ベトナム個人所得税改革、医療・教育費で最大4,700万ドン控除へ—2つの方案を財政省が提示

Người nộp thuế có thể được giảm trừ tối đa 47 triệu đồng cho y tế, giáo dục
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ベトナム財政省(Bộ Tài chính)が、個人所得税(PIT)の改正案において、納税者および扶養家族の医療費・教育費に対する控除制度の導入を提案した。控除額は最大4,700万ドンに達する可能性があり、ベトナムの中間層にとって大きな減税効果をもたらす見通しである。所得税制度の抜本的な見直しが進むなか、この提案は国内消費の下支えと社会保障の強化という二つの政策目標を同時に追求するものとして注目される。

目次

財政省が提示した2つの方案

財政省は今回、医療費および教育費の控除に関して2つの方案(phương án)を提示している。いずれの方案も、納税者本人だけでなく、扶養家族(người phụ thuộc)に対する支出も控除対象に含めている点が特徴的である。控除の上限額は最大4,700万ドンとされており、これは現行の個人所得税制度にはなかった新たな仕組みである。

ベトナムの現行個人所得税法では、基礎控除(giảm trừ gia cảnh)として納税者本人に月額1,100万ドン(年間1億3,200万ドン)、扶養家族1人につき月額440万ドン(年間5,280万ドン)が認められている。しかし、医療費や教育費といった「実費」に基づく控除制度は存在せず、長年にわたって納税者や専門家から制度の不備が指摘されてきた。今回の提案は、こうした声に応える形で具体化されたものである。

なぜ今、医療・教育費控除なのか

ベトナムでは近年、都市部を中心に医療費・教育費の負担が急速に増大している。ハノイやホーチミン市では、私立学校の学費が年間数千万ドンから数億ドンに達するケースも珍しくなく、国際学校に至ってはさらに高額となる。医療面でも、公立病院の混雑を避けて私立病院を利用する中間層が増加しており、家計に占める医療支出の割合は上昇傾向にある。

ベトナム統計総局(GSO)のデータによれば、家計支出に占める教育・医療関連の割合は年々拡大しており、特にポストコロナ期には物価上昇と相まって実質的な負担感が強まっている。現行の基礎控除額は2020年に引き上げられたものの、急速なインフレと生活コストの上昇に追いついていないとの批判が根強い。

こうした状況のなか、財政省は個人所得税法の全面改正作業を進めており、今回の医療・教育費控除の導入はその柱の一つとして位置づけられている。ベトナム政府としては、控除制度の拡充により納税者の実質的な税負担を軽減しつつ、「自己申告・自己納付」という近代的な税制への移行を促進する狙いもあるとみられる。

ベトナムの個人所得税制度の現状と課題

ベトナムの個人所得税は、累進税率方式で5%から35%までの7段階が設定されている。給与所得者の場合、月額課税所得が8,000万ドンを超えると最高税率35%が適用される仕組みである。一方、ASEAN域内の他国と比較すると、最高税率がやや高い水準にあるとされ、高度人材の獲得競争という観点からも税制改革の必要性が議論されてきた。

また、ベトナムの税制には長年、「控除項目が少なすぎる」という構造的な問題がある。日本の所得税では、医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、住宅ローン控除など多岐にわたる控除制度が整備されているが、ベトナムでは基礎控除と社会保険料控除程度に限られていた。今回の医療・教育費控除の導入は、ベトナムの税制を国際標準に近づける一歩として評価できる。

在ベトナム日本人への影響

ベトナムに駐在する日本人ビジネスパーソンや、現地採用で働く日本人にとっても、今回の改正案は注目に値する。ベトナムの個人所得税は居住者(183日以上滞在)に対して全世界所得課税が適用されるため、日本人駐在員も同国の所得税制度の対象となる。子どもをハノイやホーチミン市の日本人学校やインターナショナルスクールに通わせているケースでは、教育費控除が適用されれば税負担の軽減につながる可能性がある。

ただし、具体的な控除要件(対象となる教育機関の範囲、医療機関の種類、領収書の要件など)については今後の法案審議で詳細が固まる見通しであり、現時点では確定的なことは言えない。日本企業の駐在員管理担当者や、現地の税務アドバイザーは今後の立法動向を注視する必要がある。

投資家・ビジネス視点の考察

今回の個人所得税改革案は、一見すると税制のテクニカルな話題に映るが、ベトナム経済と投資環境の全体像を見据えると、いくつかの重要なインプリケーションが浮かび上がる。

1. 内需・消費セクターへのプラス効果:医療・教育費の控除導入により、中間層の可処分所得が実質的に増加する。これは小売・消費セクターの上場企業にとって追い風となる可能性がある。特にベトナム国内の民間教育サービス企業や、民間医療機関を運営する企業(例:ホアラム・シャングリラ病院グループなど)は、控除制度が「正規の領収書発行」を前提とする場合、利用者の囲い込み効果も期待できる。

2. 税制の近代化とFTSE格上げへの間接的影響:ベトナムは2026年9月にFTSE新興市場指数への格上げが決定される見込みであり、制度面の整備が国際投資家の評価に直結する時期にある。個人所得税制度の透明性・合理性の向上は、直接的にFTSE基準に影響するものではないが、「ベトナムの制度がグローバルスタンダードに近づいている」というシグナルとして、海外機関投資家のセンチメントにプラスに作用する可能性がある。

3. 日系企業の人材戦略への影響:ベトナムに進出する日系企業にとって、現地採用の日本人スタッフやベトナム人高度人材の処遇設計において、税制は重要な要素である。控除制度の拡充は、額面給与を上げずとも手取りベースでの魅力を高める効果があり、人材確保の面でメリットが生じ得る。

4. 税収への影響と財政規律:一方、控除の拡大は短期的には税収の減少を意味する。ベトナム政府は公共投資の拡大とインフラ整備を推進しており、税収基盤の確保とのバランスが課題となる。この点については、国会(Quốc hội)での審議過程で激しい議論が予想される。

総じて、今回の提案はベトナムが「中所得国の罠」を回避し、質の高い成長を目指す政策パッケージの一環として位置づけられる。個人所得税制度の改革は、ベトナム経済の構造転換を示すシグナルであり、投資家としても注視すべきテーマである。


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出典: 元記事

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