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ベトナムの大手証券会社MBS証券(MB Securities)が、2026年4月の推奨銘柄として10銘柄を発表した。3月にVN-Indexが11%もの急落を記録し、2021年のコロナショック以来最大の下落幅となった中での選定であり、4月の反発局面を見据えた「攻め」のポートフォリオとして市場関係者の注目を集めている。
世界の中央銀行は一斉に金利据え置き——インフレ懸念が影を落とす
MBS証券は4月の市場見通しを発表するにあたり、まず3月下旬に相次いだ世界の主要中央銀行の政策決定を整理している。注目すべきは、4つの主要中央銀行がすべて金利を据え置いた点である。
まず3月18日、米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を3.5〜3.75%に据え置いた。2026年中の利下げ見通しについても、昨年末時点では年内2回の利下げが予想されていたが、今回は年内1回のみに修正された。インフレ圧力が想定以上に根強いことがうかがえる。
翌19日には日本銀行(BOJ)が政策金利を0.75%で維持。原油・天然ガス価格の上昇に伴うインフレリスクに警告を発した。さらに欧州中央銀行(ECB)は金利を2%で据え置き、英国イングランド銀行(BOE)も3.75%を維持した。BOEの決定は金融政策委員会(MPC)の全会一致であった。
これら4行に共通するのは、エネルギー価格上昇を背景としたインフレ懸念である。中東情勢の緊迫化が原油価格を押し上げており、各国の金融政策の舵取りを一段と難しくしている。
国内では国営銀行が預金金利を引き上げ
ベトナム国内に目を転じると、3月に入り国営銀行大手4行——アグリバンク(Agribank、ベトナム最大の農業農村開発銀行)、BIDV(ベトナム投資開発銀行)、ビエティンバンク(VietinBank)、ベトコムバンク(Vietcombank)——が一斉に預金金利を引き上げた。現在、これら4行の6〜36カ月の定期預金金利は年6〜6.5%の水準にある。
国営銀行による預金金利の引き上げは、資金調達競争の激化を反映すると同時に、市場金利全体の上昇圧力を示唆している。株式市場にとっては、預金への資金シフトが起こりやすくなるという二重の逆風材料である。
3月のVN-Index急落——コロナ以来最悪の月間下落
MBS証券は、VN-Indexが3月に11%下落し、直近の高値からは13%もの調整を記録したことを指摘している。これは2021年のコロナショック時以来、最大の月間下落幅である。主因は中東での武力衝突の激化と、それに伴う原油価格の急騰だ。エネルギー輸入国であるベトナムにとって、原油高はインフレ圧力や貿易収支悪化に直結するため、投資家心理を大きく冷やした。
2026年第1四半期の業績——利益は前年同期比+25%も、偏りが顕著
一方で、ファンダメンタルズの改善は着実に進んでいる。MBS証券の推計によれば、2026年第1四半期の上場企業全体の利益は前年同期比で約25%の成長が見込まれる。ただし、その成長の「質」には注意が必要である。利益成長は一部のセクターや突発的な要因を持つ企業に集中しており、市場全体への広がりには欠ける状況だ。
セクター別に見ると、特に際立つのが以下の3分野である。
- 不動産セクター:前年同期比+407%——ビンホームズ(VHM、ベトナム最大の不動産デベロッパーであるビングループ傘下)の大型案件引き渡しが大きく寄与している。
- 石油・ガスセクター:前年同期比+122%——原油高が直接的な追い風となった。
- 小売セクター:前年同期比+46%——国内消費の回復基調が反映されている。
4月の反発シナリオ——3つのカタリスト
MBS証券は4月について、以下3つのポジティブ材料により市場の反発を期待できるとしている。
①市場格上げ(アップグレード)への期待
ベトナム株式市場のFTSE新興市場指数への格上げは2026年9月の決定が見込まれており、その具体的な進展に関する情報が4月以降も断続的に出てくる可能性がある。格上げが実現すれば、グローバルのパッシブファンドから数十億ドル規模の資金流入が見込まれるため、市場参加者の期待感は依然として強い。
②第1四半期決算の発表シーズン
4月は上場企業の2026年第1四半期決算が本格的に公開される時期にあたる。前述の通り、全体で+25%の利益成長が見込まれるため、好業績銘柄への選別投資が活発化すると予想される。
③年次株主総会シーズンにおける事業計画の公表
ベトナムでは毎年4〜6月に年次株主総会(ĐHĐCĐ)が集中する。各企業が2026年度の事業計画・利益目標・配当方針を開示するため、個別銘柄の株価を動かす重要なイベントとなる。
一方で、中東紛争や原油高の影響は短期的には後退する可能性があるものの、完全に払拭されたわけではない点にも留意が必要である。
MBS証券が選ぶ「4月の注目10銘柄」
以上の分析を踏まえ、MBS証券が4月の推奨ポートフォリオとして選定した10銘柄は以下の通りである。
| ティッカー | 企業名・概要 |
|---|---|
| VPB | VPバンク(VPBank)——ベトナム大手民間商業銀行 |
| CTG | ビエティンバンク(VietinBank)——国営4大銀行の一角 |
| HPG | ホアファット・グループ(Hoa Phat Group)——ベトナム最大の鉄鋼メーカー |
| MSN | マサン・グループ(Masan Group)——食品・消費財・鉱業の複合企業 |
| KBC | キンバック・シティ(Kinh Bac City)——工業団地開発大手 |
| DCM | ダム・カマウ(Phu My – Ca Mau Fertilizer)——ベトナム南部の大手肥料メーカー |
| PDR | ファット・ダット不動産(Phat Dat Real Estate)——南部を地盤とする不動産デベロッパー |
| FPT | FPTコーポレーション——ベトナム最大のIT企業、日本向けオフショア開発で著名 |
| FOX | FPTデジタルリテール(旧FPT Retail)——家電・スマートフォン小売チェーン |
| PC1 | パワー・コンストラクション No.1(Power Construction Joint Stock Company No.1)——電力インフラ建設・再生エネルギー |
銀行(VPB、CTG)、鉄鋼(HPG)、消費財(MSN、FOX)、不動産・工業団地(KBC、PDR)、エネルギー関連(DCM、PC1)、IT(FPT)と、セクター分散を意識した構成となっている点が特徴的である。
投資家・ビジネス視点の考察
急落局面は「仕込み」のチャンスか
VN-Indexが高値から13%調整したことで、バリュエーション面では割安感が台頭している。特に、第1四半期に+25%の利益成長が見込まれる中での調整は、PER(株価収益率)の低下を意味する。過去の経験則でも、ベトナム市場では10%超の急落後に短期的なリバウンドが発生するケースが多い。
FTSE格上げとの関連性
2026年9月に予定されるFTSE新興市場指数への格上げ判定は、ベトナム株式市場にとって歴史的なイベントとなる。今回の推奨銘柄のうち、VPB、CTG、HPG、FPTなどの大型株は、格上げ時にグローバルインデックスファンドの組み入れ対象となる可能性が高い。格上げ前の「先回り買い」が今後本格化する可能性もあり、4月はその初動を捉える好機となり得る。
日本企業・日本人投資家への示唆
FPTは日本市場でのオフショア開発事業が売上の大きな柱であり、日本の投資家にとって最も馴染み深いベトナム銘柄の一つである。また、KBC(キンバック・シティ)が開発する工業団地には多くの日系製造業が入居しており、ベトナムへの生産移管トレンドの恩恵を直接的に受ける。工業団地銘柄は、米中対立を背景とした「チャイナ・プラスワン」戦略の受け皿として中長期的な成長が期待されるセクターである。
金利環境の変化に要注意
国営銀行の預金金利が6〜6.5%に上昇しているという事実は、株式市場からの資金流出リスクを高める要因である。特に個人投資家比率が80%超とされるベトナム市場では、預金金利と株式のリスクプレミアムの関係が先進国市場以上にダイレクトに株価に反映される。今後さらなる金利上昇があれば、株式市場の上値を抑える要因となり得る点には注意が必要である。
中東リスクの再燃に備えよ
MBS証券は中東紛争の影響が「短期的に後退する可能性」に言及しているが、地政学リスクは本質的に予測不能である。原油輸入国であるベトナムにとって、原油高の長期化はインフレ率の上昇、貿易赤字の拡大、通貨ドンの下落圧力という三重苦をもたらす。推奨銘柄の中でDCM(肥料)やPC1(電力インフラ)はエネルギー価格上昇の恩恵を受けやすい「ヘッジ的」な銘柄として位置づけられているとも読み取れる。
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