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2025年の年初から3カ月にわたり、外国人投資家(以下「外国勢」)がベトナム株を売り越し続けている。為替差によるリターンの目減り、時価総額上位銘柄の業種偏重、そしてグローバル規模でのポートフォリオ再配分——専門家はこの三つの要因が重なった結果だと指摘する。VN指数(ホーチミン証券取引所の代表的な株価指数)が回復基調を模索するなかで、外国勢の資金流出は市場のセンチメントに大きな影を落としている。
外国勢の売り越しはどの程度の規模か
ホーチミン証券取引所(HOSE)の統計によると、2025年1〜3月の累計で外国勢はベトナム株を大幅に売り越した。この流れは2024年後半から断続的に続いており、特に年明け以降は月次ベースでも売り越し額が縮小する兆しが見えないまま推移している。個別銘柄でみると、銀行株や不動産関連株など時価総額の大きい主力銘柄が売りの中心となっている点が特徴的である。VN指数構成銘柄の上位には、ビンホームズ(Vinhomes、不動産大手)やベトコムバンク(Vietcombank、国有商業銀行最大手)など限られた業種の大型株が集中しており、外国勢がこれらを売却すると指数全体への下押し圧力が一気に強まる構造になっている。
要因①:為替差(ドン安・ドル高)のインパクト
外国勢がベトナム株を売る最大の理由として、まず挙げられるのがベトナムドン(VND)と米ドル(USD)の為替差である。2024年後半から2025年初にかけて、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め姿勢が長期化するとの見方が強まり、ドル高圧力が続いた。ベトナム国家銀行(中央銀行)はドン安抑制のために為替介入や金利調整を行ってきたが、ドン/ドルの為替レートはじわじわとドン安方向に振れている。
外国人投資家にとって、ベトナム株の値上がり益がドン建てで出たとしても、最終的にドルやユーロなど本国通貨に換算した際に為替差損で相殺されてしまうリスクがある。特に年初来でドンがドルに対して数%下落した局面では、株式のキャピタルゲインが実質的にマイナスとなるケースも生じ得る。このため「わざわざ新興国リスクを取ってベトナムに投資するメリットが薄い」と判断するファンドマネジャーが少なくないのである。
要因②:「銘柄の棚」が狭い——業種構成の偏り
二つ目の構造的な問題は、ベトナム株式市場の銘柄構成(いわゆる「rổ hàng=商品棚」)の多様性が乏しい点である。VN指数の時価総額上位を見ると、銀行・不動産・素材といったオールドエコノミー系セクターが大半を占め、IT・ヘルスケア・半導体など、グローバルな投資テーマに乗りやすい成長セクターの比率が小さい。
たとえば、インドのNifty 50指数にはインフォシスやTCSといったIT大手が含まれ、台湾加権指数にはTSMC(台湾積体電路製造)が圧倒的な存在感を放つ。一方、ベトナムにはこうしたグローバル投資家が「ぜひポートフォリオに組み入れたい」と思えるテクノロジー系の大型上場企業がまだ少ない。FPTコーポレーション(ベトナム最大手のIT企業)は例外的な存在だが、時価総額全体に占める比率は限定的である。結果として、グローバルファンドがセクター分散を図る際にベトナムへの配分を増やしにくい状況が続いている。
要因③:グローバル規模のポートフォリオ再配分
三つ目の要因は、世界的なマネーフローの変化である。2025年初頭、米国の関税政策をめぐる不透明感が強まるなかで、グローバルファンドはリスク資産全体のウエイトを見直す動きに入った。新興国株式の中でも、インドやインドネシアなど比較的大きな内需市場を持つ国に資金を集中させる一方、フロンティア市場に近い位置づけのベトナムからは資金を引き揚げる動きが顕著になった。
加えて、日本株や欧州株の一部がバリュエーション面で見直される局面もあり、「新興国よりも先進国のほうがリスク・リターンのバランスが良い」という判断が働きやすくなっている。こうしたマクロレベルの資金シフトは、ベトナム固有のファンダメンタルズとは無関係に起こるため、ベトナム経済自体が好調であっても外国勢の売りが止まらないという、やや理不尽な状況を生んでいる。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム株式市場への短期的影響
外国勢の売り越しが続く限り、VN指数の上値は重い展開が想定される。国内の個人投資家が買い向かう場面もあるが、機関投資家の厚みが足りないベトナム市場では、外国勢のフローが指数を大きく左右する。特に時価総額上位の銀行株(ベトコムバンク、BIDV、ベトインバンクなど)への売り圧力は、指数全体を引き下げるインパクトが大きい。
FTSE新興市場指数への格上げとの関連
ベトナムは2026年9月にFTSE(フッツィー)の新興市場指数への格上げが正式決定される見込みである。格上げが実現すれば、FTSE連動のパッシブファンドから数十億ドル規模の資金がベトナム市場に流入するとの試算もある。しかし、まさにそのタイミングを前にして外国勢が売り越しているという事実は、「格上げ期待だけでは買えない」という冷静な姿勢の表れでもある。逆に言えば、格上げが確定し、実際にパッシブ資金の流入が始まれば、現在の売り越し基調は一変する可能性がある。長期投資家にとっては、外国勢の売りが続く今こそ仕込みの好機と映る局面でもある。
日本企業・ベトナム進出企業への影響
ベトナムに生産拠点を持つ日本企業にとって、ドン安は現地コスト(人件費・地代など)をドル建てで見た場合に割安にする効果がある一方、ベトナム国内市場向けの売上をドル建てに換算すると目減りする二面性がある。また、ベトナム株式市場の低迷は、現地パートナー企業の資金調達コスト上昇につながりかねず、合弁事業やM&Aの交渉条件にも影響を及ぼし得る。
中長期的なポジショニング
ベトナム経済そのものは、GDP成長率が6〜7%台で推移し、製造業のサプライチェーン移転(いわゆる「チャイナ・プラスワン」)の恩恵を受け続けている。外国勢の売りはあくまでポートフォリオ調整や為替要因によるものであり、ベトナムの構造的な成長ストーリーが崩れたわけではない。銘柄構成の多様化(テクノロジー企業の新規上場や国有企業の民営化加速)が進めば、グローバルファンドの「買えない理由」は徐々に解消されていくと考えられる。
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出典: 元記事(VnExpress)












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