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2026年3月27日、ベトナム海洋島嶼局(Cục Biển và Hải đảo Việt Nam、農業・環境省傘下)は、ベトナム経済誌(Tạp chí Kinh tế Việt Nam/VnEconomy)と会合を開き、海洋・島嶼および海洋経済の発展に関する広報活動の強化について協議した。ベトナム政府が掲げる「2桁成長」目標の達成に向け、陸地面積の約3倍に及ぶ広大な海洋空間をいかに経済的に活用するか——その情報発信戦略が本格的に動き出した形である。
会合の概要と出席者
ベトナム海洋島嶼局からは、グエン・クオック・トアン(Nguyễn Quốc Toản)局長、グエン・ヴィエット・ズン(Nguyễn Việt Dũng)副局長、および同局の各部門代表が出席した。一方、ベトナム経済科学協会(Hội Khoa học Kinh tế Việt Nam)およびベトナム経済誌からは、ダオ・クアン・ビン(Đào Quang Bính)事務局長兼編集委員会副委員長、グエン・ゴック・ジエップ(Nguyễn Ngọc Diệp)副編集長らが参加した。
海洋経済を構成する「6大セクター」
トアン局長は会合の中で、ベトナムの海洋経済を構成する6つの主要セクターを明確に示した。すなわち、①海運(kinh tế hàng hải)、②観光(du lịch)、③石油・ガス(dầu khí)、④水産業(thủy sản)、⑤物流(logistics)、⑥大陸棚経済(kinh tế thềm lục địa)の6つである。
これらのセクターに関連する法制度も多岐にわたり、地質鉱物法、観光法、石油法、海運法、投資法、海洋法、海洋島嶼資源環境法など、複数の法律が海洋・島嶼問題を規定している。ベトナムは南シナ海(ベトナム名:東海/Biển Đông)に面した約3,260kmの海岸線を持ち、排他的経済水域(EEZ)を含む管轄海域は陸地面積の約3倍に相当する。この広大な海洋空間こそが、次なる経済成長のフロンティアと位置づけられている。
党決議36号の総括と新決議の策定へ
トアン局長によれば、海洋島嶼局が現在注力している重点課題の一つが、2018年10月22日付の党中央委員会第8回全体会議(第12期)で採択された「決議第36号(Nghị quyết số 36-NQ/TW)」の総括である。この決議は「2030年までのベトナム海洋経済の持続可能な発展戦略、2045年までのビジョン」を定めたもので、ベトナムの海洋政策の根幹をなす極めて重要な文書である。
決議36号の実施状況を総括した上で、新たな海洋経済に関する決議が策定され、近い将来、政治局(Bộ Chính trị)に提出・公布される予定だという。また、海洋島嶼資源環境法の改正法案も準備が進められており、2026年10月の国会会期での審議が見込まれている。法整備の動向は、海洋関連の投資環境を大きく左右するため、今後の国会審議は注視すべきポイントである。
「2桁成長」に不可欠な海洋経済の開発
トアン局長は、海洋空間の潜在力と海洋経済の重要性を強調した上で、「今後の2桁成長目標の達成に貢献するためには、沿海地方が海洋の潜在力の開発を加速させなければならない」と述べた。ベトナムには28の沿海省・中央直轄市があり(記事中では21地方と言及)、これらの地方自治体が海洋経済のポテンシャルをいかに引き出すかが、国家全体の成長軌道を左右する。
さらにトアン局長は、「海洋経済の潜在力を開発し、海から富を生み出し、沖合に出て海を守ること——それはすなわち海を守り、主権を守ることでもある」と語り、経済開発と国家安全保障の一体性を明確に示した。ベトナムにとって南シナ海の領有権問題は外交・安全保障上の最重要課題であり、経済的プレゼンスの強化が主権維持に直結するという認識は、同国の海洋戦略の核心を突いている。
メディア連携による情報発信の強化
トアン局長は、ベトナム経済誌が持つ政策報道の強みや、企業・投資家・国内外の専門家を巻き込んだ多様な報道プログラムの開発実績を高く評価し、両機関の一層の連携強化を呼びかけた。具体的には、ベトナム経済誌の各メディアチャンネルを通じて、海洋・島嶼に関する政策方針や、海洋経済の優位性・潜在力・発展機会に関する情報を、21の沿海地方自治体、企業、漁民、そして国際社会に向けて発信していくことを目指すとしている。
また、両機関は今後、海洋経済の発展をテーマとした年次会議やフォーラムの共同開催を検討し、関係者が一堂に会して議論できる公式の場を設けていく方針である。
エネルギー安全保障と石油・洋上風力への期待
ベトナム経済科学協会のダオ・クアン・ビン事務局長は、海洋経済の発展は水産業や海洋観光だけにとどまらず、石油・ガス、洋上風力発電(điện gió ngoài khơi)、港湾、海上輸送、物流など広範な分野に及ぶと指摘した。とりわけ石油・ガス分野については、「現下のエネルギー危機の中で、ベトナムにとって最も重要な優位性の一つであり、国家のエネルギー安全保障の確保に貢献する」と強調した。
ベトナムは東南アジア有数の石油・ガス産出国であり、ペトロベトナム(PetroVietnam、ベトナム石油ガスグループ)を中心に、南シナ海の複数の鉱区で開発が進められている。加えて、2023年に改正された石油法のもとで外資参入の枠組みも整備されつつあり、近年は洋上風力発電のポテンシャルにも国際的な注目が集まっている。
ベトナム経済誌側は、今後、同誌のベトナム語版(Tạp chí Kinh tế Việt Nam)、英語版(Vietnam Economic Times)、およびオンライン媒体VnEconomyの各プラットフォームを活用し、海洋・島嶼政策や海洋経済の発展ポテンシャルに関する具体的な報道・広報プログラムを展開していくと表明した。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の動きは、一見すると政府機関とメディアの広報連携にすぎないが、投資家の視点からはいくつかの重要な示唆が読み取れる。
1. 海洋関連銘柄への政策追い風:ベトナム政府が海洋経済を「2桁成長」の柱と明確に位置づけたことで、関連セクターへの政策的支援が強まる可能性が高い。ホーチミン証券取引所(HOSE)に上場する主要銘柄としては、ペトロベトナムガス(GAS)、ペトロベトナム・ドリリング(PVD)、ペトロベトナム・テクニカルサービシーズ(PVS)といった石油・ガス関連株、ジェマデプト(GMD)やサイゴン港(SGP)などの港湾・物流関連株、ビンパール(VinWonders)を運営するビングループ(VIC)などの海洋観光関連株が注目される。
2. 洋上風力発電の法整備加速:2026年10月の国会で海洋島嶼資源環境法の改正案が審議される見通しであり、洋上風力発電に関する法的枠組みの明確化が進む可能性がある。日本企業では、JERAやINPEXなど、ベトナムの洋上風力プロジェクトへの参入を検討している企業にとって、法改正の内容は投資判断に直結する。
3. FTSE新興市場指数格上げとの関連:2026年9月に判定が見込まれるFTSE新興市場指数へのベトナム格上げにおいて、政策の透明性や情報発信の質は間接的に評価対象となる。今回のようなメディア連携による政策広報の強化は、海外投資家へのベトナム市場の「見える化」に寄与する動きとして、格上げへの地ならしの一環とも読める。
4. 日本企業への示唆:日本はベトナムにとって最大のODA供与国であり、港湾インフラ(ラックフェン港など)の整備にも深く関与してきた。海洋経済の活性化は、商社(丸紅、三菱商事など)やゼネコン(大成建設、鹿島建設など)のベトナム事業にも追い風となり得る。さらに、水産加工の分野では、日本はベトナムからの水産物の主要輸入国であり、ベトナムの水産業振興策は日越間のサプライチェーンにも影響を及ぼす。
ベトナム政府が海洋経済を国家戦略の中核に据え、法整備・広報・国際連携を三位一体で推進する姿勢は、同国の長期的な経済成長ストーリーにおいて見逃せない動きである。投資家としては、今後の国会審議(2026年10月)や新決議の内容を注視しつつ、海洋関連セクターの中長期的なポジション構築を検討する価値があるだろう。
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出典: 元記事












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