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ベトナム南部ホーチミン市の西の玄関口にあたるロンアン省ベンルック(Bến Lức)で、大手デベロッパーBIM Group傘下のBIM Landが大型複合都市プロジェクト「Thanh Phú Centre Point(タインフー・センターポイント)」の開発を進めている。単なる住宅開発ではなく、商業・コミュニティ・文化体験を一体化した「統合型都市」を志向する同プロジェクトは、急速にインフラ整備が進むホーチミン西部エリアの新たな中核拠点として注目を集めている。
ホーチミン西部——成長ポテンシャルを秘めた「空白地帯」
ホーチミン市の西側エリアは、ここ数年にわたり「高成長が見込める地域」として繰り返し言及されてきた。工業団地の集積、物流拠点の拡大、そして都市中心部からの人口流入が進み、インフラ面でも高速道路や環状道路の整備が加速している。特にベンルックは、ホーチミン市とメコンデルタ(南西部)を結ぶ交通の要衝であり、周辺には大規模な工業団地やロジスティクスセンターが林立する。
しかしながら、こうした成長の勢いにもかかわらず、このエリアには「人が集まり、滞留し、消費活動を行う都市的な中心地」が欠如していた。工場労働者や物流関係者は多いものの、彼らの生活消費やレジャー需要を受け止めるだけの商業・居住・文化インフラが整っていなかったのである。Thanh Phú Centre Pointは、まさにこの構造的な空白を埋めることを狙ったプロジェクトである。
「目的地」として設計された統合型都市
Thanh Phú Centre Pointの最大の特徴は、開発初期段階から「統合型都市(đô thị tích hợp)」として構想されている点にある。住宅を並べるだけの従来型ニュータウンとは一線を画し、居住空間・商業施設・ランドスケープ・コミュニティ活動の場を有機的に組み合わせ、ひとつの「目的地(ディスティネーション)」として機能させることを目指している。
国際的な都市デザインコンサルタントであるBroadway(ブロードウェイ)が設計コンセプトを担当し、「龍の門(Cửa Ngõ Rồng)」というテーマを打ち出した。これはホーチミン市と南部地域を結ぶ「ゲートウェイ」としての立地を象徴的に表現したもので、単なるビジュアルイメージにとどまらず、空間構成・景観設計・エリアのアイデンティティ形成を貫く設計軸として機能している。
プロジェクト全体は「一つの生命体(cơ thể sống)」として統一的に設計されており、各コミュニティ、ストリート、広場、景観軸がそれぞれ独立しつつも相互に連結する構造を持つ。バラバラのゾーンに分割するのではなく、全体を通じて人の流れと活動が循環する「脈動する都市」を実現しようとしている。
「Miền Thương Phú」——85haの第一フェーズ
プロジェクトの先行開発区画である「Miền Thương Phú(ミエン・トゥオンフー)」は、約85ヘクタールの規模を持つ。注目すべきは、建築密度がわずか14.41%にとどまり、敷地面積の約48%が景観・アメニティ・オープンスペースに充てられている点である。1,200戸以上の住宅プロダクトが計画されているが、密集した住宅街ではなく、緑地やコミュニティ空間を優先した設計思想が明確に表れている。
空間構成は「1つの都市軸、3層の商業ゾーン、6つのコミュニティ」という構造で整理されており、居住・買い物・娯楽・祭典といった多様な活動が一つの総体の中で交差するよう計画されている。Miền Thương Phúは、プロジェクト全体の「商業的な人の流れ」を最初に生み出す起点として位置づけられており、都市的な雰囲気を醸成する役割を担う。
地域文化をデザイン言語に昇華
Broadwayの設計アプローチで特筆すべきは、ベトナム南部の土着文化を単なる装飾ではなく、設計言語そのものに組み込んでいる点である。「龍の門」のモチーフは、大通りの構造、景観のリズム、広場やストリートの配置に至るまで各層に具現化されている。プロジェクト全体が連続的な「流れ」として設計されており、移動しながら空間の変化を体感できる構成となっている。
ディテールのレベルでは、使用する素材、舗装パターン、照明システム、パブリックスペースの「タッチポイント」にもこの設計哲学が反映されている。これにより各コミュニティやストリートが独自の個性を持ちつつも、全体として統一感のあるアイデンティティを形成する。利用者が空間を記憶し、長期的な愛着を持てる「場所性」の構築が目指されている。
実際の運営を見据えたコミュニティ空間
Thanh Phú Centre Pointには、歩行者用ブリッジ、中央広場、イベント用芝生エリア、屋外パフォーマンス空間、商業ストリート、フードエリア、ウィークエンドマーケット、ウォーターフロント遊歩道など、多彩なコミュニティ施設が計画されている。
屋外イベントエリアは大規模な収容力を持ち、地域の祭典やコミュニティイベントの開催が可能である。商業ストリートやフードエリアは、景観形成に加えて「人の滞留時間を延ばし、消費活動を促進する」実際的なビジネス機能も兼ね備えている。開発者であるBIM Landは「売って終わり」ではなく、完成後の継続的な運営と活性化を見据えた設計を行っていることがうかがえる。
BIM Land——「目的地を創る」デベロッパー
開発を手がけるBIM Landは、BIM Group(ビム・グループ)傘下の不動産開発会社である。BIM Groupは北部のクアンニン省やニンビン省でのリゾート開発などで知られ、「点」ではなく「面」で地域価値を創造する開発哲学を持つことで評価されてきた。Thanh Phú Centre Pointにおいても、単にインフラ整備の恩恵を受ける受動的なプロジェクトではなく、自らが「新たな生活・商業の拠点」を能動的に形成するという姿勢が明確に打ち出されている。
BIM Landは「目的地の創造(kiến tạo điểm đến)」という開発理念を掲げており、綿密なマスタープラン、品質にこだわったプロダクト、長期的な運営視点を三本柱としている。
投資家・ビジネス視点の考察
本プロジェクトを投資・ビジネスの観点から見ると、以下の点が注目に値する。
1. ホーチミン西部の不動産市場への影響:ベンルック周辺は工業団地の拡張とともに住宅・商業需要が急増しているエリアである。Thanh Phú Centre Pointのような大型複合プロジェクトの登場は、周辺の地価形成に大きな影響を与える可能性がある。特に、48%近い面積をオープンスペースに充てるという「低密度・高付加価値」モデルは、今後のベトナム不動産市場における差別化トレンドを象徴するものとなり得る。
2. BIM Groupの企業価値への寄与:BIM Groupは未上場だが、同グループの動向はベトナム不動産セクター全体の投資家心理に影響を与える。統合型都市開発という高付加価値モデルの成否は、同業他社(ビンホームズ(Vinhomes)、ノバランド(Novaland)、ナムロン(Nam Long)など)の開発戦略にも波及する可能性がある。
3. 日本企業への示唆:ホーチミン西部エリアには日系製造業も多数進出しており、従業員の居住環境や商業インフラの整備は、工場立地の魅力を左右する要因となる。こうした統合型都市が出現することで、日系企業にとっても駐在員や現地採用スタッフの生活利便性が向上し、人材確保の観点からもプラスに働く可能性がある。
4. ベトナム不動産市場の構造変化:ベトナムの不動産市場は、かつての「とにかく住宅を量産する」フェーズから、「コミュニティ価値・体験価値を重視する統合開発」のフェーズへと移行しつつある。2026年9月に見込まれるFTSE新興市場指数への格上げが実現すれば、海外機関投資家のベトナム市場への資金流入が加速し、こうした高品質なプロジェクトを手がけるデベロッパーへの評価が一段と高まることも予想される。
市場がますます選別的になる中で、単なる「箱売り」ではなく「街そのものの価値を創る」プロジェクトが投資家や実需層から選ばれる時代が到来しつつある。Thanh Phú Centre Pointがその期待通りの都市像を実現できるか、今後の進捗を注視していきたい。
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ハノイ在住13年日本語で毎日配信。
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出典: 元記事












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