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ベトナム政府は、同国が設立を進める「国際金融センター」の運営人材を確保するため、給与・手当に関する異例の特別制度を定めた政令を公布した。優秀な専門家には現行給与の最大150%に相当する追加手当を支給するという破格の内容であり、アジアの金融ハブを目指すベトナムの本気度がうかがえる。
政令92号の概要——誰が対象か
今回公布されたのは政令第92/2026/NĐ-CP号である。ベトナム国際金融センターの運営評議会(Hội đồng điều hành)に関する特別な待遇・政策を定めたもので、対象者は以下のとおりである。
- 運営評議会の議長、副議長および評議員
- 事務局(Cơ quan giúp việc)および諮問委員会(Hội đồng tư vấn)で働く者
- その他関連する機関・組織・個人
兼務者には現行給与の50%、専任議長には80%の追加手当
政令によれば、運営評議会の議長・副議長・評議員が兼務で勤務する場合、毎月の給与に加え、現行給与(職務給または公務員等級給に指導職手当を加算した額)の50%に相当する手当が支給される。なお、この手当は社会保険料や医療保険料の算定基礎には含まれない。
一方、議長が専任として勤務する場合は、従来の給与・各種手当に加え、現行給与の80%に相当する月額追加手当を受け取ることができる。さらに、賞与、住宅、交通手段、勤務環境、表彰、医療ケア、保養・休暇に関する優遇制度も、別途定められた政令第231/2025/NĐ-CP号に基づき適用される。
事務局職員にも80%の追加手当
事務局については、運営評議会議長が人材の採用・管理・配置を決定する権限を持つ。事務局のトップおよび副トップには、中央省庁の局長級(Vụ trưởng)に相当する待遇が適用される。
事務局に採用または異動により配属された職員は、公務員等級給・職務手当・超過年功手当などに加え、現行給与の80%に相当する月額追加手当を受け取る。
「特別人材」には150%——破格の優遇
特に注目すべきは、「才能ある人材」として認定された者への待遇である。タレント枠で招聘された者、あるいは所属機関から「卓越した能力・専門性を持つ人材」と認定された公務員・職員については、政令第179/2024/NĐ-CP号に基づき、現行給与の150%に相当する月額追加手当が支給される。研究プロジェクトの遂行に必要と認められる場合には、特別な設備・資源の投資も行われる。
任期終了後に「良好」以上の評価を受けた場合は、従前と同等以上のポストが保証される。「特に優秀」と評価された場合は、規定の要件(人事計画・年齢・在職期間など)を一部満たしていなくても、より上位の指導職への登用が検討される。逆に「任務未達成」の場合は人員整理の対象となるという、メリハリの効いた仕組みである。
諮問委員会の専門家——契約ベースで報酬は交渉制
諮問委員会には、国内外の著名な金融・法務の専門家が労働契約ベースで招聘される。報酬は合意制(いわゆる「交渉給」)であり、運営評議会議長が業務要件・能力・実績・学位・経験を踏まえて給与水準と契約内容を決定する。
ベトナム人専門家が諮問委員会での任期終了後に公的機関での長期勤務を希望する場合は、公務員・職員として正規採用される道が開かれている。その際、現行給与に加え公務員等級給の150%に相当する追加手当が5年間にわたり支給される。諮問委員会での勤務期間は、採用時の給与等級決定の際に算入されるという優遇措置もある。
投資家・ビジネス視点の考察
今回の政令は、ベトナムが2025年に法的枠組みを整備し、ホーチミン市およびダナンに設立を目指す国際金融センター構想の重要なピースである。以下の観点から注目に値する。
1. FTSE新興市場指数格上げとの相乗効果:2026年9月に決定が見込まれるFTSE新興市場指数への格上げは、海外資金の大量流入を促す可能性がある。国際金融センターの実体が伴えば、格上げの説得力が一段と増す。金融インフラの整備と人材確保は、格上げ審査において定性的なプラス材料となり得る。
2. 関連銘柄への影響:国際金融センターの設立は、証券会社(SSI、VND、HCMなど)、銀行セクター、不動産デベロッパー(特にホーチミン市・ダナンで開発を手掛ける企業)にとって中長期的な追い風となる。オフィス需要の拡大、金融サービスの高度化に伴うビジネス機会の増大が期待される。
3. 日系企業への示唆:国際金融センターが本格稼働すれば、ベトナムでの資金調達やクロスボーダー取引の利便性が向上する可能性がある。日系金融機関にとっては、現地拠点の戦略的再配置を検討する契機となるだろう。また、150%もの追加手当を提示して国際人材を奪い合う姿勢は、日系企業がベトナムで高度人材を確保する際のコスト上昇要因ともなり得る。
4. 制度の実効性に対する留意点:ベトナムの公務員給与体系は民間に比べ低水準であり、150%の追加手当を付けてもシンガポールや香港の金融専門家の報酬水準には及ばない可能性がある。諮問委員会の「交渉給」がどの程度の水準に設定されるかが、真に国際的な人材を引き付けられるかどうかの鍵を握る。
ベトナムは国際金融センター構想において、制度面での整備を着実に進めている。今後は実際にどのような人材が集まり、どの程度のスピードでセンターが機能し始めるかが焦点となる。
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