ベトナム、国内カーボン取引所を設立・運営へ——国際的な炭素クレジット交換規定も整備

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2026年3月25日、ベトナム政府は国内カーボン取引所の設立・運営と、国際的な炭素クレジット交換に関する法的規定の整備を柱とする政府決議第67号(67/NQ-CP)を公布した。グリーン経済・循環型経済への転換を加速させる同国の環境政策が、いよいよ具体的な市場メカニズムの段階に入る。日本企業やベトナム株式市場への影響も大きい動きである。

目次

政府決議第67号の全体像——国会決議247号の実行計画

今回公布された政府決議第67号は、2025年12月10日に国会が採択した決議第247号(247/2025/QH15)を実行に移すための具体的計画である。国会決議247号は、環境保護に関する政策・法律の実効性を一層高めることを目的としたもので、第14回ベトナム共産党全国大会が掲げた「グリーン経済・循環型経済を核とした成長モデルの転換」という方針に基づいている。

政府はこの計画を通じ、環境保護に対する意識と行動の積極的な変革を促し、持続可能な国家発展に貢献することを目指している。

2026年の9つの重点任務——大気汚染対策から河川浄化まで

計画では、2026年中に関係省庁・地方が取り組むべき9つの重点任務が設定された。主な内容は以下の通りである。

(1)環境保護・気候変動関連の戦略・計画の見直し
農業・環境省(旧天然資源環境省が再編されたもの)を中心に、各省庁・地方自治体が、環境保護や気候変動対応に関連する戦略・計画を総点検し、必要に応じて更新・修正を行う。

(2)ハノイ・ホーチミン市の大気汚染対策
ハノイ市人民委員会およびホーチミン市人民委員会が主管となり、農業・環境省や関係機関と連携して、両市の大気汚染を緊急に管理・抑制・改善する措置を実施する。ベトナムでは近年、特にハノイの大気汚染が深刻化しており、PM2.5濃度が世界ワーストクラスに達する日も珍しくない。この課題は市民生活だけでなく、外国人駐在員の生活環境や企業の人材獲得にも影響を及ぼしており、喫緊の対策が求められていた。

(3)河川水質の改善
農業・環境省は、省をまたぐ主要河川流域の水質環境の負荷耐力を評価し、水質管理計画を公表する。2026年中には、ハノイのト・リック川(Tô Lịch、市内を流れる悪臭で知られる河川)、バクニン省(ハノイの北東に位置する工業集積地)のグー・フエン・ケー川(Ngũ Huyện Khê)、バク・フン・ハイ灌漑水系(Bắc Hưng Hải、紅河デルタの大規模灌漑システム)など、深刻な汚染が指摘されている区間の水質改善に着手する。

(4)国家環境データベースの構築・運用
農業・環境省は、国家環境情報・データベースシステムを完成させ運用を開始する。国家データベースとのリアルタイム連携、地理情報システム(GIS)との統合による環境品質マップの作成・公開を行い、まずハノイやホーチミン市など大都市で適用する計画である。

カーボン取引所の設立と国際炭素クレジット交換規定の整備

今回の計画で最も注目すべきは、財務省と農業・環境省が主管となり、国内カーボン取引所を設立・運営するという方針が明記された点である。

ベトナム政府は既に2026年1月19日、国内カーボン取引所に関する政令第29号(29/2026/NĐ-CP)を公布している。同政令は6章35条から成り、温室効果ガス排出枠(排出権)やカーボンクレジットの登録、国内コード付与、所有権移転、預託、取引・決済など、取引所運営に必要な一連の活動を規定している。取引所の管理責任体制や報告・情報公開の仕組みも盛り込まれている。

さらに重要なのは、農業・環境省が主管となり、温室効果ガス削減成果およびカーボンクレジットの国際交換に関する法的規定を整備することが明記された点である。具体的には、「国が自ら決定する貢献」(NDC=Nationally Determined Contribution、パリ協定に基づく各国の温室効果ガス削減目標)の達成に必要な、温室効果ガス削減成果やカーボンクレジットの最低国内保留割合を定める。つまり、国際市場に売却・移転できるクレジットの上限を設け、自国のNDC目標達成に支障が出ないようにするという仕組みである。この保留割合は、各段階の実情に応じて調整され、国益の確保を前提とする。

セクター別排出削減計画の更新——2026〜2035年NDCに対応

農業・環境省、建設省、商工省はそれぞれの所管分野において、2026〜2035年のNDCに整合するよう、セクター別の温室効果ガス削減計画を見直し・更新する。これは、ベトナムが2050年までのカーボンニュートラル達成を宣言して以来、削減目標の具体化と法制度化が段階的に進んでいることを示すものである。

また、農業・環境省は海洋環境の監視・データプラットフォームを構築し、国家環境データベースに海洋環境データサブシステムを組み込む任務も担う。

2030年以降を見据えた7つの中長期任務

計画では、2030年およびそれ以降に向けた7つの任務も提示されている。主な内容は以下の通りである。

  • 汚染・環境事故リスクの早期予防・制御、気候変動の早期影響予測
  • 環境品質の改善・回復
  • 固形廃棄物および有害廃棄物の管理効率の向上
  • 気候変動対応の実効性向上
  • 環境保護規定の遵守率向上
  • 環境保護・気候変動対応に関する法律の広報・教育の強化
  • 環境保護に関する国家管理の資源・効率の強化

投資家・ビジネス視点の考察

カーボン市場関連銘柄への影響:国内カーボン取引所の設立は、ベトナム株式市場においてエネルギー、電力、鉄鋼、セメントなど排出量の多いセクターに直接的な影響を及ぼす。排出枠の購入コストが発生する一方、再生可能エネルギー企業やカーボンクレジット創出に関わる企業(植林、廃棄物処理など)にとっては新たな収益機会となる。ホーチミン証券取引所(HOSE)上場の電力・エネルギー関連銘柄の動向に注目が必要である。

日本企業への影響:日本はベトナムとの間で「二国間クレジット制度」(JCM=Joint Crediting Mechanism)を運用しており、ベトナムでのカーボンクレジット創出プロジェクトに多くの日本企業が参画している。今回、国際的なクレジット交換に関する法的枠組みが整備されることで、JCMプロジェクトの法的安定性が向上する一方、NDC目標達成のための国内保留割合の設定によっては、海外移転可能なクレジット量が制約される可能性もある。日本企業にとっては、ベトナム側の規制動向を注視し、早期の対応が求められる局面である。

FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月に判断が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げにおいて、ESG(環境・社会・ガバナンス)関連の制度整備は市場の成熟度を示す重要な要素となる。カーボン取引所の設立や環境データベースの整備は、国際的な投資家に対しベトナム市場の制度的信頼性をアピールする材料となりうる。

グリーン経済トレンドにおける位置づけ:ベトナムは2021年のCOP26でカーボンニュートラル2050を宣言して以来、公正なエネルギー転換パートナーシップ(JETP)による155億ドルの国際支援合意、第8次電力開発計画(PDP8)での再生可能エネルギー比率引き上げなど、グリーン経済への転換を加速させている。今回のカーボン取引所設立は、その「市場メカニズムの整備」という重要なピースが埋まることを意味し、同国の環境政策は新たなステージに入ったと言える。


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出典: 元記事

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