ベトナム金塊価格が100万ドン上昇、1ルン(テール)174.5万ドンに迫る高値圏の背景を読む

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ベトナム国内の金塊(ヴァンミエン)価格が再び急騰した。各金取扱企業は2025年4月3日、金塊の販売価格を一斉に100万ドン引き上げ、1ルン(ベトナムの金の計量単位、約37.5グラム)あたり1億7,450万ドンとした。国際金価格の高止まりと国内需要の根強さが重なり、ベトナムの金市場は歴史的高値圏での推移が続いている。

目次

何が起きたのか──100万ドンの引き上げの詳細

ベトナム国内で金塊を取り扱う主要企業は4月3日、販売価格(売値)を前日比で100万ドン引き上げた。これにより、SJC金塊(ベトナム政府が公認する唯一の金塊ブランド)を中心とする金塊の小売価格は、1ルンあたり1億7,450万ドンに達した。ベトナムの一般的な会社員の月収が1,000万〜2,000万ドン程度であることを考えると、金塊1ルンは月収の約9〜17倍に相当する極めて高額な資産である。

背景──なぜベトナムの金価格は上がり続けるのか

ベトナムの金価格上昇には、複数の構造的要因が絡み合っている。

①国際金価格の高騰
世界的に金のスポット価格は2024年後半から2025年にかけて断続的に最高値を更新してきた。米国の関税政策や地政学リスク(中東情勢、ウクライナ紛争の長期化)への警戒感が安全資産としての金への需要を押し上げている。米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に対する不透明感も、金価格を支える大きな要因である。

②ベトナム固有の「プレミアム」構造
ベトナムの金塊価格は、国際金価格に対して常に一定のプレミアム(上乗せ幅)が存在する。これはベトナム国家銀行(中央銀行)が金塊の輸入を厳しく管理し、SJC金塊の新規製造・流通量をコントロールしているためである。供給が制限されている一方で、ベトナム国民の間では金を「最も安全な資産保全手段」と見なす文化が根強く、需給のギャップがプレミアムを生み出している。

③ベトナムドン安への懸念
ベトナムドンは対米ドルで緩やかな減価傾向にあり、自国通貨の購買力低下を恐れる国民が金を「通貨ヘッジ」として購入する動きが続いている。特にインフレが加速する局面では、金への資金流入が一段と強まる傾向がある。

④旧正月後の需要サイクルと投機的動き
ベトナムでは旧正月(テト)後に金の売買が活発化する季節性がある。加えて、金価格の上昇トレンドが明確になると「今買わなければ更に上がる」という心理が広がり、投機的な買いが価格をさらに押し上げるスパイラルが発生しやすい。

SJC金塊とは何か──日本の読者に向けた補足

SJC金塊は、サイゴン宝飾会社(Saigon Jewelry Company、ホーチミン市に本社を置く国営企業)が製造する金塊で、ベトナム政府が品質を保証する唯一の金塊ブランドである。「ルン」(lượng)はベトナム独自の金の計量単位で、1ルン=約37.5グラム(1トロイオンスとほぼ同等だが厳密にはやや異なる)。ベトナムでは不動産取引の一部が金建てで行われることもあり、SJC金塊は単なる投資商品にとどまらず、経済活動に深く組み込まれた存在である。

ベトナム国家銀行の対応と今後の見通し

ベトナム国家銀行は過去数年にわたり、国内金価格と国際金価格の乖離(プレミアム)を縮小するための対策を講じてきた。2024年には金塊の直接販売オークションを複数回実施し、市場への供給を増やす試みを行った。しかし、根本的な需給構造の改善には至っておらず、国際金価格が上昇する局面では国内価格も連動して上がる構図が続いている。

今後も国際的な地政学リスクや米国の通商政策(トランプ政権の関税強化など)が金価格の追い風となる可能性が高い。ベトナム国内では、中央銀行が金塊の追加供給やSJC以外のブランドの流通拡大といった構造改革に踏み切るかどうかが、プレミアム縮小の鍵を握る。

投資家・ビジネス視点の考察

ベトナム株式市場への影響
金価格の高騰は、宝飾関連企業(PNJ=フーニュアンジュエリー〈ホーチミン市証券取引所上場、ベトナム最大のジュエリー小売チェーン〉など)の業績に直接的な影響を与える。金の売買マージンが拡大する局面ではPNJの利益率が改善する一方、金価格の急変動は在庫評価損益のブレを大きくするリスクもある。また、金に資金が流れることで株式市場への投資資金が減少する「資金シフト」の懸念も指摘される。実際、ベトナムの個人投資家は株式と金を投資先として比較する傾向が強く、金の魅力が高まると株式市場の売買代金が細る場面がしばしば見られる。

日本企業・ベトナム進出企業への影響
金価格の動向は、ベトナムのインフレ期待やドン安圧力と密接に関連している。ベトナムに生産拠点を持つ日系企業にとっては、ドン安が進めばドル建て・円建てでのコスト競争力が高まる一方、現地従業員の実質賃金が目減りすることで賃上げ圧力が強まるリスクがある。金価格上昇が示す「インフレ警戒シグナル」には注意が必要である。

FTSE新興市場指数への格上げとの関連
2026年9月に決定が見込まれるベトナムのFTSE新興市場指数への格上げは、海外からの大規模な資金流入をもたらすと期待されている。金市場に滞留している国内資金が、格上げを契機に株式市場へシフトする可能性もある。一方で、金価格が高止まりを続ければ、国内投資家の「安全資産志向」が根強く残り、株式市場への資金回帰が遅れるシナリオも考えられる。FTSE格上げの恩恵を最大化するためにも、ベトナム当局による金市場の構造改革と、マクロ経済の安定維持が重要な課題となる。

ベトナム経済全体のトレンドにおける位置づけ
ベトナムは2025年もGDP成長率6〜7%台を目指す高成長経済である。しかし、金価格の急騰は「国民のインフレ不安」を映し出す鏡でもある。ベトナム政府・中央銀行がいかにインフレを抑制し、ドンの安定を保ちながら成長を維持できるかが、投資環境の安定性を左右する。金塊価格の動きは、ベトナム経済の体温計として引き続き注視すべき指標である。


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出典: 元記事(VnExpress)

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