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ベトナム最大の鉄鋼メーカーであるホアファット・グループ(Hòa Phát Group、HOSE上場・銘柄コード:HPG)が、2025年度の利益配分として現金配当と株式配当を合わせた配当率15%を計画していることが明らかになった。現金配当が実現すれば、2021年初頭以来およそ4年ぶりとなり、投資家の間で大きな注目を集めている。
年次株主総会の議案——配当15%の内訳
HPGは、2026年4月21日にハノイのメリアホテル(Melia Hà Nội、44 Lý Thường Kiệt通り)1階グラールボールルームで開催される2026年度定時株主総会に向け、2025年度の経営実績、2026年度の事業計画、および2025年度利益配分に関する議案書を公表した。
取締役会が株主に諮る配当計画は以下の通りである。
- 配当率:15%(額面1万ドン基準で1株あたり1,500ドン相当)
- うち10%が株式配当、5%が現金配当
- 株式配当として発行予定の新株数:約7億6,755万株(767,546,585株)
- 株式発行時期:2026年4月以降、ベトナム国家証券委員会(UBCKNN)が発行書類の受領完了を通知した後
現金配当については、現在の発行済み株式数が約76億7,500万株であることから、支払い総額はおよそ3,800億ドンと見積もられている。財源は2025年末時点の未配分利益であり、その残高は5兆1,034億ドン超に上る。もしこの議案が承認されれば、HPGが現金配当を実施するのは2021年初頭に行った5%配当以来、実に4年ぶりとなる。
2026年度事業計画——売上21兆ドン超、純利益2.2兆ドンの大台へ
HPG取締役会が提示した2026年度の経営目標は以下の通りである。
- 連結売上高:21万億ドン(210,000 tỷ đồng=210兆ドン)
- 税引後純利益:2万2,000億ドン(22,000 tỷ đồng=22兆ドン)
- 配当予定:15%
これは前年度比でそれぞれ約33%増収、約35%増益に相当する野心的な数字であり、後述するズンクアット第2製鉄所のフル稼働と中国産熱延コイル(HRC)に対する反ダンピング関税の通年適用が大きな追い風になると見込まれている。
2025年第4四半期の実績——鉄鋼事業が牽引
2025年第4四半期のHPGの業績は引き続き好調であった。主要数値は以下の通りである。
- 純売上高:4兆6,200億ドン(前年同期比+33.9%)
- 税引後純利益:3,900億ドン(前年同期比+38.4%)
成長を牽引したのはやはり鉄鋼事業であり、売上高は前年同期比+36%、前四半期比+28%と大幅に伸びた。純利益も前年同期比+39%と堅調だったが、前四半期比では4%の微減となった。この要因としては、ズンクアット第2製鉄所(Dung Quất 2)の第2期が竣工・稼働開始し、第1期の稼働率引き上げも同時に進められた結果、減価償却費が急増(第3四半期の2兆1,000億ドンから第4四半期は2兆9,000億ドンへ)したこと、鉄鉱石価格が前四半期比+3%、原料炭(コークス炭)が同+7%と原材料コストが上昇したこと、さらに販売割引額が前四半期の3,000億ドンから1兆1,000億ドンへ大幅に膨らんだことが挙げられる。これにより、鉄鋼事業の純利益率は前四半期比2.4ポイント低下し7.2%となった。
一方、農業事業(ホアファットは養豚・飼料事業も展開)は豚肉価格の下落を受け、売上高が前年同期比−9%、純利益が同−11%と成長が鈍化した。不動産事業は各地の工業団地における土地販売が寄与し、四半期で4,390億ドンの利益を計上。前年同期比+107%、前四半期比+12%と好調であった。
SSIリサーチの投資評価——目標株価35,000ドン、「買い」継続
ベトナム大手証券SSIのリサーチ部門(SSI Research)は、HPGに対し2026年も長期投資の観点からポジティブな見方を維持し、鉄鋼セクターのトップピックに選定している。投資判断は「買い(Mua)」を継続し、目標株価は35,000ドン。現在の株価水準から約30%のアップサイドがあると試算している。
SSIが注目する主な投資テーマは次の2点である。
- ズンクアット第2製鉄所のフル稼働元年:2026年はベトナム中部クアンガイ省に立地するズンクアット第2製鉄所が初めて通年稼働する年となり、HPGのHRC(熱延コイル)生産能力は年間900万トンに引き上げられる。
- 中国産HRCへの反ダンピング関税の通年適用:ベトナム政府が発動した中国産HRCへのアンチダンピング関税が2026年に初めて丸1年間適用されることで、HPGの主力製品の価格競争力と収益性が一段と高まる見通しである。さらに、幅広HRC(広幅熱延コイル)への調査拡大が進んでおり、HPGの主力製品群に対する保護が強化される方向にある。
現在の株価水準におけるHPGの2026年予想PER(株価収益率)は10.4倍と、新たな成長サイクルに入る企業としてはかなり魅力的な水準にあるとSSIは評価している。
投資家・ビジネス視点の考察
1. 4年ぶりの現金配当がもたらすシグナル
HPGが現金配当を復活させる意義は大きい。ズンクアット第2製鉄所という大規模設備投資が一巡し、キャッシュフローに余裕が出てきたことを市場に示すシグナルとなる。株式配当10%による希薄化を懸念する声もあるが、増益ペースがそれを上回る見通しであるため、1株当たり利益(EPS)の実質的な毀損リスクは限定的と見てよいだろう。
2. 反ダンピング関税と国内鉄鋼需要の追い風
ベトナム政府は中国産の安価なHRCに対する反ダンピング措置を段階的に強化しており、2026年はその効果が通年で発現する初めての年となる。これはHPGにとって「量」と「価格」の両面で恩恵をもたらす。さらに、ベトナム国内ではインフラ投資(高速道路、空港、都市鉄道など)が加速しており、鉄鋼需要は構造的に底堅い。
3. 日本企業・日本人投資家への示唆
日本の鉄鋼メーカーや商社にとって、ベトナムの鉄鋼市場はサプライチェーンの観点からも重要度が増している。HPGの生産能力拡大は、ベトナム国内での鋼材調達の選択肢を広げる一方、日本からの鉄鋼輸出にとっては競合の激化を意味する。投資家としては、HPGがベトナム株式市場(VN-Index)の時価総額上位銘柄であることから、2026年9月に見込まれるFTSE新興市場指数への格上げが実現した場合、海外パッシブ資金の流入でHPGへの買い需要が一段と強まる可能性がある点にも注目したい。
4. リスク要因
原材料コスト(鉄鉱石・コークス炭)の上昇は引き続き利益率を圧迫し得る。また、米中貿易摩擦の激化やグローバル景気減速によって鉄鋼価格が下落するリスク、さらに株式配当による発行済み株式数の増加(約10%希薄化)も短期的には株価の重しとなる可能性がある。
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