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2026年3月31日(火)、金の現物価格がニューヨーク市場で前日比157.6ドル(約3.5%)上昇し、4,669.8 USD/ozで取引を終えた。一時は4,696.5 USD/ozと、3月20日以来の高値を記録している。米イラン紛争の早期終結への期待が市場心理を好転させ、世界最大の金ETFであるSPDR Gold Trust(SPDRゴールド・トラスト)も買い越しに転じた。ただし、3月全体では金価格は11.6%の下落となり、2008年以来最も厳しいひと月となっている。
金価格急騰の背景——米イラン紛争の停戦シグナル
今回の急騰を引き起こした最大のきっかけは、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が米政府高官の話として報じた内容である。同紙によれば、ドナルド・トランプ大統領はホルムズ海峡が依然として封鎖状態にあるとしても、イランにおける軍事作戦を終了する用意があるという。同日、米国防長官のピート・ヘグセス氏も「今後数日間が決定的な局面になる」と述べ、テヘランに対して合意に至らなければ紛争がエスカレートする可能性があると警告した。
さらに、トランプ大統領自身がホワイトハウスで記者団に対し、「米軍は2〜3週間以内にイランとの紛争から撤退する」「我々は去る。続ける理由がない。早期に撤収する」と明言した。状況は依然として予断を許さないものの、これらの発言は市場に大きなインパクトを与えた。
ドル安・原油安・利回り低下——金にとって「三拍子」揃う
金価格上昇の直接的な原動力となったのは、ドルインデックス(主要6通貨に対するドルの強さを示す指標)の下落である。同指標は0.65%下落して99.86ポイントで引けた。停戦期待によるリスクオンの動きがドル売りを誘発した形である。
また、原油価格も下落した。中東紛争の緩和期待が原油市場に影響を与え、インフレ圧力の軽減→金利据え置き長期化懸念の後退という連鎖が生まれた。この流れは、利息を生まない資産である金にとって追い風となる。
米国債市場でも価格が上昇(利回りは低下)し、10年物国債利回りは2ベーシスポイント(bp)超低下して4.321%、2年物も同様に3.801%となった。利回り低下は金の相対的な魅力を高める要因である。
さらに、米株市場が大幅上昇したことで、株式ポートフォリオの損失を補填するための金売り(いわゆる「追い証売り」)の圧力が和らいだことも、金価格の反発を後押しした。
銀も急騰——7.1%高の75.25 USD/oz
銀の現物価格も5.02ドル上昇し、75.25 USD/ozで取引を終了した。上昇率は7.1%と金を上回る。COMEX(ニューヨーク商品取引所)の金先物も2.7%上昇し、4,678.6 USD/ozで引けている。ただし銀は3月全体では20%超の大幅下落を記録しており、仏大手銀行BNPパリバは年内の銀価格を65〜75 USD/ozのレンジで推移すると予測。2027年には銀の現物市場が供給過剰に転じるとの見通しも示している。
SPDR Gold Trust——54トンの売り越し後、ついに買い転換
世界最大の金ETFであるSPDR Gold Trust(ティッカー:GLD)は、3月31日の取引で1.2トンの金を買い越し、保有量を1,047.3トンに増加させた。同ファンドは3月中に合計54トンもの金を売り越しており、この買い転換は市場参加者の心理変化を端的に表すものとして注目される。
3月は2008年以来の最悪月——その背景
月間で見ると、金の現物価格は3月に11.6%下落し、2008年のリーマン・ショック以来、最大の月次下落を記録した。主な要因は以下の通りである。
- 原油価格の急騰:米イラン紛争によるホルムズ海峡封鎖懸念が原油価格を押し上げ、世界的なインフレ圧力が高まった。
- 利上げ長期化観測:インフレ高止まりにより、米連邦準備制度理事会(FRB)が年内の利下げを見送るとの見方が強まり、金にとって逆風となった。
- ドル高:ドルインデックスは3月に2.5%上昇し、昨年7月以来の最大の月次上昇を記録。ドルはエネルギー純輸出国としての米国の立場、USD流動性需要の増加、FRBの利下げ見送り観測を背景に、金に代わる「安全資産」として機能した。
つまり、通常は地政学リスクの高まりで買われるはずの金が、インフレ・高金利・ドル高という三重苦の前に「安全資産」としての役割を果たせなかったのが3月の構図である。
アナリストの見方——長期的には強気維持
Zaner Metals(ゼイナー・メタルズ)のストラテジスト、ピーター・グラント氏はロイター通信に対し、「金価格の回復は心強いもので、中東の緊張緩和への楽観が背景にある。ただし、短期的な回復トレンドを確認するには、さらなる上昇が必要だ」と述べている。同氏は長期的には、脱ドル化(de-dollarization)の潮流や各国中央銀行による金買いが引き続き価格を支えると指摘した。
2026年の金価格見通しについて、BMI(英調査会社)は年間平均4,600 USD/ozの予測を維持。米大手投資銀行ゴールドマン・サックスは、年内に5,400 USD/ozに達する可能性があるとの強気予測を崩していない。
4月1日アジア市場の動き
4月1日の早朝(ベトナム時間6時30分)、アジア市場では金の現物価格が前日のニューヨーク終値から5.8ドル(0.12%)上昇し、4,675.6 USD/ozで取引されている(Kitco調べ)。ベトコムバンク(Vietcombank、ベトナム最大手国営商業銀行の一つ)のドル売りレートで換算すると、約1億4,850万ドン/ルオン(1ルオン=約37.5グラム)に相当する。同時刻のベトコムバンクのドル為替レートは、買入26,107ドン、売出26,357ドンであった。
投資家・ビジネス視点の考察
ベトナム国内金市場への影響:ベトナムは世界でも有数の金消費国であり、国際金価格の変動は国内のSJC金価格に直結する。3月の急落局面では国内投資家の損失も大きかったとみられるが、今回の反発は短期的な安心材料となる。ただし、ベトナム国家銀行(SBV)による金市場安定化策や、SJC金と国際金価格の乖離問題は引き続き注視が必要である。
ベトナム株式市場への波及:金価格の急落と反発は、ベトナムの資源関連銘柄や宝飾品関連銘柄に直接的な影響を与える。また、原油価格の下落は、ペトロベトナムガス(GAS)やペトロベトナム(PVD)といったエネルギー関連銘柄にはマイナスだが、航空会社(ベトナム航空=HVN、ベトジェットエア=VJC)や運輸セクターにはコスト低減要因としてプラスに働く可能性がある。
FRBの金融政策とベトナムドン:FRBの利下げ見送り観測が続く限り、ベトナムドンに対する下落圧力は維持される。しかし、今回のようにドル安方向に振れる局面が増えれば、ベトナム国家銀行にとっても為替管理の余裕が生まれる。これは2026年9月に予定されるFTSE新興市場指数への格上げ判断にも間接的に影響し得る。為替の安定性は、海外投資家がベトナム市場に資金を投入する際の重要な判断材料だからである。
日本企業・投資家への示唆:日本からベトナムに進出している製造業企業にとって、原油価格の下落はエネルギーコストや物流コストの低減につながる好材料である。一方、金価格のボラティリティの高さは、ベトナム国内消費者の購買行動にも影響を与え得る。ベトナムでは依然として金が重要な貯蓄・投資手段であり、金価格の乱高下は個人消費マインドに波及するためだ。
脱ドル化トレンドとの関連:グラント氏が指摘する「脱ドル化」は、BRICS諸国を中心に加速しており、ベトナムも多国間貿易決済の多様化を進めている。各国中央銀行の金買いが続く限り、金の長期的な需要基盤は堅固であり、ベトナム国家銀行の外貨準備運用方針にも影響を与える可能性がある。
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