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ベトナム株式市場は本日、VN-Indexが13.56ポイント下落し1,644.63ポイントで取引を終えた。流動性の低迷と外国人投資家の売り越しが続くなか、国内機関投資家が1,008.2億ドンの買い越しを記録した点が注目される。銀行・不動産・消費関連の主力セクターが軒並み売り込まれるなかで、機関マネーはどこに向かっているのか。本日の市場を詳細に読み解く。
市場全体:流動性の枯渇が最大のボトルネック
現在のベトナム株式市場が直面する最大の課題は、流動性の著しい低下である。中東情勢の緊迫がピークを過ぎたにもかかわらず、待機資金は依然として市場外にとどまっている。その背景にあるのは、地政学リスクの長期的な余波——とりわけグローバルなインフレ圧力と、各国中央銀行の金融引き締め姿勢である。ベトナム国家銀行(SBV、ベトナムの中央銀行)もこの流れと無縁ではなく、投資家心理は慎重かつ脆弱な状態が続いている。
本日の市場全体の売買代金は約2兆2,500億ドンにとどまった。値下がり銘柄は207に対し値上がり銘柄は123と、市場の幅は明確に売り優勢を示している。注目すべきは、この売り圧力が特定セクターに限定されず、ほぼ全セクターに広がっている点だ。市場の信認が回復していないことを如実に物語っている。
セクター別動向:銀行・不動産・消費が総崩れ
ベトナム株式市場の「柱」である銀行セクターが本日、総崩れとなった。大型株のVCB(ベトコムバンク、ベトナム最大手の国営商業銀行)、BID(BIDV)、CTG(ヴィエティンバンク)に加え、民間大手のTCB(テクコムバンク)、VPB(VPバンク)、MBB(MBバンク)が軒並み下落。中堅のHDB(HDバンク)、ACB(アジア商業銀行)、STB(サコムバンク)も弱含み、指数への押し下げ圧力は甚大であった。
不動産セクターも同様に厳しい展開となった。VHM(ビンホームズ、ビングループ傘下の不動産最大手)、VRE(ビンコム・リテール)、BCM(ビンズオン建設)、KBC(キンバクシティ)、KDH(カーディーハウス)などが売り込まれた。ベトナムの不動産市場は2023年以降の在庫整理と信用引き締めの影響からようやく回復途上にあるが、グローバルな金利環境の不透明感が再び足かせとなっている形である。
消費関連ではMWG(モバイル・ワールド・グループ、家電量販最大手)、VNM(ビナミルク、乳業最大手)、MSN(マサングループ)、PNJ(フーニュアンジュエリー)などが下落。エネルギー・石油ガスセクターもGAS(ペトロベトナムガス)、BSR(ビンソン精油)、PLX(ペトロリメックス)が売られ、ディフェンシブ志向すら機能しない厳しい相場であった。
わずかな「光明」——VIC、VJC、証券株の一角
全面安の展開のなかでも、一部の銘柄は指数を下支えした。VIC(ビングループ、ベトナム最大のコングロマリット)、VJC(ベトジェット航空)、VGI(ベトテル・グローバル)、GEE(ジーイー・エナジー)、HMD(HMDグループ)などが上昇。また証券セクターからはHCM(ホーチミン証券)、VCI(バンティエン証券)が買われた。ただし、これら少数の支援銘柄だけでは圧倒的な売り圧力を相殺するには至らなかった。
投資家主体別の売買動向
外国人投資家:696.5億ドンの売り越し継続
海外投資家は本日も売り越しを継続し、全体で696.5億ドンの売り越し、板取引(マッチングベース)では787.2億ドンの売り越しとなった。
外国人の板取引買い越し上位は、小売・観光・レジャーセクターが中心で、銘柄別ではMWG、DCM(ペトロベトナム化学肥料)、ACB、HCM、VCI、VIX(VIX証券)、VJC、GEE、DGW(ディジワールド)、FRT(FPTリテール)が並んだ。
一方、板取引売り越しの最大セクターは証券で、銘柄別ではFUEVFVND(VNダイヤモンドETF)、FPT(FPTコーポレーション、ベトナム最大のIT企業)、VCB、DGC(ドゥクザン化学)、STB、VHM、SSI(SSI証券)、VCG(ビナコネックス)、HPG(ホアファットグループ、鉄鋼最大手)が上位に入った。FUEVFVNDの売り越しが最上位に来ている点は、ETFを通じたパッシブ資金の流出を示唆しており、ベトナム市場全体に対する外国人のリスクオフ姿勢が鮮明である。
個人投資家:353.7億ドンの買い越し
国内個人投資家は全体で353.7億ドンの買い越し、板取引ベースでは1,125.8億ドンの買い越しとなった。板取引では18セクター中14セクターで買い越しており、最大の買い越しセクターは銀行であった。買い越し上位銘柄はFPT、STB、TCB、MBB、VHM、PNJ、HCM、VCB、VPB、BIDと、まさに機関や外国人が売った銘柄を個人が拾う構図が鮮明である。
売り越しセクターは4セクターで、産業サービスおよび小売が中心。売り越し上位はGEE、GEL、VCI、DGW、PVT(ペトロベトナム輸送)、NAF、DCM、EIB(エクシムバンク)、VIXであった。
自己売買部門:620.1億ドンの売り越し
証券会社の自己売買部門は620.1億ドンの売り越し(板取引ベースでも同額)。板取引で買い越したのは18セクター中わずか2セクターで、金融サービスと石油ガスのみ。買い越し上位はFUEVFVND、HCM、VCG、HAH(ハイアン輸送)、TPB(TPバンク)、PVT、SSI、VHM、PLX、VIXであった。
売り越し最大セクターは銀行で、銘柄別ではMWG、TCB、HPG、FPT、MBB、PNJ、GMD(ジェマデプト)、VPB、ACB、CTR(ヴィエッテル建設)が上位となった。
国内機関投資家:1,008.2億ドンの買い越し——本日の主役
本日最も注目すべきは、国内機関投資家が1,008.2億ドンの大幅買い越しを記録した点である。ただし板取引ベースでは281.5億ドンの買い越しにとどまっており、残りの大半は後述する大口のブロック取引(協議取引)によるものだ。
板取引ベースでは18セクター中9セクターで売り越しており、最大の売り越しセクターは金融サービスであった。売り越し上位はHCM、DCM、STB、ACB、DPM(ダプーミ化学肥料)、VHM、VIX、VJC、GEX(ジェレックス)、MBB。一方、買い越し最大セクターはIT(情報技術)で、買い越し上位はFPT、HPG、GEL、GEE、HDB、DGC、VCB、SHB(サイゴン・ハノイ銀行)、CTG、EIBであった。機関投資家がFPTやHPGといった実績のある大型成長株・景気循環株を選好している姿が浮かび上がる。
協議取引(ブロック取引)の急増——VICとEIBに注目
本日の協議取引(thỏa thuận)の総額は4,670.3億ドンに達し、前営業日比で103.3%増と急増した。全取引の19.6%を占める規模である。
特に注目すべきは、VIC(ビングループ)で800万株、金額にして約1,020億ドンの大口ブロック取引が成立した点だ。売り手は国内個人投資家、買い手は国内機関投資家であった。ビングループは電気自動車(VinFast)や不動産(ビンホームズ)を傘下に持つベトナム最大のコングロマリットであり、この規模のブロック取引は市場関係者の間で大きな関心を集めている。
また、EIB(エクシムバンク)でも2,300万株超、約510億ドン規模の協議取引が国内個人投資家間で成立している。エクシムバンクは近年、経営権をめぐる株主間の攻防が続いてきた銀行であり、大株主の持ち分移動の可能性を示唆する動きとして注視が必要である。
資金配分の変化:IT・建設に資金シフト
セクター別の資金配分比率を見ると、建設、化学、IT、小売、運輸、消費財、鉱業、通信、繊維の比率が上昇した一方、銀行、不動産、証券、石油ガス、食品、鉄鋼、公益、保険では比率が低下した。板取引ベースでは、大型株(VN30)と中型株(VNMID)への配分比率が上昇し、小型株(VNSML)への配分が減少している。リスクオフ局面で資金が相対的に流動性の高い大型・中型株に集中する典型的なパターンが確認できる。
投資家・ビジネス視点の考察
本日の相場で最も重要なシグナルは、国内機関投資家が1,000億ドン超の買い越しに転じた点である。VICのブロック取引という特殊要因を差し引いても、板取引ベースで281.5億ドンの買い越しは、足元の地合いのなかでは積極的な動きと評価できる。特にFPTやHPGといったファンダメンタルズの裏付けがある銘柄への選好は、中長期的な視点での仕込みと読める。
一方、外国人投資家の売り越しが継続している点は引き続き警戒材料である。FUEVFVNDの売りが目立つことから、パッシブ資金のリバランスないしは新興市場全体からの資金引き揚げの一環である可能性が高い。もっとも、2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への正式格上げが実現すれば、パッシブ資金の大規模な流入が期待される。現在の外国人売り越しは、格上げ前の「最後の調整局面」と捉えることもできるだろう。
日本企業やベトナム進出企業にとっては、ベトナム国内の金利動向が最大の注目点である。グローバルな引き締め圧力がベトナムの金融政策にどう波及するかによって、不動産開発や設備投資の資金調達コストが大きく左右される。銀行セクターの株価低迷は、信用環境に対する市場の慎重な見方を反映しており、進出企業の資金計画にも影響し得る。
流動性が2兆2,500億ドンにまで細っている現状は、裏を返せば「売りたい人はすでに売り終えつつある」可能性も示唆する。VN-Indexが1,640ポイント台で値固めできるかどうかが、今後の方向性を占ううえでの最大の焦点となる。
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