超富裕層の旅行トレンドが海底へ——水中ホテル市場は2032年に99.4億ドル規模へ成長、ベトナム観光業への示唆

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2026年、世界の超富裕層向けラグジュアリー旅行が大きな転換期を迎えている。キーワードは「プライバシー」「パーソナライゼーション」「特別なアクセス権」。華美な見せびらかしから、深海という未知の世界への没入体験へ——。ベトナム経済メディアVnEconomyが伝えた最新トレンドを、投資・ビジネスの視点を交えて詳しく解説する。

目次

超富裕層が求める旅の本質が変わった

高級旅行コンサルタント会社The Suite Sojourn(ザ・スイート・ソジャーン)の創設者兼オーナーであるウルヴシ・マルワー氏によれば、超富裕層の旅行客はもはや華やかさを誇示するようなサービスには関心を示さない。彼らが求めているのは、細部に至るまでの精緻な設計、絶対的なプライバシー、そして明確な目的意識に基づいた旅行体験である。この変化は単なるファッションではなく、コロナ禍以降に加速した「量より質」「外見より内面的充足」という富裕層の価値観シフトを反映したものだ。

世界初の水中ホテル「ポセイドン・アンダーシー・リゾート」

こうしたトレンドの象徴的存在が、フィジーの透明度の高い海域に建設が進む「ポセイドン・アンダーシー・リゾート(Poseidon Undersea Resort)」である。世界初の本格的な水中ホテルとして設計されたこのプロジェクトは、客室や別荘タイプの宿泊施設に加え、フィットネスセンター、高級レストラン、フルサービスのスパなど多彩な施設を備え、すべてのスペースから周囲の海洋生態系を一望できる壮大な眺望が特徴である。

構造面では、強化アクリルパネルと先端複合素材を使用し、水中の高圧環境に耐えうる設計が施されている。さらに再生可能エネルギーを利用し、海洋保全イニシアティブにも参画。一部の建材はサンゴの成長を促進するよう選定されており、建築物と自然環境の調和的な共存を目指している点が注目に値する。

フランス人建築家が設計した海洋探査船型ホテル「シーオービター」

もうひとつの注目プロジェクトが、フランスの著名な建築家ジャック・ルジェリ(Jacques Rougerie)が設計した「シーオービター(SeaOrbiter)」である。これは単なるホテルというよりも、海洋研究船としての機能を兼ね備えた革新的施設だ。構造は水面上と水面下にまたがり、高さ58メートル。リサイクルアルミニウムを主材料とし、先進素材によってエネルギー効率と耐久性を両立させている。エコツーリズムの拠点として、教育的な海洋ツアーの提供に特化しており、単なるラグジュアリーにとどまらない「学びのある旅」を提案している。

市場規模は2032年に99.4億ドルへ——年平均成長率13.55%

水中ホテル市場の急成長は数字でも裏付けられている。調査プラットフォームCredence Research(クレデンス・リサーチ)のレポートによれば、同市場の規模は2024年の36億ドルから2032年には99.4億ドルへと拡大し、年平均成長率(CAGR)は13.55%に達する見通しである。この成長を支えるのは、ユニークな旅行体験への需要増大、建設技術の進歩、そして革新的なテクノロジーの台頭だ。

ノルウェーの水中レストラン「アンダー」——欧州初、世界最大

水中体験は宿泊施設だけにとどまらない。ノルウェー最南端、北海と大西洋が交わる地点にひっそりと佇む水中レストラン「アンダー(Under)」は、海面下5.5メートルに位置する唯一無二のダイニング空間である。2019年の開業以来、国際的な旅行メディアで繰り返し取り上げられてきた。

設計を手がけたのは、オスロのオペラハウスで知られるノルウェーの名門建築事務所スノーヘッタ(Snøhetta)。陸上から見ると巨大なコンクリートの塊が海中に沈み込んでいくような外観だが、それは意図的なデザインである。「海の景観の一部となり、波風と時間の浸食を受け入れる」というコンセプトのもと、自然との一体化が追求されている。

入口から階段を下りて辿り着くメインダイニングには、高さ3メートル超の巨大なガラスの壁が広がり、北欧の冷たい海の世界が目の前に展開される。タラ、カニ、ヒトデ、海藻が潮流に揺れる様子が、ディナーの生きた背景となる。レストランの総面積は約495平方メートル。食事をしながら海洋生態系をリアルタイムで観察できるという、他に類を見ない体験を提供している。

米国のタイム誌は「世界で最も素晴らしい目的地」のリストにアンダーを選出し、ユーロニュース(Euronews)は「建築、海洋科学、高級料理の稀有な融合」と評している。ナショナルジオグラフィック・トラベルによれば、アンダーは欧州初の水中レストランであり、現時点で世界最大の水中レストランでもある。

価格はコンデナスト・トラベラー(Condé Nast Traveler)によると、テイスティングメニューが1人あたり約3,800〜4,200NOK(ノルウェークローネ、約1,000万〜1,100万ドン)で、飲み物は別途。欧州基準でも高額だが、多くの客は「繰り返せない体験を買うための対価」と捉えているという。

中国が2030年に深海観光用潜水艇を商業運用へ

直近の注目トピックとして、中国初の観光用潜水艇が2030年の商業運用を目指して開発中であることが明らかになった。江蘇省無錫市(上海の西方に位置)にある中国船舶科学研究センターのエンジニアチームが、1回の潜航で最大4名の乗客を収容でき、全方位パノラマ観測窓を備えた機体の製造を計画している。

現在、中国国内では水深約20メートル程度で運用される観光用潜水艇が数十隻稼働しており、ダム湖や沿岸域での遊覧に利用されている。しかし、より深い海域で運用するには桁違いの水圧への耐性が求められる。今回の新型機は水深1,000メートル以上の潜航能力を持つ潜水艇グループへの参入を目指すものだ。

中国の旅行会社チャイナ・ハイライツ(China Highlights)のCEOスティーブン・ジャオ氏は「鍵となるのは価格と安全性だ。安全性が旅行者の意思決定に大きな影響を与える」と指摘しており、2022年に発生したタイタン号の事故(米国オーシャンゲート社の潜水艇がタイタニック号残骸探索中に圧壊)の記憶が業界全体の安全意識を高めていることがうかがえる。

海洋保全との共存——持続可能性への取り組み

水中ラグジュアリー旅行のもうひとつの重要な側面は、環境保全との両立である。ホテルやリゾートが海洋生物学者や環境団体と連携するケースが増えており、海洋生態系の保護と生物多様性の促進を図りながら、観光の魅力を高めるという好循環が生まれつつある。ポセイドン・アンダーシー・リゾートのサンゴ育成素材やシーオービターの教育プログラムは、その具体例である。

課題は山積——建設コスト、保守、エネルギー供給

一方で、水中ホテルの発展には大きなハードルも存在する。建設コストと運営費は地上施設と比較にならないほど高額であり、保守・修繕作業も極めて複雑で費用がかさむ。安全性を確保するために常時モニタリング体制を維持する必要があり、水中施設へのエネルギー供給には効率的かつ持続可能なシステムが不可欠で、その投資・運用コストも膨大である。こうした理由から、現時点ではこのカテゴリーの旅行は超富裕層のみをターゲットとしており、大衆向けの展開には至っていない。

投資家・ビジネス視点の考察——ベトナムへの示唆

本記事は直接的にベトナム国内の案件を扱ったものではないが、ベトナムの観光・不動産セクターへの示唆は大きい。以下の点に注目したい。

1. ベトナムのラグジュアリー観光ポテンシャル:ベトナムは3,000キロメートル以上の海岸線を有し、フーコック島(Phú Quốc)、ニャチャン(Nha Trang)、ダナン(Đà Nẵng)など世界的に評価の高いビーチリゾートを複数抱える。透明度の高い海域も多く、将来的に水中ホテルや水中レストランの立地候補となるポテンシャルは十分にある。ビングループ(Vingroup、ベトナム最大手コングロマリット)傘下のヴィンパール(Vinpearl)やサングループ(Sun Group)といった大手デベロッパーが超富裕層向けの差別化戦略として関心を寄せる可能性がある。

2. ベトナム株式市場への影響:水中ホテル市場が年率13.55%で成長するという予測は、関連素材(強化アクリル、複合素材)、再生可能エネルギー、海洋建設技術といったセクターの成長を暗示している。ベトナム株式市場においては、沿岸リゾート開発を手がけるVIC(ビングループ)、観光関連のFLC、不動産デベロッパー各社が広い意味でのテーマ銘柄となり得る。

3. FTSE新興市場指数への格上げとの関連:2026年9月にFTSE新興市場指数への格上げが決定される見込みのベトナム市場にとって、ラグジュアリー観光セクターの高付加価値化は、海外機関投資家が注目するストーリーのひとつとなる。特にESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から、海洋保全と連動した観光開発は国際的な投資マネーを引きつけるテーマとして有望だ。

4. 日本企業への示唆:日本は水中建築技術や海洋工学の分野で高い技術力を持つ。清水建設や大林組といったゼネコンが海洋構造物の研究を進めてきた実績もあり、東南アジアでの水中リゾート開発に技術パートナーとして参画するシナリオも考えられる。また、ベトナム進出済みの日系旅行会社(HIS、JTBなど)にとっても、超富裕層向け商品の開発という新たなビジネス機会が見えてくる。

ラグジュアリー旅行の最前線は、文字通り「海底」へと向かっている。この潮流がベトナムの豊かな海洋資源とどう結びつくか、今後の動向を注視したい。


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出典: VnEconomy元記事

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