識したポートフォリオ運用が求められる局面である。
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