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2026年3月26日のベトナム株式市場(ホーチミン証券取引所=HoSE)では、VN-Indexが前日比0.82%安で取引を終えたものの、午前中の1.07%安からは下げ幅を縮小した。注目すべきは、大型株(ブルーチップ)が軒並み軟調な中、中小型株に底値拾いの資金が積極的に流入し、外国人投資家が午前の大幅売り越しから一転して午後に買い越しへ転じたことである。市場全体が脆弱さを見せつつも、投資家心理に微妙な変化が生まれた一日となった。
午後の取引で市場の景色が一変——底値拾い資金の動き
VN-Indexの終値は前日比0.82%安。午前の引け時点では1.07%安だったため、午後の取引でやや持ち直した形である。市場の幅(マーケット・ブレッドス)も改善しており、値上がり銘柄は午前の91銘柄から123銘柄に増加し、値下がり銘柄は210銘柄から207銘柄に微減した。
午後の取引では底値拾い(ベトナム語で「bắt đáy」、安値を狙った買い)の動きが一段と活発化した。HoSEの午後の売買代金は午前比で約15%増加し、株価の回復も顕著であった。具体的には、午前の引け時点で日中安値から1%以上回復した銘柄は100銘柄にとどまっていたが、大引けでは160銘柄に拡大した。日中安値と終値の乖離は底値拾い資金の効果を直接的に示す指標であり、株価が依然として前日比マイナス(赤)であっても、買いの力が入っていることを意味する。
大型株は総崩れ——VN30の21銘柄が午前より悪化
意外だったのは、主力大型株が午後にさらに弱含んだ点である。VN30指数(時価総額上位30銘柄で構成)のうち、実に21銘柄が午前の引け値より低い水準で取引を終え、改善したのはわずか8銘柄にとどまった。
市場の「柱」と呼ばれる銘柄群も軒並み下落した。具体的には以下のとおりである。
- FPT(ベトナム最大手のIT企業):▲3.64%、売買代金7,295億ドン
- SSI(大手証券会社):▲1.86%、売買代金6,212億ドン
- HPG(ホアファット・グループ、ベトナム最大の鉄鋼メーカー):▲1.71%、売買代金4,798億ドン
- VHM(ビンホームズ、ビングループ傘下の不動産大手):▲2.98%、売買代金2,795億ドン
- BID(BIDV、ベトナム4大国有商業銀行の一角):▲1.52%、売買代金2,407億ドン
- TCB(テクコムバンク):▲2.11%、売買代金2,254億ドン
- VNM(ビナミルク、ベトナム最大の乳業メーカー):▲1.77%、売買代金1,254億ドン
これらの銘柄は取引時間中に一時的に安値から反発する動き(「脱底」の試み)も見られたが、引けにかけて再び売り圧力に押され、結局は日中安値圏で終了した。大型株にとっては厳しい一日であったと言える。
唯一の例外はVIC——指数を下支えした救世主
大型株が総崩れする中で唯一大きく動いたのがVIC(ビングループ、ベトナム最大手のコングロマリット)である。午前の引け時点では0.08%安とほぼ横ばいだったが、午後の取引で買いが入り、終値は1.01%高となった。VN-Indexが午後に下げ幅を縮めた最大の要因はこのVICの上昇であり、他の多くの大型株がさらに下げる中で、VICが単独で指数を支えた格好である。ビングループは不動産、EV(電気自動車のビンファスト)、リゾート、ヘルスケアなど多角的に事業を展開しており、その時価総額の大きさゆえにVN-Indexへの寄与度が極めて高い。
中小型株が健闘——底値からの反発幅が顕著
一方で、中小型株には明確な資金流入が見られた。大型株に比べて売買代金が大きくないため、買い支えが機能しやすかった側面もあるが、反発幅は注目に値する。
- PVD(ペトロベトナム・ドリリング、石油掘削大手):日中安値から4.2%回復し、終値は前日比わずか0.14%安
- PVT(ペトロベトナム・トランスポーテーション、石油輸送):日中に5.91%の反発を見せ、前日比3.23%高で引け
- GMD(ジェマデプト、ベトナム有数の港湾・物流企業):引けにかけて加速し、終値は0.78%高。日中の上昇幅は5%超
- NVL(ノバランド、大手不動産デベロッパー):日中安値から4.8%反発し、前日比2.9%高
その他にも、PET、TCM、CSV、CTR、HAH、HHP、VHC、GELなど幅広い中小型株が大幅な反発を記録し、前日比プラスへの「逆転」に成功している。
通常、短期的な利益確定売りが出る局面では、買い手は安値を待ってから参入するため受動的な取引になりやすい。しかし今回のように反発幅が大きく、かつ売買代金も伴っている場合は、能動的な買いが入っていることを示す。逆に売買代金が少ない中で反発している銘柄は売り手の力が弱まっていることを意味する。いずれも市場にとってはポジティブなシグナルである。
外国人投資家が午後に劇的な方向転換
この日のもう一つのサプライズは、外国人投資家(ベトナム市場では「khối ngoại」と呼ばれる)の動向である。午前中は約8,530億ドンの大幅な売り越しを記録していたが、午後には一転して約1,070億ドンの買い越しに転じた。午後の新規買い付け額は午前比で約60%増加し、売却額は約22%減少した。
外国人投資家の主な買い入れ銘柄は以下のとおりである。
- MWG(モバイル・ワールド・グループ、家電量販・モバイルショップ最大手):+1,639億ドン
- DCM(カマウ肥料、ペトロベトナム傘下の肥料メーカー):+647億ドン
- ACB(アジア商業銀行):+556億ドン
- HCM(ホーチミン市証券、大手証券会社):+439億ドン
- VCI(バンタインキャピタル証券):+390億ドン
一方、売り越しが目立ったのは以下の銘柄である。
- FUEVFVN30(VN30指数連動型ETF):▲3,531億ドン
- FPT:▲2,462億ドン
- VCB(ベトコムバンク、ベトナム最大の国有商業銀行):▲1,031億ドン
- DGC(ドゥックザン・ケミカルズ):▲848億ドン
- STB(サコムバンク):▲665億ドン
- BID:▲645億ドン
ETFの大幅売り越しはファンドのリバランスや解約対応に伴う機械的な売りである可能性が高く、個別銘柄の選好とは性格が異なる点に留意が必要である。外国人が証券セクター(HCM、VCI)や消費関連(MWG)を積極的に買い増したことは、中長期的な成長ストーリーへの信頼が依然として健在であることを示唆している。
市場全体の評価——脆さと底堅さの共存
午後の取引で下落幅は縮小したものの、全体の売買代金水準は依然として低調であった。これは市場参加者が慎重姿勢を崩しておらず、外部環境の変化(米中関係、FRBの金融政策、原油価格の動向など)に対する警戒感が根強いことを物語っている。207銘柄が下落したうち1%超の下落は121銘柄に上ったが、その売買代金がHoSE全体に占める比率は約40%にとどまった。午前中はこの比率が51.7%だったため、大幅下落銘柄への売りの集中度は明確に低下している。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の市場動向からは、いくつかの重要な示唆を読み取ることができる。
第一に、中小型株への資金シフトの兆候である。大型株が売り込まれる一方で中小型株に底値拾いの資金が入る構図は、投資家がバリュエーション面で割安感のある銘柄を選別し始めていることを示す。特に石油・ガス関連(PVD、PVT)や物流(GMD、HAH)、不動産(NVL)といったセクターへの選好は、実体経済の回復期待と連動している可能性がある。
第二に、外国人投資家の動向は引き続き注視が必要である。午前の大幅売り越しから午後の買い越し転換というパターンは、外国人が一方的に撤退しているわけではなく、銘柄を選別しながらポジションを組み替えていることを示す。2026年9月に予定されるFTSE新興市場指数への格上げ判定を控え、外国人資金のフローは今後数カ月にわたりベトナム市場の最大の注目テーマであり続ける。格上げが実現すれば、新興市場指数に連動するパッシブファンドからの大規模な資金流入が見込まれるため、現段階での外国人の売買動向は格上げ前の「前哨戦」として読み解く必要がある。
第三に、FPTの大幅下落(▲3.64%)は日本企業にとっても無関係ではない。FPTはベトナム最大のIT企業であり、日本市場を最大の海外売上先として急成長してきた。日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)需要の受け皿としてのFPTの株価動向は、ベトナムIT・オフショア産業全体のセンチメント指標でもある。今回の下落が短期的な利益確定売りにとどまるのか、業績見通しの変化を反映しているのかは、今後の決算発表で見極める必要がある。
第四に、ビングループ(VIC)の単独での指数押し上げ効果は、VN-Indexの構造的な課題をあらためて浮き彫りにしている。特定の超大型株の値動きに指数が左右されやすい状況は、市場全体の健全性を測る上でのノイズとなりうる。投資家としては、指数の表面上の動きだけでなく、セクター別・時価総額別の内部動向を丁寧に分析することが不可欠である。
総じて、本日の市場は「大型株の弱さ」と「中小型株の底堅さ」という二面性を見せた。短期的には外部環境への警戒感から不安定な値動きが続く可能性があるが、底値拾いの資金が機能していること、外国人の買い越し転換が見られたことは、市場の底割れリスクが限定的であることを示唆している。FTSE格上げという中長期の好材料を視野に入れながら、銘柄選別の精度を高めていくことが求められる局面である。
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